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    遊兎屋

    @AsobiusagiS

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    遊兎屋

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    【御形+宿×伏】

    #宿伏
    sleepVolt

    宿伏版ワンライ
    (領域 / 神i隠し / あいしょう(同音異義語))
    御形+宿×伏黒
    任務で御形に会う伏のお話
    呪専宿
    未来捏造






    記録 ー 20〇〇年 1月
         岐阜県高山市 山中
    同場所にて低級呪霊の増加及び特級呪物の呪力増大を観測。
    上記案件への早期対応を行うため一級呪術師一名が派遣され対応にあたっがその後行方不明。





    任務の内容は祠に祀られている呪物の回収だった。
    邪気を溜め込み過ぎたのか周辺に低級の呪霊が蔓延り、放置を看過出来なくなった上からの命令だ。
    車で送ってくれた補助監督に礼を言って、鬱蒼と生い茂った森の中に足を踏みいれる。

    確かに多くの呪霊が蔓延ってはいたけれど、俺に襲い掛かってくる素振りも見せず木や茂みから視線を感じるだけ…
    じとりとした呪いの視線に気味の悪いものを感じながら足を進めていけば少し開けた場所に大木が立っており、幹に穴の空いた部分に小さな祠が立っている。
    祠が立った後、それを添え木にしてこの大木が育ったのかもしれない…

    ともかく、邪魔も入らないのであればとっとと回収して帰るに限る。
    そう思って大木の根元に近付けば呪いの色が濃くなり息苦しさを感じる。
    藻や蔦に彩られた古びた木の扉に手を掛けて少し強めに観音扉を開け放つ。

    「…っ!」

    瞬間に感じた襲いくる恐怖と畏敬の念
    どこか感じた事のある呪物の気配に全身に鳥肌が立って中に収められている呪物を視界に入れる。
    そこには握り拳大の呪物が呪符が巻かれた状態で鎮座していた。

    ー何らかの原因で意識を飛ばしたのか、俺の記憶はここで途切れている。


    ずきりと頭痛がして目が覚める。
    さっきまで低級呪霊の蔓延る山奥にいて、木々に邪魔されて薄暗く、空気も冷ややかな場所にいた筈だ。
    それなのに…今、目の前に広がる景色に目を丸める。
    砂利のひかれた庭に倒れている俺の目の前には所謂寝殿造と呼ばれる様になった建物が立っていて、背後からは水音が聞こえる。
    明るくおひさまに照らされて心地良い場所…
    いきなりの眩しさに目がちかちかとして次第に馴染んでくる。

    「…っ、なんだ…ここ」

    なんとか身体を起こそうとしたところで全く力が入らず敷き詰められた砂利が頬を擦る。
    顔はなんとか動かせるため周りを見渡したところで人気は無く途方に暮れる。
    呪力が尽きているのか玉犬を呼ぶことも出来ず、此処が敵の領域なのかどうかさえも判断がつかない。

    「はぁ…」

    なんとか立ちあがろうと力を込めていた身体を脱力させてもう一度砂利に全体重を任せれば重い溜息が出る。
    もういっその事呪力が回復するまで寝るか…
    目が覚めてからドッと疲労感を感じ、次第に重さを増す瞼に投げやりに思えて目を瞑る。

    「なんだ、伏黒恵か」

    ドッと心臓が飛び跳ねる。
    瞬間に冷や汗が溢れていきなり現れた声の主人に身体が臨戦体制を取ろうとしてぎしりと固まる。
    じゃりっと石が擦れる音が聞こえて、頭上から落ちてきた声は何処となく聞き覚えがあって、慌てて顔を上げれば見慣れた紅い瞳と目が合う。

    「…すくな?」
    「ケヒッ、ああ、お前は知っておるのか」

    見知った顔よりも幾分も精悍な顔付き
    それでいて2mはあるんじゃないかと思う身長、4本の腕…4つの目、顔半分を覆う歪な面。
    面に隠されていない顔は知っている男と似ている筈なのに異様なその格好に頭がずきりと痛む。

    「俺の領域に何が紛れ込んだのか見に来てみれば、お前に逢えるとはなぁ」

    宿儺に似た大男はそう言って嬉しそうに四つの目を細める。
    その綺麗な柘榴の様な瞳に相違はなくて、そこだけが見知った、安心する色をしている。

    「…お前の領域?」
    「ああ、アレに触ったのだろう…そのまま引き摺り込まれたみたいだな」

    アレ…とは、呪符で封印されていた拳大の呪物の事だろう。
    状況を判断するのに痛む頭が邪魔をする。
    こいつはなんなんだ…
    俺にとって敵か味方か…
    判断材料が少ない中で、大男は変わらず喋り続ける。

    「俺の領域に引き摺り込まれる際に伏黒恵自身を守るため無意識のうちに呪力を使ったのだろう…此処に来て五体満足はなかなかおらんぞ」

    にんまりと口角を上げて笑う大男は顎を指で擦って何やら考え事をして俺を見下げてくる。
    その目が愉しんでいるのを見て直感が警報を鳴らす。
    何か面倒な事が起きる。
    どうやら敵意は無く、男は俺の名前を知っていてそして俺で遊ぶ気らしい。

    「此処から出るには呪力を回復しなければな」
    「…少し休めば戻る」
    「此処は外界と異なる。存在するだけでお前の呪力を消費するぞ」
    「っ」

    じゃあどうしろって言うんだ。
    知っていてのらりくらりと問答する様な男の口ぶりにイラッとして下から睨み付ければ心底愉快だと言うように男の肩が揺れる。

    「良い良い、全くもって愛らしいなあお前は」

    話せば話すだけ、声も、瞳も、言動も、宿儺と似ている様に感じる。
    それなのにこいつは俺の知ってる宿儺じゃない…

    「お前…一体何なんだ」
    「…お前はもう知っているだろう」

    上機嫌に首を傾げる男が俺の身体を持ち上げる。
    2本の腕が脇の下に入り、脱力した身体が懐いていた砂利から離れる。
    まるで猫を抱き上げた様な扱いを不服には思いながら動かない身体ではどうしようもなくて、大人しく抱かれる事にする。

    「…宿儺なのか?」

    腕の中に収まった俺をもう2本の腕が撫でてきて大きな掌が頭を覆い、何かあれば握り潰される可能性を拭えずにゾッとする。
    伺う様に顔半分を面で覆った男を見上げればまたしてもにんまりと目を細めるだけで歩き始める。

    「あの呪物、宿儺に関係するものなのか」

    俺の知っている宿儺は少し特殊な生まれで兄弟揃って高専に入学、両面宿儺の器、生まれ変わり、そう呼ばれる存在だ。
    入った当初からずば抜けた呪力量と術式、存在の危うさから特級扱いだった。
    卒業した今、何がどうなったか俺の恋人として同棲する関係にまでなっている。
    そんな宿儺の生前の存在が両面宿儺…

    ーそして今目の前に居るのがきっとその両面宿儺なんだろう。
    そうとなれば封印されていた呪物は両面宿儺のものだと分かる。

    とすりと衝撃が走り、俺を抱いたまま両面宿儺が縁側へと腰掛ける。

    「おい、離せ」
    「呪力を回復させる手立てが無いのだろ?俺の好きにさせろ」

    敵意も悪意も感じられない。
    それよりも鼻歌でも歌い出しそうなほどに上機嫌で俺の身体を脚の中に囲いながら4本の腕が好き勝手に動き回る。
    頬を撫でられたかと思えば髪の毛を梳かれ柔らかな陽射しもあってじわじわと眠くなってくる。
    大きな手が存外に優しく触れてくるものだから委ねた身体は完全に脱力してしまって、感じる疲労感の中にじんわりと両面宿儺の体温と呪力を感じる。
    これなら少しは回復出来るだろうなと思えて身を任せようかと思ったところで大きな手が顎にかかりがっちりと固定される。

    「…は?」

    なんだと思って視界を上げた時には既に遅くて視界一杯に真っ赤に染まった紅色が広がる。

    「っ!ぅ、んンッ!」

    分厚い唇が俺の口を覆ってきて驚きできゅっと細めた唇にぬるついた感触が広がる。
    見開いた視界の先には唇を舐める男の顔が間近にあって、こちらの様子を伺っていたのか複眼と目が合う。

    「ん、ぅぅ、っ」
    「はぁ、大人しくしろ」

    足をバタつかせて腕をつっぱり両面宿儺の胸元を叩く。その抵抗に複眼が一瞬細まって、伏せていた瞼が持ち上がる。
    口が離れたかと思えば吐息混じりに耳元で呟かれ副腕に両手を固定される。
    腕が4本あるなんて卑怯すぎる…
    片手で一纏めにされればどうやったって抜け出せなくて顎を抑えている手に力が入って開口させられる。

    「っ、ぐ、ん…っ」
    「いい子だ」

    無理やり開けといて何言ってんだっ
    少しでも抵抗するために愉しそうな男を睨み付けるもお構いなしにまた分厚い唇が口を覆ってきて、今度は口内に舌が差し込まれる。
    入り込んできたそれを噛んでやろうと企んでいれば親指が口角に差し込まれてそれすらも出来ない。
    徹底して俺の抵抗を阻み、口腔内が舐め上げられる。

    「んっぅ、んッ」

    上顎を舐め上げられて歯列をなぞられる。
    ぞわぞわと粟立つ感覚に鼻から息が漏れて縋りどころを探してしまう。
    宿儺じゃないのに、口腔内を舐め上げる動きがどこか似ていて縮こまった舌を絡めとられて与えられる快感に身体が熱を帯び始める。
    キスだけで…なんて、それこそ宿儺と付き合い始めて身体が変えられたせいで関係が始まった当初は悩んでいた。
    慣らされた身体は直ぐに反応する。
    溢れる唾液をこくりと喉に流せばじんわりと胎内に両面宿儺の呪力が流れ込んできてドクリと心臓が跳ねる。
    嫌なはずなのに、呪力が欠乏している俺の身体が流れ込んでくる呪力を貪欲に欲しがる。
    こくこくと溢さないように絡み合わされたり舌から唾液を飲み込む。
    もし呪力に味があるなら、恋人と同じ味のするそれに今キスしているのは誰なのか分からなくなってくる。
    気持ち良くて、心地良くて、染み渡ってくる…
    ろくに頭も回らなくなってきてただ感じいることしか出来なくなってくる。

    「んぁ…はっ、ぁ」

    ぢゅっと唇を吸われて口が離れていく。
    ああ、もう少しだけ…
    なんて物足りなさを感じながら、唾液で濡れた両面宿儺の唇を見送る。

    「随分と良さそうだな?」
    「ん…っ、、あつぃ」
    「俺の呪力はお前にはまだ濃いか」

    はぁっと熱を含んだ息を肺から押し出せばピリピリと疼きをもたらす身体を服の上から撫でられて思わず小さく声が漏れる。

    「もっとやる、口を開け」
    「ぅ…、」

    額に張り付く前髪を後ろへ撫で付けられて、柔らかな唇が額へ落とされ、目元や頬、鼻を音を立てて通っていく。
    ここから出るには呪力を回復する必要があって、キスをすればこいつの呪力が流れ込んでくる…
    手段がこれしかないから仕方ない…
    酸欠と快感にぼんやりとする頭の中で言い訳がましく恋人以外とするキスに理由をつける。

    ごくりと喉を鳴らして薄らと口を開けば両面宿儺の唇に下唇を吸われて、それからまた、熱い舌が押し入ってくる。
    ちゅくちゅくと音が立って羞恥心と罪悪感を煽られる…
    日の当たる縁側で何してんだ俺。
    微かに残った理性が現状を非難するくせ、身体はすっかり呆けてしまってしっかりと筋肉の付いた腕と大きな身体に覆われて完全に力が入らない。

    「んんっ、は…ぁ、んぅ」
    「ふ…、ああ、なんだもう終いか」

    気持ち良くていつの間にか両面宿儺の着物を握り締めていたのか、キスが終われば力が抜けて自身の腹に手が落ちる。
    ぼやけた視界の中、両面宿儺の紅い瞳が俺の倒れていた場所を見やるのが分かって快感を欲しがる身体に鞭打って顔を向ける。

    キンっと音がしたかと思った瞬間、綺麗に整えられた池の水が柱を作って水飛沫を上げる。
    思わず目を細めた先に見慣れた服と色を見付けて、そちらへ乗り出そうとした身体を4本の腕で抱き込まれる。

    「あ」
    「こんな所に居ったのか…探したぞ恵」

    伏せられた瞼から徐々に紅い瞳が覗いて見えて、しっかりと見詰められる。
    その力強さに思わず身体が跳ねて今の状況にあっさりと熱が下がる。

    「宿儺っ、おま、なんでここに?!」
    「外ではお前が神隠しにあっただのと騒いでいてな、迎えにきたまでだ」
    「…どうやって」
    「食った」

    砂利を踏み締めながら距離を詰めてくる恋人の言葉にはっ、息が漏れる。
    食ったって言ったか?呪物を?

    「は?」
    「なんだ、元は俺のものだろう?」
    「けど、おま…食ったって」
    「はぁ…そんな事どうでも良い、それよりも伏黒恵から離れろ、心底不愉快だ」

    当たり前だろうと言わんばかりに片眉を上げて首を傾げる宿儺に言葉が詰まる。
    聞きたい事は山ほどあけれど、宿儺は戦態勢を解かず真っ直ぐに両面宿儺を睨み付ける。

    「ふむ、少し遅かったな?分かるだろう?伏黒恵に俺の呪力が流れているのが」
    「…っ」

    スッと大きな掌が俺の下腹部を覆う様に撫でてきて、ずくりと熱くなるのを感じる。
    両面宿儺は殺気立つ宿儺を見て揶揄う様に笑う。

    「相性は悪く無かった…なぁ伏黒恵」
    「っだまれ」
    「ふ…愛らしいな、まったく」

    まるで宿儺に見せつける様にちゅっと首元へと吸い付いてきた両面宿儺の言葉にさっきまでの行為を思い出して今更ながらに抵抗してみせる。
    一触即発、そんなピリピリとした空気の中で余裕のある笑みを浮かべる両面宿儺が睨み付けてくる宿儺を見やる。

    「小僧、そうカッカするな…種は植えたからな。またいつでも会える。」

    どちらが主としての意識なのか、ましてや個人として存在しているのか、分からないけれど生まれたばかりの宿儺と、領域内で数千年生きている両面宿儺とではやっぱり余裕の差があるのか…
    珍しく歯を噛み締めた宿儺の表情が見えたかと思えば耳元でキンっと音がして同時に爆発音と衝撃、煙が上がって受身を取るために身体を丸くする。
    衝撃は一瞬で気付けば両面宿儺から弾き飛ばされて、宿儺の腕に受け止められる。

    「去ね」

    低く脳内に響く様な声が両面宿儺へと向けられて、壊れた縁側のあたりに煙に覆われた大柄な影が現れる。
    それからゲラゲラと空気を震わせる大声がして、煙がはれる頃には両面宿儺も、寝殿造も無くなっていて記憶がなくなる前の森の中にいた。

    「……」
    「恵」
    「ん」

    夜なのかしんっと静まり返った辺りに呪霊の気配はひとつもなくて祠からも呪力を感じない。
    宿儺の腕に抱かれながら、俺を抱きしめる腕を撫でれば二本しかない事を確認出来て、何故かホッとする。
    聞き慣れた声で名前を呼ばれればその一言で安全だと思える程に気が抜ける。

    「迷惑かけた…」
    「それは良い」

    地面に胡座をかいた宿儺の足の上、申し訳なく溢した言葉に首を振った宿儺に頬を撫でられて見上げればついさっきみた様な光景が視界に広がって目の前が紅に染まる。

    「んっ」

    ちゅっとリップ音を立てて唇が吸い上げられ舐められる。そろりと唇を開けば、褒められるように頭を撫でられて宿儺の舌が差し込まれる。
    両面宿儺の舌とは違って普通の人間と同じ大きさの舌に口いっぱいにはならず細かく、気持ち良いところを擽られる。

    「はっ、ンンッ、ぅ」

    キスをしている最中に俺の身体を撫でたり抱き締めたりするのは似ているんだなと思ってしまえば、やっぱり同じ存在なのだろうかと思えてくる。
    力の入る様になった身体で宿儺の腕に縋り付けば深く絡んだ舌が吸われて口が離れる。

    「ん…はぁ、っ、は」
    「何を考えてる?」
    「いや…」
    「…今日は覚悟しておけ」

    ぎゅっと抱き締める力が強められたかと思えば耳元で呟かれた低い声にびくりと身体が跳ねる。
    キスで惚けていた俺をそのまま横抱きにして立ち上がった宿儺の瞳に熱が篭っているのが見てとれて、さあっと血の気が低く。

    結局どんなに抵抗しようが逃げることも止めさせる事も出来ずその日は見事に抱き潰された。

    そして両面宿儺が俺の影を媒介に現界出来る様になり一悶着起きるのはまたそれから数日後の話。





    end.
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