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    mizus_g

    @mizus_g
    パージクとたまにヴェラン 字書き

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    mizus_g

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    しばらくリハビリする!11月にWaveBoxでいただいたネタをつかわせていただきます(その説はありがとうございます間が空いてしまってすみません あとリハビリ的な万全でない状態での消化ですみません…)これはギュステでいちゃつくパージク 11月初旬当時まだそこそこ暑かったですよね
    ※あとで直すかもしれないです

    #パージク

    「何処へ行っていた」
    「沖だ」
     短く答えると、パーシヴァルはサングラスを持ち上げながら紅い瞳を細めてジークフリートを見上げた。
     その瞼と睫毛には傾き始めた西陽の色が宿って艶めいている。水着でビーチチェアに寝そべる姿は彼らしい品の良さを備えつつも優美で、ジークフリートはふと、ずぶ濡れの戦闘用水中着を身につけて無骨な武器を携えた自身の容姿を省みた。
     こういうふうに自分の見た目に意識が行くようになったのはつい最近のことだ。最近――つまり、具体的に言えばパーシヴァルと恋人同士のような関係性になった少し後の頃合いから、急に思考が及ぶようになった。とはいえ、いつ何度考えてみたところで自分の姿が彼と様子を異にすることが理解できるだけで、そのことが持ち含む意味や良し悪しについてはよくわからない。
    「沖へ何をしに行った」
    「魔物が出たと聞いてな。誤報だったんだが。だが、それを確認できたことにも意義はあったはずだ」
    「そうか。それはお前の言うとおり、意義はあったろう。浜辺の平和のために必要な善き行いだ。――それで、お前は今、何をしている?」
    「貝を採ろうかと思っているところだ」
    「今からか?」
    「ああ。もともとはそれが目的だった」
     魔物が出たと聞いて貝のことは後回しになってしまったが、まだ今からでも日没までは時間がある。道具は借りてきてあるし、山盛り採ることは難しくてもこの浜の生態について知見を得るくらいならば充分に可能だろう。宿の本棚にあった図鑑と、実際に生きている個体とを見比べてみるのが今から楽しみだ。
     周囲は静かで、ひと気は無い。このあたりがビーチの外れであることも影響してか、海で遊ぶ者達の明るい喧噪は遠く聞こえてくるのみだった。そういえば、パーシヴァルは何故こんなところで一人で居るのだろうか。波の音を聞きながらゆっくりするには良い場所かもしれないが、閑散としていて設備も古いし、わざわざこのような物寂しいところまで来る必要も無さそうなものだが……。
    「貝か。ときどき潮干狩りをしているようだが、好きなのか?」
     パーシヴァルはゆったりとした余裕のあるしぐさでビーチチェアから身を起こし、手にしていたサングラスをチェア脇の小さなテーブルに置いた。
    「そうだな。面白いぞ、貝は。それから、ほかの砂浜の生物も」
    「……そうか」
     短い返答と同時にジークフリートを見たパーシヴァルの瞳は、悠然と落ち着きながらも燻るような情熱を灯し、あかあかと燃え立つように力強く息づいていた。
     ふいに強くぶつけられた視線に射貫かれ、ジークフリートは呼吸を止めた。何気なく会話をしていただけの相手が、急に触れがたいものになってしまったかのようにその気配の色味を変えてゆく。目を逸らしても瞼を下ろしても逃れられない。いったん距離を取ろうとしても、すでに捕まえられてしまっている。
    「ならば俺も手伝おう。道具を貸せ」
     声は、耳の内側をくすぐりながら脳髄まで届いて甘く響いた。
    (手伝うとは、なにを、……ああそうか、貝を)
     ふしぎだ。
     そんなに真剣な目で言うほどの行為ではないはずだ。
     まるで何かの秘密の告白をするかのような思い詰めた声音で告げるほどの重みも、今のこの場にふさわしいようには思えない。
    「俺が居ると不都合があるか?」
    「いや……そんなことはないが」
    「貝を採る目的は何だ。観察か? それとも夕餉の材料にでもするのか」
    「観察だな。この浜に生息する生物についての図鑑を見て、せっかくだから実物を見てみたいと思ったんだ」
    「ほう。ならば後で俺にもその図鑑を見せてみろ」
    「……」
     不敵なようにも見える得意げな微笑。その表情には深い愛情が宿っていることをジークフリートは知っている。
     たとえば、街で困っている子どもを手助けして礼を言われたときに彼はこういう顔をする。彼が認める家臣や仲間が好ましい手柄を立てたときにも。いや、でも、それらは今のこの自分に向けられた微笑とは少し違うような気もするが――どちらにしてもジークフリートは憧れずにはいられない。相対するものを甘く満たすような端然たる佇まいと器量に酔わずには居られない。
     ついてしまった溜め息の音を聞かれただろうか。これではまるで、熱に惑い思い詰めているのはパーシヴァルではなく自分の方であるかのようだ。もしかしたら本当に、彼はいつも通り冷静で、自分ばかりがおかしくなってしまったのではないか。想いを燻らせているのは彼ではなくこの身なのではないだろうか?
     俄に沸き立つ思慕を持て余して視線を逸らしたジークフリートの様子など意に介すこともなく、パーシヴァルはチェアから下りてビーチサンダルに足先を入れて立ち上がった。そのしぐさ、表情、吐息の音ひとつひとつ、あらゆる全てがジークフリートの気を惹いて、熱を持ったままの心が揉みくちゃにされてゆく。
     何も言えず、ただ立ち尽くしたままでいても文句ひとつ言わずに潮風に服の裾を揺らがせている男の横顔がうつくしい。どうしたらいいのだろう。橙色の気配を帯び始めた西向きの陽光が彼の輪郭を煌めかせて、眩しく頼もしく、どうにもならず恋しい。この男が俺に惚れていると言うのだから世の中はほんとうに不思議なものだ。到底信じられない。何かに誑かされているのかもしれない。でも、パーシヴァルが俺に嘘を言うはずがないから、やはり俺達はたしかに恋仲なのだろう。――とんでもないことだ。
    「パーシヴァル」
     その場で屈んで、武器を置き、代わりに足元に転がしてあった潮干狩りの道具を手に取った。視線を砂浜に落としたまま名を呼ぶ。すこし声が揺れたことに彼は気がついただろうか。
    「なんだ」
     立ち上がる。
     気配と声と体温が近くなる。
     もう少しこうしていたい。そばに居たいし、手放すには惜しい。感情を押し上げてくるような願いは焦燥にも似て、制御できぬ何かに駆り立てられるかのごとくジークフリートは口を開いた。
    「しばらく俺の傍に居てくれないか?」
     言ったあとで、ひどく身勝手で傲慢な事を口にしてしまったことに気がついて顔が熱くなった。訂正しようと顔を上げると視線が出会い、絡め取られたように何もわからなくなって、頭の奥がじわじわと麻痺してゆく。後戻りできないことを直感する。
    「言われずとも、無論」
     伸ばされた手に肩を抱かれ、身体が溶けてしまうような錯覚で震えた。熱すぎるくらいの体温にとろけてゆく肌を撫でられ、耳元に囁かれ、こめかみのあたりに攻めるようなキスをされて進退窮まり黙り込む。
    「しおらしいな。もっと我儘を言っても構わんが、どうだ?」
     そんなことを問われても、どう答えたら良いものか。
     抱き寄せられることで甘い感情が闇雲にふくらむ。自分のようなものがそういう想いを持っていることが酷く恥ずかしいことのように思えてならないと言うのに、パーシヴァルは恥ずかしいものを煽り立てて引きずり出そうとするかのようにキスを繰り返してくる。髪へ、耳へ、目元へ、唇へ。耳に注がれる言葉の意味を上手く噛み砕くことができない。受け止めるのがむずかしい。こういうのは、いまだに、どうしても慣れない。
     ぎりぎり認識できる範囲で、自分が彼に愛されていることを悟って訳もわからず溢れるほどに満たされながら、こぼれたものを処理しきれずにジークフリートは声もなくあえいだ。水着越しに、あるいは直に素肌に触れてくる指先は僅かに汗ばんで湿り気を纏い、熱く誤魔化しようもない恋慕を濃厚に滴らせながら、切々と肌に擦り込むかのようであった。

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    mizus_g

    REHABILI去年の秋にいただいたリクエストというかシチュエーションで「去年のイベント後、ウェールズに帰るパに、見えない不安を隠して寂しい気持ちを持っているジ、寂しさを嗅ぎ取ってギュンとくるパ」というものだったのですが想定よりジが素直になった気がしないでもない……けど寂しがるジってかわいいなあ。
    だいぶ時間経ってしまいましたがその節はコメントありがとうございました!

    ※イベント後の出来事については捏造です
     アルバノルムの軍勢が国境近くへ侵攻しているという情報が入ってから、数日。フェードラッヘは陣を敷いた軍勢を下手に刺激することのないようにと国境よりやや手前に騎士団の一隊を展開した。迎撃するには規模の足りぬ小隊であったが、背後の駐屯地にはいつでも援軍を出せるようにと騎士達が詰めている。しかし、敵勢と思しき軍は国境の僅か手前でぴたりと進軍を止め、動きの無いまま既に三日が経過していた。こちらの出方を窺っているか、あるいは何らかの事情があるのか――いずれにしろ攻め入ってこない以上はこちらから仕掛けることに大義は無い。動くに動けぬまま、前線や駐屯地では初日の緊張感が薄れ始めているとのことで、明日になって夜が明けても動きが無いようならば騎士団長であるランスロットが国境に赴いて様子を確認するという予定になっている。
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    mizus_g

    DONEワンライお題「二度目のキス」(時間オーバー)「何を舐めている?」
    「レモンキャンディ……だ、そうだ」
     風の無い夜だった。
     騎空艇の甲板で島々の夜景を眺めながら、ジークフリートはパーシヴァルの質問に対してやや舌足らずな発音で答えた。その口元は咥えた飴玉を転がすことに忙しいようで、喋っている最中にもしきりにうごめいている。
    「どうしたんだ、それは」
    「貰った。団員の土産だそうだ。個包装になったものが食堂に大量に積まれていてな、たくさんあったから俺もひとつ頂いてきたんだ」
    「……そうか」
     パーシヴァルは後ろめたさを抱えながら、ジークフリートの唇をちらちらと横目で盗み見ていた。彼の視線は艇の外、眼下の景色に注がれていて気づく様子は無い。
     まるく明るい月に照らされた唇の膨らみは品の良い厚みがあり、肉感を思わせるかたちをしている。ふっくらとしていて実に柔らかそうだ。それから、時折、チロリと覗く舌先が濡れた気配を纏いながら唇の表面を舐め、乾いた膨らみに少しの艶を添えてすぐに引っ込むしぐさをする。それがどうにも見ていて後ろめたい。見え隠れする舌が唇の合間を出たり入ったりするたびにパーシヴァルはなにか好ましくない衝動を持て余し、いったん視 2875

    mizus_g

    DONEワンライお題「一緒に眠る」ふと、控えめなノックの音が響く。
     深夜の騎空艇に聞こえる音と言えば艇の駆動音と風の音ばかりであるのが常だ。空耳を疑い、パーシヴァルは耳を澄ました。しばらく返事をしないでいると、少し間を置いてからもう一度、コンコン、と微かなノック音が聞こえてくる。
    「入れ」
     時間が時間だ。こちらが就寝している可能性を考慮しての遠慮であろう。
     訪ねてきているのは、おそらく――。
    「……すまんな、夜更けに」
     開いた扉からジークフリートが姿を見せた。
     最近、時々こういうことがある。夜も更けてパーシヴァルが就寝しようとする頃、見計らったようにジークフリートが部屋を訪ねてくるのだ。今宵で三度目だ。今日は今までで最も時刻が遅い。
    「どうした。共に酒を飲む相手でも探しているのか」
    「いや……、それもいいんだが」
    「今宵は飲まんぞ。もう遅い。明日に響く」
    「酒はまた今度でいい」
     扉を閉めたジークフリートはその場に立ち尽くしている。パーシヴァルは軽く首を傾げて「どうかしたか」と尋ねてみた。
    「一緒に寝ても良いか」
     思わぬ事を請われる。
     パーシヴァルは顔を上げてジークフリートの目を見た。
    「……構わんが」
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    mizus_g

    DONE「昨日の夢と今日の過ち」
    2021年3月21日全空の覇者17で配布した無料ペーパーに載せたものです。
    貰って下さった方ありがとうございました~!
    黒竜騎士団時代の話です。Rはつきませんが若干スケベです。
    夜も更けた薄暗い城内の廊下を、パーシヴァルはひとり、急ぎ足で宿舎の自室へと向かっていた。
     騎士団の皆はもうとうに寝静まっている。パーシヴァルはというと、黒竜騎士団の副団長に叙任されるにあたって必要な書類を揃えていたら思ったよりも時間がかかってしまい、気がついた時には辺りがすっかり暗く、静まりかえっていたのだった。
     複雑な仕事をしていたわけでもないのに無駄に時間が掛かったことには、理由がある。
     昨夜見た夢のせいだ。誰にも言えぬ、ひどく不埒な夢を見た。騎士団長のジークフリートと自分が何故か恋仲になっていて、ふたりでベッドに上がり、裸で抱き合う夢だった。
     奇妙なまでに五感の伴う夢で、自身で服を脱いだ彼が晒した素肌の色や、その艶めきの臨場感は今でも手に取るように思い出せる。夢の中のジークフリートはパーシヴァルの身体をベッドに押し倒し、自ら脚を開いて挑戦的にパーシヴァルを誘った。パーシヴァルは興奮して自制心をなくした状態にあり、晒された内腿の肉感に躊躇うことなく欲情した。その情動は夢のくせにあまりに強烈で、目が覚めて時間が経過した今も感情の内側に居座ったまま残ってしまっている。全裸の彼の 4494

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