また君と天side
今年もまた暑い季節がやってきた。今年は去年よりも暑く感じる。夏至も過ぎたけど窓から見えるアスファルトの地面はものすごく熱そうだ。陸は今、なにをしているかな。ボクはそんなことを考えながら外を眺めていた。
陸side
外暑そうだなあ……。でも明日は晴れて欲しいんだよな。明日は天にぃと一緒に打上花火を見るんだ!花火大会の日に2人のオフが被ってて嬉しかったな……。ああ……雨降ってきそうな天気だな、夕立かな……。今は寮にオレしかいないから洗濯物入れないと!
その夜のラビチャにて
天「陸、元気にしてた?」
陸「天にぃ!オレは元気だよ!天にぃは?」
天「良かった。ボクも元気だよ。」
天「明日は2人ともオフだから夜は花火を見るけど、午前中はゆっくり休んでて」
陸「ええ……せっかくのオフだから天にぃに会いに行こうと思ってたのに」
天「ダメだよ陸。忘れたの?小さい頃に花火大会に行こうとしたら熱を出して行けなかったこと」
陸「オレはもう子供じゃないよ!発作も昔ほど起こらなくなったって言ったじゃん!」
天「でもダメ。陸、お願いだから。ボクも陸に早く会いたいよ。だけどそのせいで陸と花火を見れなくなるのはもっと嫌なんだ。だからお願い」
陸「わかったよ……天にぃと花火見れなくなるのはオレも嫌だから。夜まで我慢する」
天「ありがとう陸。大好きだよ」
陸「オレも大好きだよ天にぃ!」
天「おやすみ陸。早く寝てね」
陸「おやすみなさい」
陸side
昼間はあんなに暑かったのに。夕立で冷やされたのかな。気温的にはそこまで変わらないけど、ちょっと涼しい気がする。まるで空から降った打ち水みたい。オレはそんなことを考えながら寮の外に出ていた。
一織「七瀬さん。七瀬さん!」
陸「うわ!一織!?いつからいたの!?」
一織「先程から何度も呼んでいますよ。明日は九条さんと花火を見てくるんでしょう?あなたに体調を崩されたら困ります。」
陸「ごめん…ちょっと外の空気を吸おうと思っただけなんだ。すぐ戻るよ」
一織「まったく…七瀬さんが体調を崩して九条さんに怒られるのは私なんですからね」
陸「一織ごめんって!もう戻るから〜!!!」
天side
もうすっかり夜だな…明日のために準備しないとね。陸と花火を見るなんて久しぶりだな。前回見たのは……陸が入院中で、病院からだった。あの頃の陸は、よく発作を起こしていたから、一緒に外で遊ぶのが難しかったからな。あれから何年も経って、やっと。
楽「おい天!」
天「なに楽、ビックリさせないでよ」
龍「ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだけど」
楽「俺と龍が何度も声をかけたのに反応しなかったのはお前だろ」
天「そう……気づかなかった、ごめん」
龍「明日のこと考えてたの?花火大会ずっと楽しみにしてたもんね」
楽「七瀬の体調のこともあるんだろ?」
天「そうだね、でも明日は大丈夫だと思う。午前中は休めって言ってあるから」
龍「良かった…陸くんも体調大丈夫そうで何よりだよ」
天「ありがとう龍、楽しんでくるよ」
楽「天、楽しんでこいよ」
天「うん、楽もありがとう」
次の日・花火大会の少し前
陸「わあ〜!天にぃ!!」
天「陸、はしゃぎすぎ」
陸「だって、天にぃとこうして花火見れるの初めてだから!」
天「前は病室からだったよね」
陸「ずっと天にぃと花火大会行きたかったんだ。今日来れて本当に良かった!」
天「まったく陸ったら、まだ花火打ち上がってすらいないのに」
天「だけど、ボクも陸と来れて嬉しいよ」
天「ほら、始まりそうだよ。座って見よう?」
陸「うん!わ〜!始まった〜!!!」
天side
花火が打ち上がり始めてからボクは、花火に夢中になっている陸をずっと眺めていた。花火の光によって照らされていたのか、陸自身が輝いて見えたのか分からないけれど、ボクは陸の瞳に映る花火を見て、今までで1番美しいと思った。
陸「天にぃ、来年も来れるといいね!一緒に!」
天「そうだね陸。また来ようね」
束の間に輝いては消え去っていく花火は、どこか陸に似ているような気がして。
ボクは打上花火に『陸が健康でありますように』と願った