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僕には、数歳差の先輩がいる。名を、ティア・マクドールという。
琥珀のような色の瞳に、鴉のように黒い色の髪を持っている。ふとしたときの眼差しが似ていると知り合いから言われたことがあるけれど、己の顔と彼の顔を見比べる機会なんて皆無で、その実感はない。それに、顔立ちはそこまで似ていないし、性格に至ってはほぼ真逆と言えるほどに別物だった。
頭脳明晰、武勇に優れた旧赤月帝国五将軍の嫡男。天賦の才がありながら、その実努力家でもある。その上、それを一切ひけらかさない。
見た目だけなら、巷で言うところの「かわいい少年」に見えるかもしれない。けれど、かけ離れた性格と大人顔負けの怜悧さに、同盟軍でも一線を引くように一目置かれていたことを覚えている。
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