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    saltabcd

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    シナリオ:三丸商舗様作「寥々と、まもなく 」
    PC:東惣太郎
    注意:シナリオネタバレ・部分改変&追加があります
    作品URL→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16682433

    「寥々と、まもなく 」ソロプレイログ 本日も、███日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の五番線の電車は、23時53分発、██行きです。
     12月末。身体が石になるような寒さの中、淡々としたアナウンスが響く。
     人混みのような列、あるいはまばらな列に並び、あなたは電車を待っていた。
     平日の終電ということもあり同乗者は多く、酔っているのか大声で会話をしているひともいれば、その顔に疲労を滲ませた仕事帰りだろうひともいる。あなたは後者側の人間。疲れ切った心身を2本の足でなんとか支えながら、本日最後の電車を待っている。

    (……ハードだったな……親が暴れるなんて久々……疲れた……)

     あなたの頭の中では、保護している子どもの親の怒号が反響し続けているだろう。右頬に貼り付けたガーゼをひと撫でし、大きく溜息をついた。
     しばらくすれば、入線メロディの後に『間もなく、五番線に電車が参ります。危ないですので、黄色い線の内側まで、お下がりください』と、どこか平坦で鸚鵡のような声が流れる。車体の巻き起こす冷たい風があなたの頬を刺し、目の前の景色を掻き消すように電車が訪れる。
     背の低いドアが開き、あなたはひとの流れと共に車内へ乗り込んだ。


    《幸運》
    14/40→成功


     あなたは空いている座席に座ることができる。
     人工的な暖かさが車内を包んでおり、疲労のせいもあってか、あなたの意識はひとときの間、浅い場所へと沈んでいく。

    (……あ、だめだ。ちょっとだけ……寝……)



    ーーーー
    ーーー
    ーー



     あなたは目を覚ます。同時に、運よくあなたの最寄り駅の到着アナウンスが聞こえ、あなたは勢いのままに車内から飛び降りるだろう。あなたの背中でドアが閉まり、電車は走り去っていった。

    「よかった。乗り過ごすとこだった」


    《聞き耳》
    66/65→失敗


     ホームに降り立ったあなたは、そこが時間帯に対してひとが少なすぎることに気が付く。いいや、少ないどころか、あなた以外に誰もいないのだ。乾いた空気が、がらんとしたホームに吹いている。

    「……珍しいなあ。僕も早く帰ろ」

     風が冷たい。電車に乗る前に感じていたものと同じ、冬の風だ。けれど、いつもよりどこか澄んでいるような気がする。
     ホームの両側に線路が接しており、線路を挟んだ向こう側にも同じ形式のホームが並んでいる。あなたが普段使っている駅だ。
     すこし見上げれば発車標がぶら下がっている。ホームの中ほどには椅子がいくつか設置されており、その近くには自動販売機が立っている。駅舎や他のホームとは上りの階段から連絡するようだ。
     無人のプラットホームは、透徹した夜気の中、森閑としてただ静かにあなたを認めている。

    《アイデア》
    04/60→クリティカル

     この世界に、ただひとり放り出されたような心持ちになる。それははてしなくおだやかなことだった。ここは、どこかふしぎな安心感と不可解さに満ちている。先ほどまで頭を反響していた怒号も、今はすっかり聞こえない。

    「……静けさが染みるなんて、久々」

    【SANc 0/1の回復】
    40+1→41
    (クリティカルのため自動成功)

     あなたは不意に自動販売機の光に吸い寄せられる。
     冬場であるためあたたかい飲み物が多めに補充されている。1日を終えたということもあり、いくつかには売切のランプが点灯している。ホットコーヒー、お茶、ジュース類など、残っているものは購入できそうだ。
     その向かい、5脚並んでいる椅子のうち、ひとつにだけパスケースが無造作に置いてある。

    《目星》
    16/65→成功

     おや、と思い拾い上げてみると、中には定期券が入っている。この駅が区間内なのかもしれない。

    「忘れ物かな。駅員さんに届けておかないと」

     ここまで自身に特に変わった様子はない。荷物もそのままだ。
     ここであなたは、明日提出する始末書に不足があったことを思い出す。居合わせた同僚に、できるだけ早めに確認を取っておかなければ。ここで放置すれば、後からさらに面倒なことになるのは目に見えている。

    「……遅くに申し訳ないけど……」

     しばらくの躊躇いののち携帯電話を取り出し、同僚に電話をかける。電波自体は通っているようだ。ただ、どこへ電話をかけても誰へメールを送っても、何も返ってこない。留守番電話に切り替わるまで延々とコール音が鳴り続け、投げかけたメッセージに既読がつくことはなかった。『向こう側に誰もいない』ことが判る。それなのに、ひとがいなければ稼働しないはずのものが当たり前に動いている。どこまでも静かだった。

    「え?そんな……ついてないな。明日、早めに出勤するしか……はあ……」

     大きなため息と共に、ふらふらと階段を上る。
     広い空間に出た。改札の向こう側にも同様のコンコースが伸びており、中央の改札外コンコースで分断されているようだ。改札の横にはシースルー改札が見える。また、あなたが出てきた階段の他にも、他ののりばへ繋がる階段が設けられている。
     改札内には売店の看板が点灯しており、構内にある他の商業施設にも電気が点いている。
     売店の冷蔵庫も電気が点いており、一見問題なく開店しているように見えるが、やはり客や店員はいない。

    陳列棚に《アイデア》
    78/60→失敗

    「これまた珍しい。ほんとに遅くなっちゃったみたいだなあ……眠……」

     目を擦りながらシースルー改札のガラス張りの窓を覗けば、中にカウンターが設置されている。定期券を渡そうと駅員を探すが、どこにも見当たらない。
     中へ入ろうとしても、扉には鍵がかかっているようだった。

    「ううん、落とし物、持って帰るわけにもいかないからなあ……」

     駅員を探しに、3・4番線に向かってみる。
     あなたがいた1・2番線と同様に、人影はない。発車標も、終電が終えたことを示している。自動販売機の品ぞろえがわずかに違う。

    《アイデア》
    89/60→失敗

    「……眠い……目がかすむ……」


     続いて5・6番線に向かう。
     ここも他ののりばと同じく無人だ。
    《目星》
    20/65→成功

     あなたが立っているホームにも、反対側のホームにも、あなた以外の人間はいない。日常的によく使う場所であるのに、今あなたの目に映るのは見たことのない景色だった。

    目星成功時追加で《アイデア》
    《目星》
    93/65→失敗

    「…………。まあ、たまにはそういうこともあるかあ。うん、あるある。早く帰ろ」


     疲労がピークに達しているあなたは、この不可思議な場所について考えることも、駅員を探すことも諦める。そのまま改札を通って帰宅しようとするだろう。

    「……あれ?定期……うそ、ない」

     しかしいつも定期を入れている鞄にも、衣服のポケットにも、自分の定期が見当たらない。しかし、改札を通るには定期かきっぷが必要だ。

    《目星》
    52/65→成功

     改札の近くにある精算機の近くに、「落とし物ボックス」と書かれた箱が置かれている。中を見るが、何も入っていない。
     ここで、先ほど拾った落とし物の定期の存在を思い出す。定期券は区間内の使用であればチャージが減るわけではなく、現状駅員がいないのであれば、それを借りて改札を行き来することができるのではないか、と思い至る。

    「……誰もいない、自分の定期がない、拾った定期はある……子どもたちに顔向けできないけど……早く、帰って寝たい……」

     拾い物の定期券で改札を通ると、中央の広場に出る。
     本来「人々が集まる場所」を意味するこの広い空間は、けれどあなたひとりを出迎えた。
     広場から左右に長く通路が伸びており、半円をえがくように鉄骨が連なった天井はとても高い。通路の両脇には等間隔でいくつもの照明が設置されている。それが通路のおわりまで、延々と続いていた。通路の側面、横一列に並ぶ窓ガラスはどこまでも冷たい黒を湛えている。そこは広漠としていて、まるで異様に長い坑道のようだった。これまで続いていた世界が一旦途切れて……突然、どこまでも続く道へ足を踏み入れたような。無機質な光があなたをぼんやりと照らしていた。


    成功値(100-現在SAN値)
    64/(100-41)→失敗


     あなたは北口から外に出ることにした。長い通路のおわりに、エスカレーターと階段がそれぞれ設置されている。駅内から外の様子を見るのであれば、外はホームにいたときと同様に暗く、だれひとりとして歩いていない。駅の外にある店は大体がシャッターを閉めきっており、コンビニのあかりがやけに目立っている。

     長い通路を歩いた後、エスカレーターあるいは階段を下りていく。駅内から見える外の景色はやはり無人だ。あなたは駅の外へ出る。
     足を踏み出し、ひとつ、まばたきをしたときだった。
     そのときあなたの目の前に広がっていたのは、あなたが知っている日常の景色だった。少ないけれど、まばらにひとが歩いている。ひとの声がする。
     時刻は深夜0時ちょうどのようで、あなたからしてみれば、時間がすこしだけ早送りにされたような……あるいは巻き戻されたような心地かもしれない。硬い寒さが横薙ぎに吹いてきた。
     あなたの手元には、落とし物の定期券がそのまま残っている。

    「……明日でいいか」

     定期券を上着のポケットに滑り込ませた直後、あなたのよく知る青年が声を掛けてくる。

    「あれ?先生?」
    「……寿」

     寿敬一。関係性は一口に言い表せないが、それなりに深い付き合いのある、19歳の青年。
     彼がダウンジャケットのフードを脱げば、明るい茶髪が冷風にふわりと揺れる。同時に漂う整髪料と微かな油の匂いは、カラオケ店のバイト帰りであることを示していた。

    「奇遇すね。遅くまでお疲れ様です。……ほっぺ、どうしたんです?」
    「ええと……転んじゃってね。僕どんくさいから」

    咄嗟に出た嘘に気付くことなく、寿はあなたの顔を眺め回すだろう。彼はひとしきり観察すると、困ったような笑みを浮かべて言う。

    「やー、先生、超疲れた顔してますよ、そりゃ顔面からいきますよね」
    「はは……そうだね」
    「超さみーし、早く帰りましょ」
    「うん」
    「明日も早いんですよね。無理しないでくださいよ?」
    「なんで知ってるの」
    「顔に書いてあります」
    「嘘ぉ……」

     先ほど足を踏み入れたプラットホーム。
     静けさが心地良いと思ったのは、随分と久しいことであった。静寂など寂しさを倍増させるだけのものに過ぎなかった。隣で歩く彼と出会ってしまってから、孤独な時間はことさら虚しいものとなっていた。

     それでも、あの場所は────
     
     あなたがあの穏やかな静けさを忘れることは、決してないだろう。その記憶はきっと、あなたが孤独に打ちのめされそうな時に思い出される。静寂は悲しいものではない。虚しいものではない。あなたを世の喧騒から守るものだ。そしてあなた自身が、あなただけの世界を守るためのものなのだ。と、語り掛けるように。

     翌日。あなたが落とし物ボックスへ定期を届けに行くと、そこには入れ違うようにあなたの定期が置かれているのだった。


    ■ENDA-1

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     PC生還
     生還報酬:1d10+5

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    1d10→4
    41+4+5=50

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