探偵と三人の若モ　おや、いらっしゃいマイボーイ。随分と深刻な顔をしているネ？　まあ一杯いかがかな？　もちろんノンアルコールだとも！
今日は客も少ないのでネ。老人の雑談に付き合ってくれたまえ。

　3、というのは実に不思議な数字だとは思わないかネ？
　三人寄れば文殊の知恵、石の上にも三年……これは日本のことわざだ。欧米圏の神話や童話でも3はしばしば登場する。
　ローマのホラティウス三兄弟、北欧の運命三女神、グリム童話の糸繰り三人女、そして三匹の子豚……ああ、そういえば我々の再臨姿も三種類だ！

　さて、そろそろきみが知りたい核心に近づいていくヨ。若い私がホームズに謹慎室へブチ込まれた理由を聞きにわざわざ来たのだろう？　ダディは何でもお見通しなのサ！

　さて、あの若者は私と同じくシャーロック・ホームズと敵対している。喧嘩を売りに行く頻度は私よりも高いが、いつもボロ負けしているのは知っているだろう？　そこで彼はあらゆる兵法書を読み込み始めた。うん、我ながら努力家だ！

　……古今東西の兵法で基本中の基本として書かれているのは…そう、「数の多い方が勝つ」元も子もないがネ！
　運命の三女神なんかを取り込んでいるせいか、若い私はルール違反スレスレを滑空飛行している。軽率な思いつきを実践できるだけの能力を持ってしまった。あの若造は愚かにも、三人がかりで取り囲めばシャーロックに一泡吹かせられる。そう考えたのだよ。
　あいつは種火を幾つかちょろまかしてリソースとして使い、自身を各再臨ごとに分割したのサ！

　え？　何が愚かだったのかって？　そうだネ。先ほど私は「数の多い方が勝つ」と言った。三人がかりで襲えばさしものシャーロック・ホームズとはいえただでは済まないだろう。
　だが彼はまず、己について知らなければならなかった。そう――各再臨で個別の意思を持った場合、そもそも協力できるのか、という事を真っ先に考慮すべきだった。
　元は一人の人間とはいえ、それぞれの再臨でアクが強すぎるデショ。マー仲良くなんてできないよネ！

　もはや異星の使徒でもなく、カルデア召喚式で与えられた霊器はあくまで一つ。分裂というのはそれを三つに分けたに過ぎない。それぞれ三分の一程度に下がった能力のままチームワークもへったくれもない状態で喧嘩を売れば……結果は火を見るより明らかだろう