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先に、石畳を踏み込んだのはティアだった。
棒術において機敏な動きは利点である。成長を止めてしまった体は腕力はそこそこに大人にはない靭やかさを維持しており、ティアのトリッキーな戦い方に活かされている。敵はおろか味方まで翻弄するような動きは独りで戦い慣れた証でもあった。
逆を言えば、敵を前に背を向けるなど、継承戦争が終わってからというもの実行していなかった。天牙棍を握る手に力が入る。
このまま城内を走り抜けるのは得策ではない。デュナン城を案内はされたものの、宿星として滞在しているわけではないティアは、城の構造を隅々まで理解していない。闇雲に駆け回り袋小路に辿り着いてしまえば、為す術が無くなってしまう。
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