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    遊兎屋

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    遊兎屋

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    【宿伏】現パロ
    勘違いした伏が宿に告白するお話

    #宿伏
    sleepVolt

    ワンライお題【告白/コーヒー】

    社長宿×学生伏







    「ん…」

    目が覚める。
    ぼやける視界の先、恋人の姿は無い。
    またか…
    そう思いながら居たであろう形跡、シーツの乱れた場所へ手を伸ばしさらりと撫でる。
    案の定温もりなんて優しいものはなくて朝の空気に晒されて冷たい布の感触がするだけだった。

    はぁ…
    あいつはこの虚しさを知っているのだろうか。
    夜、勘違いするほど優しく抱き締められ、快感を与えられ、甘やかされる。
    所詮ベッドの中だけの優しさ

    気に入ったと連れてこられて身体を重ねて、気付いた時には絆されていた。
    俺が絆された頃にはあいつの興味も薄れたのか、、、

    歳も違う、立場も役割も
    社長と学生じゃあ比較の対象にもならない。
    それこそ男同士で、一種の性欲処理
    どれだけ乱暴にしても壊れないし、子供だって出来ない。飽きたら捨てれば良い。
    俺が後から何を喚こうが、圧を掛けられて終わり。

    「はあ……」

    重苦しいため息が今度は口から出る。
    今日は大学の授業は午後の一コマのみ。
    全くなんでこんな予定になったのか、それもこれも学友である虎杖の補講を手伝うなんて言ったからだ。
    午後一コマ受けたらその後虎杖と合流して勉強会
    ここの部屋の主に合鍵を渡されてからこの方ずっと居候の様な生活をしているけど、それも今日はやめとこうか。
    久しぶりに契約しているマンションに帰って一人でゆっくりしよう。

    腰に痛みを感じながらゆっくりとベッドから出る。
    高い寝具にこだわった布団
    寝心地のいいそこに後ろ髪を引かれながらリビングに向かう。

    ほんのりと香るコーヒーの匂い

    「やっと起きたか」

    リビングに行けばダイニングに恋人、宿儺が座っていて新聞から視線をこっちに向ける。
    誰のせいだと思ってるんだ…
    昨日散々抱かれてこっちは意識飛ばしてんだぞ
    言いたいことは山程ある、けれどそれを俺から吐露するには自信がない。
    俺だけが恋人だと思い込んで、勝手に舞い上がってるだけかもしれない。
    性欲処理の男に、そんなこと言われても鼻で笑われるのが怖い。

    「…どうかしたのか?」
    「何でもない」

    突っ立つ俺に少し首を傾げる宿儺にそっけなく首を振れば、キッチンにあるコーヒーを自分用に注いで椅子に座る。
    問いただすようにじっと宿儺の紅い瞳が俺の行動を追っているのが視線から分かる。
    暫くして諦めたのか途切れたそれに内心ホッとして、コーヒーを飲む。
    いつもよりなんだか苦く感じるそれを喉に流し込んで、ぽつぽつと短い会話
    今日は会社に行くという宿儺を送り出して、自分も大学に行く準備をする。
    午後からだけれど、ずっとこの家にいるのは気が引ける。




    午後の一コマを終えて虎杖と合流
    近くのカフェで勉強して、遅くなる前にと解散する予定で駅に向かって歩いていた。

    「伏黒〜、小腹空かない?」
    「あー、適当にどっか店入るか?……ぁ」

    時間は夕食どきで周りから美味しそうな匂いが漂ってきている。
    それに堪らず根をあげた虎杖の提案に頷いて、周りの店を見ようと顔を上げた時、見知った顔を見つけて小さく声が漏れる。

    宿儺だ
    なんでここに…
    そう思い目で追ってしまう。
    見ない方が良い
    そう思っても、目を離すことが出来ない。
    宿儺の横に美人な女性が歩いていて、自然な流れで腕を組む。
    ロングヘアーの黒髪はとても綺麗にまっすぐ腰まで落ちていて、スタイルの良さが分かるドレスを身に纏ってる。
    なるほど、そういう事か。
    スッと冷たい空気が心臓に流れ込んでくるような、いきなり醒めてしまう感覚に小さく息を吐く。

    煌びやかなビルに入っていく2人を見ながら声をかけてくる虎杖の声が戻ってくる。

    「ハンバーガーも良いなぁ、伏黒なんの気分?」
    「悪りぃ虎杖、今日は帰る」
    「え、そう?分かった、んじゃまた今度、今日のお礼させて」

    少し残念そうに、でもにかっと笑った虎杖には申し訳ないと思いつつ駅まで行って分かれる。
    1人になった途端、ぐるぐると嫌な思いが渦巻き始めてぎりっと歯を噛み締める。
    宿儺は社長なんだ、きっと会合だとかパーティーだとか、そういうのだって多い。
    今回俺が見たのもそういうものだと、自分を納得させようとする。
    それでも、やっぱり耐えられない。
    いつのまにこんなに宿儺への気持ちが重くなっていたのか。
    今更気付いたところで、俺から告白すらしてない。
    身勝手だろ…
    今まで散々構ってくる宿儺をそっけなく扱って、それでも宿儺は離れていかないと思っていた。
    馬鹿だろ…おれ

    気付いたら宿儺のマンションの前にいた。
    今日はここには来ないつもりだったのに
    オートロックを解除して中に入る
    数字の大きなボタンを押して、カード型の鍵を折れない程度に握りしめる。
    ワンフロア買い取ったと言っていた宿儺の部屋の扉の前に立ち、ゆっくりとカードを差し込む。
    ピピっ…
    と開錠音がしてドアを引けば暗い玄関が俺を出迎える。
    慣れた暗闇
    玄関の電気が勝手に付いて照らし出された場所に宿儺の靴はない。
    それはそうだ、今頃楽しんでる。
    そう自虐的に笑ってみても、自分の心臓がずきりと痛む。
    掃除の行き届いた綺麗な部屋に足をすすめて、ソファーに座る。
    しんっと音のない空間に余計に寂しさを自覚させられるだけだ…。

    お腹も空かず、コーヒーを一杯だけ飲んだ。
    ちびちびと、もしかしたら飲んでいる間に帰ってくるかもしれないと期待をしながら。







    ごとっ
    物音がして目が覚める。
    いつのまにか寝てたのか…
    暗闇に目が慣れるまでパシパシと瞬きをして、ずきりと痛む頭に顔を歪める。
    動きたくない…
    結局コーヒーを飲む間に宿儺は帰ってこなかった。
    不貞腐れてベッドに潜り込み少しでも存在を感じたくて布団に包まったまでは覚えている。
    とすとすと小さな足音が聞こえて、寝室の扉が開く。
    明るい廊下から寝室へ光が入り込んできて、眩しさに目を細める。

    「…来ていたのか」

    スッと近づいて来た宿儺が自然とベッドへ乗り上げて来て俺に手を伸ばしてくる。
    まだ求めてくれるのか、そう思ったのも束の間、ふわりと香って来た匂いに宿儺の手を叩く。
    宿儺の匂いとは明らかに違う女性ものの香水の匂い

    「来んなっ、くさい…」

    酷いな…
    勝手に部屋に入って、勝手にベッドを使って、それで持って酷く冷たく当たるなんて
    それでもなんだか傷付いたこころは宿儺を拒絶する。
    あれだけ、求めていたのに。
    また素直になれない。

    スッと引いていった手に、追い縋りたくて布団を握り締める。
    何も言わない宿儺にビクつきながら少しの静けさの後、宿儺が寝室から出て行く。

    「…ッ、おれのばかやろう」

    ぽつりと呟いた言葉に目頭が熱くなって身体を丸めて自責の念に耐える。

    ぎしっと床のなる音がして、身体が跳ねる。
    布団から顔を出して音のした方を見れば、白シャツにスラックス、髪の毛がしっとりと垂れている宿儺と目が合う。

    「伏黒恵…触れても良いか?」
    「っ」

    風呂に入ったのか、いつもの匂いがふわりと流れてきてゆっくりと近寄る宿儺に身体が固まる。

    「泣いたのか?」
    「…泣いてない」
    「そうか」

    するりと宿儺の大きな手が頬を撫でて来て指が目元をするすると何度か往復する。

    「今日は此処へは来ないと思っていたが…」
    「っ、なんで」
    「鍵を持って帰っただろう、昼に戻って来た時お前の家の鍵が無くなっていたのを見た。」

    落ち着いた声
    宿儺がベッドの際に座りベッドが音を立てる。

    「お前の好きにさせていたんだが…何が不満だ?」
    「…不満、じゃない」
    「ん?」

    頭を撫でられ、未だに戸惑う心を知られてかどうか、先を促すように目を細められる。
    チラリと見た宿儺の手が赤くなっているのが見えて申し訳なくなる。

    「あんたが、俺に飽きたんだと思った…。初めはあんたが勝手に連れてきて、勝手に飯作ってくれて、それで、あんたの気紛れだろうと思ってた。」

    声が震える。
    けど、自分の気持ちを知って欲しくて、どうせ捨てられるのなら此処で思いっきり吐き出していこう。
    そっちの方がスッキリできる。

    「すき、だ…宿儺」
    「あんたは俺のこと性欲処理のためだとか暇潰しの玩具だとか思ってたのかも知れねぇけど」

    言ってしまった
    好きだと伝えてしまった。
    今更すぎる告白にどきどきと心臓が跳ねる。
    チラリと宿儺の様子を伺うように視線を向ければ、少し驚いた様な顔を浮かべていて驚く。
    そんな顔もできるのか。

    「ケヒッ、お前は、随分と愚かだなあ伏黒恵」
    「…は」

    ガバッと布団を剥ぎ取られて腕を引かれたかと思えば抱き締められる。
    宿儺の腕の中、風呂上がりの暖かい体温がじんわりと移ってくる。

    「お前に飽きるなど無い…、たとえお前が離れたとしても、だ。不安にさせたか?」
    「だって、お前、今日女の人と」
    「あれは単なる会合だ、今度取引するところの社長でな…」

    ぽんぽんと背中を叩かれて身体がゆらゆらと揺れる。
    俺を抱きしめながら宿儺がゆっくり揺れているのか、ベッドがぎしぎしと音を立てる。

    「愛いなぁ…嫉妬したのか」
    「…ッ、悪いかよ」
    「良い良い、やっと堕ちてきたな伏黒恵」

    嫉妬…
    身体の中が一気に熱くなる。
    羞恥心でしぬ
    真っ赤に染まった顔を見せたく無くて伏せていれば、少し乱暴な手つきで顎を掴まれ、顔を上げられる。

    「お前は俺のものだ、その逆もまた然り。俺はお前のものにならなってやっても良い。」

    ふにっと唇を撫でられ、熱の篭った目で見つめられる。
    言い聞かせる様にしっかりと言葉にされた内容に鼻がつんっと痛くなる。

    「恵、愛してる」
    「っ、お、れも」

    全身を勢い良く満たされていく感じに身体が熱くなる。
    するりと顔を寄せた宿儺の唇に自分の唇を寄せれば、小さく笑われて優しいキスが落とされる。

    「んっ…、は、んンッ…、ん」 

    口腔内に入ってる舌の感触に腰が跳ね、息が上がる。
    気付けば背中をベッドに預けて横になっていて、宿儺の手が身体を撫で服の中に入ってくる。

    「んぁ、ぁ…、はッ、あ」
    「お前が嫌だと言うから、手加減していたんだがもう我慢しなくて良いんだな?」
    「ッ、いい、お前の、好きにしろっ」

    欲情した宿儺の顔を初めてマジマジと見た気がする。
    余裕のないそれに、なんだか嬉しくなって手を伸ばす。







    ぱちりと目が覚める。
    目が覚めた先には宿儺の胸元があって腰を抱き寄せられる。

    「起きたのか?もう少し寝ておけ…」
    「昨日は熱烈な告白が聞けたからなぁ、少し無理をさせた。」

    柔らかい優しい声にボッと顔が赤くなるのが分かる。
    思い出した。
    今までの比にならないくらいの快感に、宿儺に縋り付いて喘ぎ、派手に痴態を晒した。
    羞恥心に震える俺を抱きしめながら宿儺が何処かへ電話し始める。

    「ああ、裏梅か、あのマンションは契約を切って良い。荷物は俺の所へ…ああ、それでいい。頼んだぞ」
    「……マンション解約するのか?」
    「…お前のな」
    「はぁ!?聞いてない!」
    「言ってないからな。俺の好きにしていいんだろう?お前の帰る場所は俺のところだ。マンションなんて要らんだろう。」

    ぎゅっと抱き締める力が強まり、頭に顔を擦り付ける宿儺の言葉に開いた口が塞がらない。

    「もう、逃げられんからな」

    目を細め、獲物を狙い済ませたような獰猛な光を含んだ宿儺の瞳が俺を見下ろしてくる。
    わざわざ逃げ道を残してやっていたのになぁと小さく声が聞こえる。
    もう逃げたりなんてしない。
    好きだと認めたんだ
    愛してくれていると分かった。

    「っ、、上等」

    受けてたってやる。
    俺だってあんたを逃がさない。
    覚悟しろ…







    END
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