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    mizus_g

    @mizus_g
    パージクとたまにヴェラン 字書き

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    mizus_g

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    ワンライお題「一緒に眠る」

    #パージク

    ふと、控えめなノックの音が響く。
     深夜の騎空艇に聞こえる音と言えば艇の駆動音と風の音ばかりであるのが常だ。空耳を疑い、パーシヴァルは耳を澄ました。しばらく返事をしないでいると、少し間を置いてからもう一度、コンコン、と微かなノック音が聞こえてくる。
    「入れ」
     時間が時間だ。こちらが就寝している可能性を考慮しての遠慮であろう。
     訪ねてきているのは、おそらく――。
    「……すまんな、夜更けに」
     開いた扉からジークフリートが姿を見せた。
     最近、時々こういうことがある。夜も更けてパーシヴァルが就寝しようとする頃、見計らったようにジークフリートが部屋を訪ねてくるのだ。今宵で三度目だ。今日は今までで最も時刻が遅い。
    「どうした。共に酒を飲む相手でも探しているのか」
    「いや……、それもいいんだが」
    「今宵は飲まんぞ。もう遅い。明日に響く」
    「酒はまた今度でいい」
     扉を閉めたジークフリートはその場に立ち尽くしている。パーシヴァルは軽く首を傾げて「どうかしたか」と尋ねてみた。
    「一緒に寝ても良いか」
     思わぬ事を請われる。
     パーシヴァルは顔を上げてジークフリートの目を見た。
    「……構わんが」
    「そうか。ありがとう」
     安堵したように緊張を解いて、ジークフリートは後ろ手に扉に鍵を掛けた。ゆっくりと部屋の奥までやってきて、どこか居づらそうにベッドの縁に腰掛ける。
     どういった風の吹き回しであろう。これまでジークフリートがこの部屋を訪ねてきたときは二回とも酒を持っていて、そのままこの部屋で暫し酒を酌み交わす流れだった。そのあと彼は、一度目は自分の部屋に戻り、二度目にはこの部屋に泊まっていった。狭いベッドを占領するのは気が引けるから椅子か床で寝る、と言い張るジークフリートをベッドに押し込め、一緒で構わんと言い聞かせてふたりでひとつ床を使った。当初は下心など無かったのだが、狭いベッドで寄り添い合ううちにどちらからともなく誘い合い、声を押し殺すようにして身体を重ねた。一応は恋仲であるから、そういうこともある。
     今宵の彼はどういうつもりであろうか。酒が要らないということは、ストレートに誘うつもりで来たのか。それとも急に独り寝が寂しくなったのか――彼だって人間なのだから人肌恋しくなる夜があってもおかしくはない。どちらにせよ、お前らしくない、などと一蹴するわけにはいかないだろう。
     パーシヴァルは読んでいた本に栞を挟んで閉じ、テーブルランプを消してから、ジークフリートが所在なげに座っているベッドへと移動する。彼の視線が己の行動を追っていることを意識しながら枕元の灯りを吹き消し、靴を脱ぎ、掛け布をめくってベッドに上がった。
    「来い。寝るんだろう」
     促してやると、ジークフリートは無言のまま頷いていそいそとベッドに入ってきた。パーシヴァルは不自由の無い程度に端に寄り、ジークフリートのためにスペースを作ってやる。
     それでも一人用のベッドでは、大の男ふたりが身体を並べれば肩や腕は無視できぬほどに触れ合ってしまう。ジークフリートはしばらくもぞもぞと落ち着かない様子であったが、パーシヴァルが掛け布を引き上げて二人分の身体を包んでやると、彼は布団の中で黙ったまま身を寄せてきた。肩のあたりにぬくもりが寄り添い、無邪気な獣のように擦り寄ってくる。くらくらするほどの彼の匂いと気配に目眩を覚えながら、パーシヴァルは無心を装って仰向けのまま瞳を閉じた。
    「眠れそうか?」
     抑えた声で尋ねる。
     ジークフリートの髪が肩に擦れる。
    「ん……まあ、眠れるかはわからんが、こうしていていいのならば問題は無い」
    「窮屈ではないか」
    「大丈夫だ。窮屈なくらいの方が良い」
    「もし俺が眠ってしまっても、何かあったら起こしてくれて構わん」
    「ああ……気遣わなくて良いぞ。俺は、此処に居させて貰えるということだけで充分だ。お前が、そばに……」
     髪と髪が混ざって擦れる音が耳元に聞こえている。ジークフリートの呼吸は落ち着いているようだった。どういうつもりなのか、まるで甘えるように擦り寄ってくるくせに、彼の態度はどことなく消極的で遠慮がちだ。何か、伝えたいこと、あるいは伝えそびれていることでもあるのだろうか。
     今のところは情交に誘われる雰囲気でもない。しかし、彼の肉体のぬくもりや肌の感触、声や呼吸音は艶めいた色香を孕んでいるようにも思える。彼が無自覚の色気を放つのは今に始まったことではないから、気にしすぎるのも毒かもしれないが――。
    「……ジークフリート」
     静かな二人分の呼吸音に混ぜるように、抑えた声でその名を呼ぶ。眠る前に、折角だから尋ねておきたいことがあった。
    「……どうして、今宵、此処に来た?」
    「いや……別に、……」
    「なんだ?」
    「大した理由があるわけではないんだが」
    「言いたくなければ無理にとは言わんが、何かあるならば聞かせろ」
    「すまん、本当にだな。何も無いんだ。ただ、」
    「ただ?」
    「……お前に会いたくなった。今宵、お前の隣で眠れたら、と急に思ってな……」
     溜め息のような言葉は、語尾を言い切ること無く夜風の音に紛れていった。
     パーシヴァルは肩に寄りかかるようにして押しつけられているジークフリートのこめかみに自らの耳をこすりつけ、それから少しだけ首を回して額にキスをする。くちびるを押しつけてぬくもりと感触を味わって、ちゅ、と小さな音を立てて吸いながら離れた。ジークフリートが、吐息を震わせるような溜め息をついた。我慢が利かぬほど愛おしくなる。たまらずにキスを繰り返す。額に、頬に、くちびるが当たるままに。ジークフリートは抵抗しなかった。なんども、なんども、無言の甘い吐息がこぼれていた。 
     独り寝で悪夢でも見たのかもしれない。寝付けずに悶々としていたのかもしれない。あるいはそういうことでなく、ただ本当に思いつきのようにパーシヴァルの顔を見たくなったのかもしれない。
     これ以上のことを詮索する必要は無かろう。彼がこの部屋でこの身体に寄り添うことで安心し満足するのであれば、自分はただ彼のために、今宵のひとときを明け渡すのみ。
     それ以上の理屈はどうでも良い。眠れるかどうかすら問題では無いと彼自身が言うように。
    「お前のぬくもりは、気持ちがいい」
     ジークフリートは言った。
     ゆるく掠れて、少しだけ言葉の輪郭がぼやけた、眠たそうな声だった。
    「存分に味わえ」
     会いたくなった、と言ってくれた素直な恋人の髪にくちづけながら、パーシヴァルはその耳にぎりぎり届く程度のほんの小さな声で、やさしく囁く。
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    mizus_g

    REHABILI去年の秋にいただいたリクエストというかシチュエーションで「去年のイベント後、ウェールズに帰るパに、見えない不安を隠して寂しい気持ちを持っているジ、寂しさを嗅ぎ取ってギュンとくるパ」というものだったのですが想定よりジが素直になった気がしないでもない……けど寂しがるジってかわいいなあ。
    だいぶ時間経ってしまいましたがその節はコメントありがとうございました!

    ※イベント後の出来事については捏造です
     アルバノルムの軍勢が国境近くへ侵攻しているという情報が入ってから、数日。フェードラッヘは陣を敷いた軍勢を下手に刺激することのないようにと国境よりやや手前に騎士団の一隊を展開した。迎撃するには規模の足りぬ小隊であったが、背後の駐屯地にはいつでも援軍を出せるようにと騎士達が詰めている。しかし、敵勢と思しき軍は国境の僅か手前でぴたりと進軍を止め、動きの無いまま既に三日が経過していた。こちらの出方を窺っているか、あるいは何らかの事情があるのか――いずれにしろ攻め入ってこない以上はこちらから仕掛けることに大義は無い。動くに動けぬまま、前線や駐屯地では初日の緊張感が薄れ始めているとのことで、明日になって夜が明けても動きが無いようならば騎士団長であるランスロットが国境に赴いて様子を確認するという予定になっている。
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    mizus_g

    DONEワンライお題「二度目のキス」(時間オーバー)「何を舐めている?」
    「レモンキャンディ……だ、そうだ」
     風の無い夜だった。
     騎空艇の甲板で島々の夜景を眺めながら、ジークフリートはパーシヴァルの質問に対してやや舌足らずな発音で答えた。その口元は咥えた飴玉を転がすことに忙しいようで、喋っている最中にもしきりにうごめいている。
    「どうしたんだ、それは」
    「貰った。団員の土産だそうだ。個包装になったものが食堂に大量に積まれていてな、たくさんあったから俺もひとつ頂いてきたんだ」
    「……そうか」
     パーシヴァルは後ろめたさを抱えながら、ジークフリートの唇をちらちらと横目で盗み見ていた。彼の視線は艇の外、眼下の景色に注がれていて気づく様子は無い。
     まるく明るい月に照らされた唇の膨らみは品の良い厚みがあり、肉感を思わせるかたちをしている。ふっくらとしていて実に柔らかそうだ。それから、時折、チロリと覗く舌先が濡れた気配を纏いながら唇の表面を舐め、乾いた膨らみに少しの艶を添えてすぐに引っ込むしぐさをする。それがどうにも見ていて後ろめたい。見え隠れする舌が唇の合間を出たり入ったりするたびにパーシヴァルはなにか好ましくない衝動を持て余し、いったん視 2875

    mizus_g

    DONE「昨日の夢と今日の過ち」
    2021年3月21日全空の覇者17で配布した無料ペーパーに載せたものです。
    貰って下さった方ありがとうございました~!
    黒竜騎士団時代の話です。Rはつきませんが若干スケベです。
    夜も更けた薄暗い城内の廊下を、パーシヴァルはひとり、急ぎ足で宿舎の自室へと向かっていた。
     騎士団の皆はもうとうに寝静まっている。パーシヴァルはというと、黒竜騎士団の副団長に叙任されるにあたって必要な書類を揃えていたら思ったよりも時間がかかってしまい、気がついた時には辺りがすっかり暗く、静まりかえっていたのだった。
     複雑な仕事をしていたわけでもないのに無駄に時間が掛かったことには、理由がある。
     昨夜見た夢のせいだ。誰にも言えぬ、ひどく不埒な夢を見た。騎士団長のジークフリートと自分が何故か恋仲になっていて、ふたりでベッドに上がり、裸で抱き合う夢だった。
     奇妙なまでに五感の伴う夢で、自身で服を脱いだ彼が晒した素肌の色や、その艶めきの臨場感は今でも手に取るように思い出せる。夢の中のジークフリートはパーシヴァルの身体をベッドに押し倒し、自ら脚を開いて挑戦的にパーシヴァルを誘った。パーシヴァルは興奮して自制心をなくした状態にあり、晒された内腿の肉感に躊躇うことなく欲情した。その情動は夢のくせにあまりに強烈で、目が覚めて時間が経過した今も感情の内側に居座ったまま残ってしまっている。全裸の彼の 4494

    mizus_g

    DONEワンライお題「一緒に眠る」ふと、控えめなノックの音が響く。
     深夜の騎空艇に聞こえる音と言えば艇の駆動音と風の音ばかりであるのが常だ。空耳を疑い、パーシヴァルは耳を澄ました。しばらく返事をしないでいると、少し間を置いてからもう一度、コンコン、と微かなノック音が聞こえてくる。
    「入れ」
     時間が時間だ。こちらが就寝している可能性を考慮しての遠慮であろう。
     訪ねてきているのは、おそらく――。
    「……すまんな、夜更けに」
     開いた扉からジークフリートが姿を見せた。
     最近、時々こういうことがある。夜も更けてパーシヴァルが就寝しようとする頃、見計らったようにジークフリートが部屋を訪ねてくるのだ。今宵で三度目だ。今日は今までで最も時刻が遅い。
    「どうした。共に酒を飲む相手でも探しているのか」
    「いや……、それもいいんだが」
    「今宵は飲まんぞ。もう遅い。明日に響く」
    「酒はまた今度でいい」
     扉を閉めたジークフリートはその場に立ち尽くしている。パーシヴァルは軽く首を傾げて「どうかしたか」と尋ねてみた。
    「一緒に寝ても良いか」
     思わぬ事を請われる。
     パーシヴァルは顔を上げてジークフリートの目を見た。
    「……構わんが」
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