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──人の息吹を感じる。
喧騒から隔離された部屋で、歓声が遠くで聞こえた。
この国は都市同盟という名を捨て、デュナンとして産声を上げた。その、建国を祝して式典が行われている最中だ。
そんな中でティアは一人、部屋で本の頁を捲っている。
この部屋に鍵はかけられていない。見張りが立てられているわけでもない。だというのに、ティアはこの部屋を牢獄のようだと称した。
足下を見遣ると、存在しないはずの鎖が巻き付いているのが見える。雁字搦めにされたそれは、この部屋の先、明るい未来を夢見て王に期待する民草に繋がっていた。
約束の地にてジョウイと武器を交え、彼の想いとともに片割れの紋章を宿したリアンは、削られていた寿命が戻ってきただけではなく、強大な力の副産物としてティアと同じく体の成長を止めることとなった。
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