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    Jem

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    Jem

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    🍃🐍meetsハリポタパロ!今回は🍃さんのアクションが見どころ!やっぱりウルフ🍃さんは肉体派ワンコですよ。うんうん。

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    安らかなれ、マイ・レディ③ブラックフェン村の闘い ブラックフェン村に、昼を告げる教会の鐘が鳴る。冷え切った石畳の上を、小さな影がヒタヒタと進んでいく。

    ――ああ、ケイト…。

     あの陽だまりにも、同じように鐘は鳴っていた。まるで陽射しのようにあったかく笑う、ケイト。少し大きくなった頃、編み物をするママの足元で遊んでいたっけ。
     ママの膝の上の編み目が長く長く広がり、編み針が柔らかな音を立てる。ころりと落ちた毛糸玉を、ケイトの小さな手が掴まえた。

    「あらあら、ダメよ、ケイト」

     小さな手から取り返そうと、ふんわりした毛糸玉をちょっと引っ張る。弾けるように笑いだすケイトの笑顔が、眩しくて、嬉しくて――…

     時は流れてーーヒタヒタと、影が石畳を横切る。足を止めた先は、教会の裏の小さな墓地だった。こんな田舎の墓地では、美しい大理石など使わない。泥の中に埋もれるような墓石たちが苔むして並んでいる。背の曲がった黒衣の老婆が小さく小さく身を屈めて、祈っている。

    ――ケイト。可哀想なケイト。

     影は、石畳の角を曲がり、うねる小道を辿って、枯れ蔦の中で静まり返った門扉をくぐった。
     ここが、今のダックワース家。草木が好き放題に石畳を割り、枯れた根っこが水辺で腐臭を放っていた。霧の中で鈍く濡れ輝く石壁を見上げる。目を凝らすと、窓にボッと燐色の灯りがついた。

    ――あれは…貴女の目印。貴女の痕跡。

    「ニャアアアアア――…」

     細い獣の声が霧の中に響く。

    ――誰か、来て…気づいて…



     伊黒と不死川が寂れた無人駅に降り立つと、列車の車輪が重々しい鉄の軋みを上げた。まるで、2人を置き去るように、ゆっくりと走り出し、速度を上げて霧の中に消えていく。

     駅から、通りがかりの郵便馬車に乗せてもらって1時間。ブラックフェン村に着いたのは昼過ぎだった。すでに陽射しは弱り、雲影が空をうねっている。冷たい霧が2人の手足にまとわりつくように流れている。

    「この村には、シャワーと暖炉とブランケットと紅茶が必要だな」

     伊黒が軽くため息をついた。スリザリン寮だって陰気さは大したものだったが、ブラックフェン村はそれ以上だ。

    「ワガママすぎ。でも、暖炉ならパブにでも行くかァ。村人から話でも聞こうぜ」

     午後を知らせる教会の鐘が鳴る。細く続く道はうねり、寒村の奥へと2人を連れて行く。伊黒がコートの襟を立てた。

    「…誰も通らんな」

     伊黒が呟いた。
     霧は深く、人影も見えない。濡れた石畳がかすかに光り、2人の足音と、遠くに近くに響く教会の鐘だけが聞こえる。

    「気持ち悪りィ…鼻も効かねェ」

     不死川が、狼の鼻をひくつかせるが、腐泥と黴の匂いばかりが鼻につく。

     やがて、石畳の先に古びた看板が見つかった。左に曲がって、3軒目が村唯一のパブだった。
     軋むドアを開けると、薄暗がりの中で赤い暖炉が燃えている。溢れ出してくる酒と煙草の匂いは、ようやく出会えた生者の匂いのように思われた。赤々とした暖炉の灯りの中から、男達の視線がじっとりと来訪者を捉えた。

    「…エールを」

     伊黒が、カウンターに静かにコインを置く。不死川は、周囲を警戒しながらスツールに腰掛けた。

     水紋のように広がるざわめき。その中に、かすかに、しかし明らかに「よそ者」という言葉が聞こえた。
     伊黒が、フッと息を吐いて、カウンター内のオヤジに向き直る。

    「ダックワース家のことについて聞きたいのだが」

     低く落ち着いた声音に、オヤジは振り向きもしない。

    「…ないよ、そんな家」

    「ああ、昔のお屋敷さ。登記所じゃ確かにこの村の住所だったぜ。後見人だって会って確かめてきた。トム・ダックワース。知ってるだろ?」

     不死川が言葉を添える。

    「トム…トム?話したくもないね」

    「おい!オヤジさん!」

     あまりの陰気さに、不死川が立ち上がってカウンターに詰め寄る。
     その時…

    「嘘よ!みんな、知ってることを話してよ!」

    「ケイティ嬢!?」

     伊黒と不死川がドアを振り向く。そこには、黒いドレスのケイティが仁王立ちで立っていた。ロンドンで会った時のような上品な口ぶりは消え失せ、大きな瞳を爛々と光らせていた。結い上げた黒髪はほつれて頬に張り付いている。

    「話してよ!あのお屋敷で…」

    「誰だ!?女!よそ者のくせに…!」

     村人の手が、ケイティにつかみかかる。
     その瞬間、大きな手が村人の手首を掴んで止めた。

    「おい、女に手ェ上げてんじゃねェ」

     不死川だ。大柄な体躯で唸ると、村人は一瞬怯んだようだった。が、他の者が逆上の雄叫びを上げる。

    「なんだ、テメェ!!」

    「お前も、よそ者のくせに…!!」

     ビール瓶を叩き割った村人が吠えた。ビール瓶の即席ナイフが、不死川に襲いかかる。

    ーーケイティを守る!多少の怪我くらい…

     不死川が即席ナイフの前に立ちはだかった。
     伊黒が、懐からタロットカードを取り出した。北に突撃力の「戦車」、東に防御力の「力」、西に敵の攻撃を逸らし隙を作る「運命の輪」、南に索敵に長けた「隠者」。四方に配されたカードが回転し、不死川の前方に、強力な力の渦が発生した。

    「なんだ、こりゃあ!?」

     村人が闇雲にビール瓶を突き出す。「運命の輪」が光る。村人の足元で重力が狂い、ビール瓶が手からすっぽ抜けてカウンター内に飛び込んだ。ぶつかったグラスが派手な音を立てて砕け散る。

    「この野郎!おかしな魔術、使いやがって!」

     村人が伊黒の背後から棍棒を振り上げた。

    「後ろから殴ってんじゃねェ!おらァ!!」

     不死川が踏み込んで、棍棒男を殴り飛ばす。さらに、後ろから組みついてきた巨漢の襟を掴んで投げた。スツールが、悲鳴を上げて倒れ崩れる。
     カウンターの影にオヤジがしゃがみ込んだ。その瞬間、「隠者」のカードが光った。
     伊黒の視界の中で、カウンターが透き通り、オヤジが拳銃を構えるのが視えた。

    「不死川ッ!!」

     タロットカードが展開される。「力」が空気の渦を作り、「運命の輪」が弾丸を逸らす。新たに取り出された「太陽」が「戦車」の力を増す。「戦車」が鋭く光って空を滑り出した。

    「オヤジさんに、何しやがる!!」

     若い男が2人、不死川を挟み撃ちにするが、「恋人」のカードが逆さに飛ぶと同時に、お互いの顔に拳をめり込ませて床に沈んだ。

     不死川が、脚に力を溜めて、カウンターを飛び越え、オヤジにつかみかかる。次の瞬間、ドォンという轟音と共にオヤジは銃を手放し、床に叩き伏せられていた。

     不死川が取り上げた銃をボトムのウエストに挟み、ケイティを庇って拳を固める。その背中合わせに、タロットカードを構えた伊黒が歩み寄った。

    「…来るか、貴様ら」

     伊黒の静かな一声。不死川が低く唸る。
     荒々しい田舎の青年たちの背中に冷たい汗が滑り落ちた。こいつらは、人間じゃない。毎夜、小さく神経を引っ掻くようなあの、“猫の祟り”が、村人の脳裏を疾る。カタカタと膝が震え、戦意は跡形もなく砕け散った。

    「ウワァァア!!“祟り”…!!“祟り”だ、こいつら…!!」

     残った村人は、悲鳴を上げてパブを飛び出していった。

    「大丈夫か!?ケイティ!」

     不死川の腕の中で、ケイティは顔面蒼白で震えている。

    「…失礼、ケイティ嬢。鎮静術を」

     伊黒が「月」のカードを取り出す。

    「いらない!!あいつら…あいつら…!」

     ケイティが震えていたのは、恐怖ではなかった。それをはるかに凌駕する怒り。だが、小柄な身体に、その激情は大き過ぎた。ケイティの呼吸が荒くなり、黒いドレスに包まれた身体が崩れ落ちる。

    「ケイティ嬢は、とりあえず、ロンドンのタウンハウスへ連れて行こう。…不死川」

     伊黒に促されて、不死川がケイティを抱き上げる。
     伊黒がその背中を眺めながら、思索に耽る。

    ーー“よそ者”

     村人は確かにケイティを見て、そう言った。咄嗟の一言。嘘だとも思えない。

    ーーケイティは…ダックワース家の侍女じゃないのか?いったい、彼女は…?

    〈つづく〉
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    Jem

    DOODLEハリポタパロなら書かなきゃ!クィディッチ杯!肉体派🍃さんvs知略派🐍さん。🔥さん💎さんも参戦❣️
    安らかなれ、マイ・レディ④思い出のクィディッチ杯 じっとりと霧をまとう冬。あの日も、こんな風に暗かった。突然、家に黒い服を着た大人たちが大勢入ってきた。彼らは、幼いケイトの頭を撫でて抱きしめ、とても悲しそうな顔で告げた。

    ――もう、パパとママは帰ってこない。

     教会の鐘。閉じられた2つの棺が埋められていくのを、ケイトはじっと見つめていた。

    ――可哀想なケイト。あの日から、パパとママを恋しがり、寂しくて…お布団の中で抱き合って泣いた。私はそばに寄り添うことしかできなかった。



     暖かく燃える暖炉前に、不死川が濡らしたタオルを掛けた。部屋が乾きすぎないように。いつもの野郎2人住まいなら気にすることはないが、今日は、失神したケイティをソファに寝かせている。
     ブラックフェン村での闘いのあと、不死川と伊黒は気を失ったケイティを連れて、ベイカー街のタウンハウスに戻った。失礼して、ケイティの小さなバッグを検分したが、身元につながるような小物は一切持っていなかった。結局、どこに連絡することもできないまま、ケイティは丸1日、眠り続けている。
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    目の疲れを感じ、私は書類を読むのを止めた。眼鏡を外し、眉間の辺りを揉みほぐす。どうやらいつの間にか、私は険しい表情でこの捜査書類を読み続けていたようだ。これでは「また眉間のヒビが深くなった」と言われてしまう。目を休めるため、私はワーキングチェアを回転させて、窓の外の景色を見た。青い空に、一筋の飛行機雲が見える。
    「メイ……」
     私は無意識のうちに、その名を呼んでいた。
     日本に戻り幾星霜。まだアメリカにいたときの方が、キミと会えていたような気がする。ひとりで過ごす時間は嫌いではないが……。やはり、その……違うのだよ。
     キミが幼い頃から、キミを導くのが、私の役目だと思っていた。しかし今、キミは私と肩を並べ、さらには追い越そうとしている。私がこうして手を休めている間にも、キミは真実を追求するため、黙々と捜査書類を読み込んでいることだろう。私も負けてはいられない。キミに相応しい男でいるためには、常にキミに認め続けてもらわねばならない。それは、並大抵の努力では成し得ないことだ。
     私は再び机に向かった。次にキミに会えるその日まで、私も先へ進まねばならない。

       了 488