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    shidare621

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    これ↓の斑目線
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25061360

    最初は斑目線で書いてたけどシリアスすぎてダメになり、途中でこはく目線に切り替えたので、未完成ですが話の流れは最後まで同じです。(台詞とか細かいところは違う)

    #こは斑
    yellowSpot
    #リクエスト
    request

    リクエスト「初夜をまえに悩むこは斑」の斑目線 最近、こはくがそわそわしている。聡い斑がその様子に気付かないわけはなかった。
     紆余曲折あって相棒兼恋人同士として付き合い始め、半年が経った。斑はてっきり、こはくのことをウブで世間知らずの箱入り息子だと思っていたのだが、意外と彼が恋愛に慣れて色気づくのは早かった。どこで習ったのかほのかに甘い香水もつけてくるようになったし、ツーリングや甘味処巡りが中心だったデートは、いつの間にかESの外にある斑の隠れ家で行われることが増えていた。
     今日はこはくからの提案で昔の映画を観た。座敷牢にいたころに色々と観ていたらしく、こはくは映画に詳しい。別にそれだけが目的ならESのシアタールームを予約すればいいものを、二人きりがいいから、などという可愛らしい理由で強請られ、斑の部屋を貸すことになった。
     ここには必要最小限の家具しかなく、当然テレビなんて置いていない。諜報用ノートパソコンの小さなモニターをテーブルの上に置いて、ベッドに座り込んで覗くだけの、映画好きからしたら有り得ないような鑑賞会だった。内容的には、いろいろあったけど結ばれてよかったなあ、以外は特に感想も出ないような凡庸なロマンス映画。こはくもどこが面白かったかは言及せず「ロマンチックやったね」と、この世のロマンス映画すべてに言えそうな普遍的コメントで終わらせていた。強いて言えば濡れ場のシーンは確かに映像や演出が際立っていたが、ポルノ映画でもなしにそこに力を入れてもなあ、と思う。それに、いま濡れ場のシーンについて話すのは斑にとって得策ではないので、何も言わなかった。
     中身のない鑑賞会が終わると、マグカップを置く音と共にこはくの香りがふわりと近づく。斑の肩に頭を預けて「まだ帰りたないなぁ」と発される声は、真夏に外に放置されたキャラメルみたいに甘い。
    「なぁ……明日って午後から?」
     言いながら、こはくの右手が斑の左手に触れる。角ばった指を一本ずつ撫でつけて、形を確かめている。たぶん斑の予感は当たっている。だから敢えて平静を装い、砕けたトーンで返事をした。
    「この業界は基本的にスタートが遅めだからなあ。レッスンや打ち合わせも入っていないし、お昼頃に星奏館を出るつもりだぞお」
    「そ。わしも。基本遅めやからね、やっぱ」
    「そうだなあ」
     言外に「このあとは星奏館に帰る」と告げたようにも聞こえる台詞は気にも留められていない。都合のいい部分だけを飲み込んだこはくの紫がじっとこちらを観察している。
    「斑はん……」
     熱っぽい瞳で見つめて、顔が近づいてくる。「ん?」と首を傾げてやると、柔らかな唇が斑のそこに触れた。手を繋ぐのと大差もないような、触れるだけのかわいらしいキス。それが何度か押し付けられるうちに力がこもって、閉じた蕾をこじ開けるように、少しずつ、少しずつ、内側の粘膜が暴かれていく。
     ここまでは許してきた。
     だが、こはくがポロシャツの下に滑り込ませた指先が肌に触れる前に、斑はその手首を掴んだ。
    「んっ……こはくさん」
    「あかんの?」
     こんな付き合いたての中高生がするようなキスで息を荒くしたこはくが、大きな瞳に熱を宿らせ、上目遣いで見つめてくる。かわいらしさの中に隠しきれない本能を滲ませた色気に、何も感じないでいられるわけがない。斑は視線を逸らした。ひとつ大きく息を吸って、吐いて、自分の中の嫌いな部分を胸の奥に押しやる。表に出てきたのもまた、大嫌いな自分であることに変わりはないのだけど。
    「君には未来があるだろう。これ以上は止しておくべきだ」
    「…………はぁ?」
     たっぷり五秒間ほど固まってから、こはくは小さな口を大きく歪ませた。
     しかし斑は貼り付けた笑顔を剥がさない。もう決めていたのだ。半年前、こはくから恋人同士になりたいと言われ、それをあっさりと承諾した時から。こはくが身体を求めてきたら、この手を離してやるのだと。
    「薄暗い部屋でつまらないけど濡れ場のある映画を観てムードを高めまくってもらったところ申し訳ないが、こればかりは譲れない。俺は君と性行為をするつもりはない」
    「……」
     言って、こはくから手を放す。沈黙が長かった。突然梯子を外されたも同然なのだから、受け入れがたくて当然だ。斑は吐き気に扮してせり上がってくる自己嫌悪を唾と一緒に飲み込んだ。演じろ、ここまできたらもう後戻りはできない。これまでの人生、欺瞞ほど斑の身に慣れ親しんだ行いはないのだから。それにこれは、こはくのためなのだから。
    「……一応聞いたるけど、それは、斑はんがわしと『したくない』っちことやんな?」
    「うーん。まあ、結論だけ言えばそうなるなあ」
    「それは『どっち』でも、っちこと? 何や、齟齬があるなら正しておきたいんやけど。わし、その、まぁ希望はあるけど最悪どっちでも良ぇし。斑はんの嫌がることはしたないし」
     いじらしいことを言われ、脳の指令に反して胸は勝手にぎゅうと絞まる。その感覚になんとか鉄仮面を被せて斑は朗らかな声を造った。
    「『どっち』と言うと、俺が君をどうこうするのは暴行に近いし考えたことがなかったなあ。そういう『したくない』とは違うし、嫌というわけではないんだが……」
     俯いたこはくの喉が息を通してか細く鳴った。斑の言葉を嚙みしめて、反芻して、傷ついている。それを正面から受け止めるのが、今の自分にできる精一杯の落とし前だ。
    「その……『未来がある』っちのは冗談やんな? わしがそういうの一番嫌いやって、ぬしはんもよぉ知ってるやろ」
    「……言葉のままだなあ」
     家柄、年齢、立場、職業、性別、性格。つらつらと指折って、自分たちが恋愛をするということが如何におかしいかの根拠を並べ立てた。
    「俺ともいつまで続くかわからないわけだし、続いたとて茨の道だ。こはくさんには出来るだけ光の道で、健全に育ってほしいからなあ。まだ十六歳で、これからきっと良い出会いもある。そのとき男の尻でしか良くなれなかったら可哀想だろう? 触れ合いはプラトニックなものに留めておいた方が安全だという提案なんだが、どうかなあ?」
    「……」
     選び抜かれた言葉たちを投げつけて、斑はこはくの喉が震えるのをじっと待った。変われ、怒りに。裏返れ、憎しみに。早く、早く。
    「――なんっっっで! ぬしはんにわしのほのぼの成長記録まで決められなあかんねん!」
     しばらくして、こはくは斑の想定通り堪忍袋の緒を切らせて出て行ってくれた。バタンと大きな音を立てて閉じたドアを見つめ、ふ、と息を吐いた。
    「……一件落着、だなあ」
     独り言は癖みたいなものだ。ずっとこうして生きてきた。思っていたより弱々しい声になってしまったことだけが、ただ悔しい。
     その夜はこの部屋で眠った。テーブルとベッドと小さな棚以外に何もない。隣に誰もいない。斑にとって、これが普通の夜だった。

     そんなことを考えていたなら先に言え、という意見はもっともだが、こはくに斑を諦めさせる現実的な手段の中で、一番手っ取り早い方法がこれだった。
     いっそのこと嫌いだと言ってしまえたらどれほど簡単だったか分からないが、そんなことができるならとっくにそうしていたし、こんな関係に縺れこんではいない。その点にだけはどうしても嘘が吐けなかった自分の狡さも斑は嫌いで、こはくにも早く嫌いになってほしかった。それに仮に嘘を吐いたとしても、きっと見抜かれてしまう。だって、自分が本当に彼のことを好きだということは、もう伝わっているだろうから。
     だから斑は、相棒を嫌いになるという難しい役目をこはくに押し付けて言葉を選んだ。こはくの悲しみが、なるべく怒りに変わるように。こはくの愛が、なるべく憎しみに裏返るように。こはくがなるべく早く、自分に愛想を尽かして、自分の意志で別れを選んでくれるように。こはくは他人に押し付けられても動かないが、自分の意思で選んだ道ならば進んでくれるから。
     そんな狡い願いを込めて選んだ言葉たちを投げかけた。最初から嫌いなんだからもうこれ以上嫌いになれない、と散々言われた記憶があるが、己の都合で彼を意図的に傷つけた今の斑のことは流石に(※このあたりを書き進めていた際にもうわけが分からなくなってきて書くのをやめました。以下はほぼプロットというかメモ書きです)
     これで良いのだ、と自分を納得させるが、ふとした拍子にこはくのことを考えてしまう。
     手を離した自分の判断が正しかったと確認して、安心したい。期待している自分を殺したい。
     最後に少しだけ賭けてみよう。彼の『ユニット』じゃないが。コール音が鳴る。着信拒否されていないのか。出ないでくれ。6回目のコールが鳴って、あと一回鳴ったら切ろうと思ったとき。
    『……もしもし』
     出た。昔から勝負所には弱い。
    「………元気かあ?」
    『第一声それかい』
     出られたときに何を言うか考えてなかった。我ながら空気が読めていない
    「……会って話がしたいんだ」
    こんな簡単なことを伝えたいだけなのにビビりすぎている
    『別にどうしても『そういうこと』したいとか、せぇへんかったら意味ないっち話やない。けど、こんなくだらん理由で別れるなんて、阿保すぎるやろ』
    こはくがどんな思いで
    ホテルの部屋で待ってると言われ、悩んだけど向かう斑。奮発したのか高級ホテルの上層階。
    インターホンを押して、微かな物音が聞こえるなか少し待つ。心臓の鼓動が煩い。やがて開いたドアの向こうにはバスローブに身を包んだこはくがいた。
    「……やあ」
     その姿にツッコミを入れるべきなのか、まずは謝罪から入るべきなのか。斑は混乱の中でとりあえず挨拶をした。
    「おう」
     仏頂面のこはくは、少し緊張した様子だった。くるりと桜が舞って、その後ろをついて進む。ファミリータイプかセミスイートか、とにかく二人で泊まるにはずいぶん広い部屋だった。
     薄暗く設定された寝室の照明。ベッドの脇にあるディフューザーから漂う甘い香り。そして、似合わないバスローブ姿でこちらを睨みつけるこはく。斑の屈強な腹筋はついに震えないでいることを諦めた。
    「笑うな!」
    「すまんすまん。君って……本当に最高だなあ」
     笑いすぎて目尻に滲んだ涙を拭う。揶揄するつもりでないことは伝わったのか、こはくは気を取り直したように「あとな」と言い、テーブルの上に広げてあったルームサービスメニューを手に取った。何のシミュレーションをしていたのか付箋がいくつか貼ってあり、またおかしさといとしさが込み上げてくる。本当に、変な子だ。惚れた者が負けというならば、最初から負けていたのだろう。
    「シャンパンっちやつも用意したいんよ。こういうんは普通、酒の勢いやろ?」
    「未成年がよしてくれ」
    「せやから斑はんが来るまで頼んでへんかったやん」
     悪びれもせず言うこはくに、あのなあ、と斑は頭を掻く。
    「未成年とホテルの密室で二人きり、飲酒したのは俺だけですなんて誰が信じてくれる?」
    「大丈夫や。名前は天城で予約しとるから」
    「何も大丈夫じゃなさ過ぎて驚きだ」
     勝手に斑とホテルにいることにされた燐音が気の毒だ。この子の神経は太すぎる。
    「四名の天城でこの部屋取ってんねん。受付の時、わしやって気付かれても他のメンバーがチェックインしたんやなってなるから問題ないやろ?」
    「それは随分と羽振りがいいなあ」
    「わしが稼いだ金じゃ、何に使おうと文句ないやろ」
    「ほっほう。これだけ豪遊してなお、Jの遺産には手を付けていないのか。ますますの繁盛だ。『ユニット』のことはもっと大事にするといいぞお」
    「『ユニット』解散させ常習犯がよぉ言うわ」
     呆れたように言って、こはくはベッドに座り込んだ。斑はその場から動かず、口を開いた。このくらいの距離がないと耐えられない。
    「本当のことを言う」
    「うん」
    「……臆病だった」
     こはくの人生を背負う責任から、自分の人生をこはくに預ける罪悪感から、逃げようとしていた。
    「君を傷つけることを恐れながら、君のためにと言い訳して君を傷つける。それを罰されたいと思いながら赦されたいと願う。かっこ悪いよなあ」
    「矛盾しとるね」
    「ああ。けど君だって矛盾しているぞお。セックスをしたいわけじゃないと言いながら、こんな完璧にセックスしたい人みたいな準備をしている」
    「あんま言うなや。こっちは逆に、ぬしはんのこと縛り付けたくてたまらへんねん。もうヤケクソや」
    「『首輪はつけん』って前に言っていなかったかあ?」
    「首輪をつけんでも、わしのとこに帰ってくるように躾けたいっちこと」
    「……」
    そんなの、もうとっくの昔に、こはく以外の場所へは帰れない。
    腕を引かれる。そのまま倒れ込む。
    「あ、先に風呂か?」
    「……もう入ってきた」
     囁くように言えば、こはくがぐっと苦虫を噛んだような顔をする。薄暗いのに耳まで赤くなっているのがわかって、おもしろかった。
    「何やねん、ほんま」
    「万が一と思ったら、カッコつけたくて」
    「やる気満々やん」
    「君ほどじゃない」
    「おあいこや」
     降り注ぐ口づけの合間、思い出したように「シャンパン頼まんで良ぇの? 奢るで」と言われたけど断った。年下に奢られるほど落ちぶれてはいないし、もう酔いは充分、爪の先まで回っていた。
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