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    寧々から見た司と類

    お題「オチは躍動」
    15分トレーニング 11

    1056文字(所要時間約2分)

    ##司と類

    右足を高く上げてからのターン。
     くるりと世界が反転し、観客の笑顔からは身をひそめるように暗い奥へと進む。

    『お前、そちらに行ってしまうのか?』

     大声で背中に叫ばれて、後ろ髪を引かれるような気持ちになった。
     よく通る、司の声だ。
     類は何も返さない。
     このまま、何の感情もなく彼の元を去るだけだ。
     コツコツと、わざとうるさい足音を立てれば観客は息を呑む。
     その空気感を肌で感じながらも、類は舞台袖に下がっていく。

     ワンダーランズ×ショウタイムの春公演。
     出会いと別れをテーマにした今回は、主人公たる司から、類は彼に別れを告げる役を請け負う事にした。
     物語の終盤、起承転結で言えば『転』に当たる場面で、身勝手に進んで行こうとする主人公を見限る場面だった。よくよくある王道の青春物語。最後のシーンではもちろん類の役は司の元へと帰っていくのだが、ことこのシーンに至っては、いつだって胸を蝕まれるような辛さを感じてしまうのだ。

    「あの場面、類、気合入ってるんじゃない?」

     ショー公演の後、そう類に告げてきたのは寧々だった。
     二人、隣の家同士という関係性、俄然共に帰ることが多かった。
     類が右側に立ち、その左側に寧々が来る。二人慣れた様子で歩む速度は同じものであり、身体の小さい寧々を、類が合わせてゆっくりと歩んでいくというのが日常になっている頃だった。

    「そうかい?」
    「……類、あの場面だけ本当に辛そうに見える」

     幼少期から、プロの元で稽古を続けてきた寧々だ。
     我流の類や司、それからえむよりも、時に鋭く自分たちのショーを見つめている時がある。
     そんな、彼女から指摘された予想外の言葉だ。
     類は思わず一瞬足を止め、それから何事もなかったかのように歩んでいく。

    「ふふ。類、司と離れるのが嫌なんでしょ?」

     茶化すような彼女の言葉。
     彼女には、類が司と恋仲に落ちた事を既に気取られていた。

    「……もしかしたら、そういう面もあるのかもしれないね。寧々から見て、違和感はあったかい?」
    「それでいいと思うけど。演出には支障ないわけだし」
    「……まぁ、そうだねぇ」

     彼女の鋭いご指摘に、少しばかり頬が熱くなる。
     類はできる限り舞台には私情を及ぼさないようにしていたつもりだったのではあるが、溢れ出てしまう気持ちは隠しきれなかったようだ。

     司、という初めての『恋人』。そして舞い上がっている自分を自覚する。
     初めての恋はままならず、かくもコントロールできないものなのか。
     類は、回り始めた自分の人生が、静かに躍動しているのを肌に感じていくのだった。



    [20210409]
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    TRAINING司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)
    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるよ 1422

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