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    司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)

    #司類
    TsukasaRui
    ##司類

    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるようになっていたのだ。二人は恋人同士。俄然、夜ベッドを共にすればやることはやる。昨日だって、少しばかりの酒に酔いながら、二人身をぴったりと寄せ合って、熱を持った夜を過ごしたのだった。

    「類! 起きれるか?」
    「……ぅん、でも、その前に……」

     全てを思い起こして何とかベッドから這い上がる。昨日の夜、司の温もりにそのまま触れていたかったので、脱ぎ捨てたパジャマを着ないままで寝たのだった。昨日は、それで良かった。けれども差し込む朝日が強くなっているこんな日に、わざわざどこかに投げ捨てているであろうその服を探すのは尚更面倒だった。

    「朝食ができたからな、今日はコーヒーとオレンジジュース、どちらが飲みたいんだ?」
    「……司くんと同じでいいよ」

     ようやく這い出して、目の前のパジャマをわしずかむ。
     ズボンを履き、ボタンを外されたままのシャツをそのまま羽織るだけ羽織って朝の着替えは終了だ。あとは何ともなしに部屋の中央に置かれたテーブルの前に座ると、ふわりと香ばしい香りがして、目の前が少しずつ朝の温かい香りで満たされてきた。

    「類、食べるぞ」
    「そうだね」

     一枚の食パンに、小さなバターが乗せられている。その脇にはスクランブルエッグとカリカリのベーコン。スープは昨日司が言っていた、レトルトのコーンスープだろうか。それから、机の中心にはしっかりとサラダボウルが置かれており、何故か類の分までとりわけ皿が誂えられていた。
     司の作る朝食。特に、限界まで旨味を凝縮した彼のベーコンが好きだった。
     類は緩慢な動作でまず一番最初にその加工肉を頬張った。口中に広がる塩のしょっぱい甘み。
     ゆっくりと動いていた体に、直接栄養素を加えられたようで少しばかりの活力になる。

    「類、サラダもあるからな? 食べても良いんだぞ」
    「……うん。そんな日が来たらいいねぇ」

     あいも変わらず、彼はそんな事を言う。高校の頃からそうだった。
     野菜はいつだって苦手な類だ。
     けれど、彼のこの技術で包み隠すようにそれらを入れ込まれてしまったら、もしかすると気づかない日もあるかもしれないなぁ、とこの頃は思うようになっていた。



    [20210415]
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    TRAINING司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)
    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるよ 1422

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