胡蝶の夢符離集焼鶏が行方不明になった。
空桑捜査室。警備室に隣接するこの部屋の主たちにそんな訴えが寄せられたのはある日の早朝のことだった。
「サボりがちな子ではありますが、三日も無断欠勤なんて……オレの記憶でも津浦鉄道にいた頃ですらそんなことはありませんでした」
姿を消した符離集焼鶏の兄、徳州扒鶏が目の下の隈を一層濃くしながら心配そうに、それでいて苛立ちも隠せないような顔で話している。
「えっと、そうですね。三日も……」
それに応えているのは捜査室の人員のひとり、雲托八鮮だった。当番表を見遣り几帳面そうな手つきで木簡を磨きながら、というよりは無意味に布で小さく擦りながら徳州の話を聞いている。
「警察のオレが貴方がたにこんなことを頼むのはおかしいことは分かっています、でも……若には知らせたくない。弟のことで余計な心配をかけたくないんだ、だがオレ一人では探すにも限界がある。それに」
6596