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    onsen

    @invizm

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    onsen

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    クロラム

    クロくんお誕生日記念の17歳のクロくん片想いクロラムです。

    初出 2021/10/8

    ##怪ラム
    #クロラム
    chloroform

    カウントダウン 17歳って、青春の代名詞のようでいて、案外なんの節目でもない微妙な年齢だ。診療所に入るなりクラッカーをお見舞いされながら、そんな冷めたことを考えた。
    「よぉクロ! 誕生日」
    「…………」
    「おめでとう……」
    「ありがとうございます」
     あまりの僕のリアクションの薄さに、先生の語尾が疑問形になる。
    「今日、6日だよな」
    「はい」
     先生が僕の誕生日を忘れるわけはないし、日付にしたって毎日几帳面にカレンダー貯金しているほどだ。間違いなく、今日は10月6日、僕の17歳の誕生日である。
    「んだよ、嬉しくねぇの?」
    「別に、年齢がひとつ上がっただけですし、法的に許可されるものが増えるわけでもありませんから」
     原付の免許が取れるようになったのは去年だ。自動車の運転免許が取れるのや、アダルト作品が見れるようになるのは18歳。結婚できるようになるのも、選挙権を得るのも、何をするにも親の許可を必要としなくなるのも、つまりは、この国に於いて法的に大人と認められるのは。
    「まぁそうだけどよ、なんかこう17歳って、青春っ!、って感じすんだろ。……………………そんな目で見んなよ」
     永遠の、とか、誰もいない海で走る水辺のまぶしさとかさー、などと軽く節をつけて曰う姿にため息が出る。無駄に上手いから腹が立つ。
    「しっかし、もう4年半か。子どもがでっかくなるのは早いなー」
     僕が知るだけでも何度も折れては繋がった骨を、僅かな脂肪と皮で包んだ腕が伸びてくる。下にではなく、上へ。ぽす、と乗せられたあと、わしゃわしゃと髪を掻き乱してくるそれをべし、と払い除けた。4年半で僕に粗雑に扱われるのにすっかり慣れた先生は、気を悪くするでもなく笑っている。
     早くなんかない。遅すぎてもどかしい。今欲しいものはそれじゃない。
     欲しいものは、先生のすべて。あげたいものは、僕のすべて。なりたいものは、先生の隣で人生を共にする存在。先を生きる人に手を引かれるだけの弟子じゃなくて。
     だけど、それにはまだ、なにもかもが足りない。思いを過不足なく渡すための言葉も、やっと追いついたばかりの身長も。抱きしめるための腕だって、先生をどこにも行かせないにはまだ弱い。だいたい、まだ法的に子どもでしかない僕の想いに応じてしまうような人なら、好きになってない。
     なりたい自分になるために、欲しいものを欲しいと伝えるためには、生きてきた時間が、まだ、足りない。あと、365日。
    「人生子どもでいられる間のほうが短ぇんだから、そんなに急ぐなよ」
     もう見上げなくても視線が合うようになった金色の目が細められた。わかっている。わかっていても、伸ばせない手がもどかしい。
     なのに、こんな風に一歩先で笑いながら甘やかしてくれるのが、どうしようもなく心地よいことが、一番悔しい。
     大人になるまでに、あと365日もかかる。
     子どもでいられる時間は、あと365日しかない。
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    onsen

    DONEクラファ仲良し
    クラファの3人が無人島で遭難する夢を見る話です。
    夢オチです(超重要)。
    元ネタは中の人ラジオの選挙演説です。
    「最終的に食料にされると思った…」「生き延びるのは大切だからな」のやりとりが元ネタのシーンがあります(夢ですが)。なんでも許せる方向けで自己責任でお願いします。

    初出 2022/5/6 支部
    ひとりぼっちの夢の話と、僕らみんなのほんとの話 --これは、夢の話。

    「ねえ、鋭心先輩」
     ぼやけた視界に見えるのは、鋭心先輩の赤い髪。もう、手も足も動かない。ここは南の島のはずなのに、多分きっとひどく寒くて、お腹が空いて、赤黒くなった脚が痛い。声だけはしっかり出た。
    「なんだ、秀」
     ぎゅっと手を握ってくれたけれど、それを握り返すことができない。それができたらきっと、助かる気がするのに。これはもう、助かることのできない世界なんだなとわかった。
     鋭心先輩とふたり、無人島にいた。百々人先輩は東京にいる。ふたりで協力して生き延びようと誓った。
     俺はこの島に超能力を持ってきた。魚を獲り、木を切り倒し、知識を寄せ合って食べられる植物を集め、雨風を凌げる小屋を建てた。よくわからない海洋生物も食べた。頭部の発熱器官は鍋を温めるのに使えた。俺たちなら当然生き延びられると励ましあった。だけど。
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    onsen

    DONE百々秀

    百々秀未満の百々人と天峰の話です。自己解釈全開なのでご注意ください。
    トラブルでロケ先にふたりで泊まることになった百々人と天峰。

    初出2022/2/17 支部
    夜更けの旋律 大した力もないこの腕でさえ、今ならへし折ることができるんじゃないか。だらりと下がった猫のような口元。穏やかな呼吸。手のひらから伝わる、彼の音楽みたいに力強くリズムを刻む、脈。深い眠りの中にいる彼を見ていて、そんな衝動に襲われた。
     湧き上がるそれに、指先が震える。けれど、その震えが首筋に伝わってもなお、瞼一つ動かしもせず、それどころか他人の体温にか、ゆっくりと上がる口角。
     これから革命者になるはずの少年を、もしもこの手にかけたなら、「世界で一番」悪い子ぐらいにならなれるのだろうか。
     欲しいものを何ひとつ掴めたことのないこの指が、彼の喉元へと伸びていく。

     その日は珍しく、天峰とふたりきりの帰途だった。プロデューサーはもふもふえんの地方ライブに付き添い、眉見は地方ロケが終わるとすぐに新幹線に飛び乗り、今頃はどこかの番組のひな壇の上、爪痕を残すチャンスを窺っているはずだ。日頃の素行の賜物、22時におうちに帰れる時間の新幹線までならおふたりで遊んできても良いですよ! と言われた百々人と天峰は、高校生の胃袋でもって名物をいろいろと食べ歩き、いろんなアイドルが頻繁に行く場所だからもう持ってるかもしれないな、と思いながらも、プロデューサーのためにお土産を買った。きっと仕事柄、ボールペンならいくらあっても困らないはずだ。チャームがついているものは、捨てにくそうだし。隣で天峰は家族のためにだろうか、袋ごと温めれば食べられる煮物の類が入った紙袋を持ってほくほくした顔をしていた。
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