砂漠の花 殤不患と睦天命は天幕の入り口に見慣れた顔を認めて、喜びで顔を輝かせた。
「あら、萬将軍」
入り口の萬軍破に気がついて睦天命が、嬉しそうな声をあげた。
「おっ、閣下、お出ましで。
こんな所まで共の者も連れずに、今日はどんな御用で?」
殤不患が入り口で萬軍破を出迎えて、砕けた様子で軽口を叩いた。
「ふふ、軍破でよいと言ったではないか。
不患、今日は将軍ではなく、萬軍破として非公式の訪問だ」
「では遠慮せずに、軍破って呼ばせてもらうぜ」
萬軍破を部屋の中に招いて、殤不患は嬉しそうに向かい合って座り、睦天命も隣に座る。
「で、どうだった?」
こう聞かれて、話題は一つだろう。
以前、三人は西部総督の不正を告発するために一緒に西幽で短い旅をして戦った仲だ。
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