そうして彼はミャウと鳴いた『彼が朝起きたら小虎になっていたので、ここに置いておきます』
よろしくお願いいたします。自宅の扉に貼られた短い書置きには、そう書かれていた。それは女性らしくも達筆な字で、泉鏡花の書いたものであることを私は察した。
そういえば、彼女とはまだ連絡先を交換していなかったか。私はそう思いながら、足元のそれを眺める。それは通販の段ボール箱に入れられており、暖の代わりか新聞紙が1枚上に乗せられていた。ミャウミャウと鳴く謎の段ボールの新聞紙をそうっと捲ってみれば、金色のくりくりとした小さな瞳が此方を見ていた。
私の能力をもってすれば、一秒とかからず解決する問題だ。彼女もそれを解っていたから、私に彼を預けたのだろう。私であれば、彼の虎化は触るだけで、元の人間の姿に戻すことができる。そう、これは実に簡単な問題だ。
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