学校中がいつもより甘い匂いと雰囲気に包まれる。それもその筈今日はバレンタインデー女子は勿論男子もソワソワしている。そんな仲で一人の少年が頭を抱えていた。
「どうしよう…」
「どうしたもこうしたもない。渡したくて用意したのだろう?うじうじしてないでさっさと渡してこい」
頭を抱えていた少年ー敦とその前の席に座っている少年ー芥川はどこか呆れた様に言う。
「うぅ…龍も一緒来てよ」
「貴様は告白する女子か断る」
「えぇ~」
「…まあ、強ち間違いでもないか…(最も渡す方も渡される方も男だが…)」
目の前で悩んでるこの幼馴染みは淡い恋をしている。但し、相手は同じ男だ。しかもこの学校であの人のことを知らない人はいない位の有名人。
「(こやつの性格では気後れするのも仕方ないか…だが知らないのだろうな…あの人も敦を好きだということを…)」
けれど芥川はそれを敦に教えるつもりはない。序でに言うと敦の想い人である太宰にも教える気はない。当然だ芥川にとって敦は大事で大切な幼馴染みであり家族の様なものだ。そんな簡単に他人に渡すつもりはない。それがたとえ芥川が尊敬している太宰でも変わらない。