バーソロミュー・ロバーツは独身である。
今年でめでたく三十九歳の誕生日を迎えて、言い訳無用文句なしのアラフォー男性になったばかりの誇り高き独身貴族である。
そう、自ら独り身を貫いている、というところが重要だ。バーソロミューは決して魅力のない男ではない。むしろ、この世の男性諸氏の平均値を計るとすれば、その遥か上澄みに立って然るべき美丈夫である。
無造作に整えたブルネットの髪と日に焼けた肌は若々しく、すらりとした長身から伸びる長い手足は程よく逞しい。広い肩幅も相成って体育会系のような肉体とは裏腹に、すっきりと均整のとれた顔立ちは理知的な印象を植えつける。マリンブルーの瞳は涼やかな光を帯び、薄い唇は時に大人っぽく時に子供っぽく微笑み、声は耳心地のよい低さで落ち着いた言葉を紡ぐ。常に冷静で、騒がず、場を乱さず、己の容姿や能力を自負はすれどひけらかさない。おおよそ、バーソロミュー・ロバーツとはそういう人物なのである。
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