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    遊兎屋

    @AsobiusagiS

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    遊兎屋

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    宿→伏

    愉悦#宿伏地獄のキャンプファイヤー



    任務が終わり、案内人とはその場で別れた。

    今回担当してくれた案内人には何度か会ったことがあり数週間前にも高専の敷地内で言葉を交わしたばかりだった。
    元は呪術師を目指しており途中で挫折し今は任務の斡旋や直接の案内人をかってでているらしい。
    補助監督員が車で迎えに来るとの事だったため、近くの崩壊していない壁に身体を預け支給されているタブレットに今回の任務内容の報告を打ち込んでいく。

    任務自体はさして難しいものでも無く、あっさりと片付いたけれど、案内人との世間話が長引き気疲れしたのか気怠さを感じる。

    "伏黒恵"
    脳内に響く低い声で名前を呼ばれる。
    言葉が続くものだと思い返事を返さず報告の文章を打っていれば、なんと無しに機嫌を悪くした雰囲気を感じとる。
    拗ねたら面倒だなと思い口を開きかけたところで、足元からこぽこぽと音が聞こえはじめ目を向ければ自分の影がひと回り大きく広がり、まるで沸騰した様に泡を噴き出し始めている。
    ああ、遅かったか…
    そんな事をぼんやりと思っていれば、真っ黒な影が意志を持って動き始め形を取り始める。

    自身の影を押し込めようとしたところで呪力が跳ね返って来て言う事を聞かない。
    影の中の絶対的な王に従う様に大きくなるばかりで、気付いた頃には呪力をごっそりと持っていかれ、呪いの王"両面宿儺"が俺の前に顕現する。

    虎杖を依代としていた時とは違い4本の腕と四つの目を蠢かす巨体な男を見上げ、枯渇寸前の呪力量に内心で舌打ちしながら睨み付ける。

    「っ勝手に出てくるな。」
    「ふん…出てくるつもりは無かったんだがな。」
    そう言って副腕がするりと俺の腰を撫で付け、両手が俺の逃げ道を塞ぐ様に壁へと押しつけられる。
    巨体と壁とで挟まれてしまえば圧迫感に息が詰まり、何故か不機嫌な宿儺の様子にもたらりと嫌な汗が背中を伝う。

    「あれは知り合いか?」
    呪いの王とまで言わしめる男はしばしば何を考えているのか分からない…
    俺に不足があるのは重々承知しているけれど、突然の言葉にくっと眉間に皺がよる。
    「さっき話していただろう」
    「ああ…あの人は仲介人、中で聞いてたんじゃないのか」
    「興味が無かった」
    ならなんで今聞くんだ…
    そんな俺の不満を感じ取ったのか、宿儺の指が俺の頬をするりと撫で目元や唇を好き勝手にいじる。
    すりすりと頬を何度も撫でて満足したかと思えば、顔を覆える程に大きな手が俺の顎を掴み軽く持ち上げられる。
    「…」
    「常日頃からお前の呪力を感じながら、いつ俺のものにしようかと考えていた。時間を掛けるのも一興…そう思って静観していたんだがな。お前は些か疎すぎるきらいがある。」
    深紅に染まった瞳が四つ、じとりとこちらを見下ろしていて不穏な空気にこくりと喉が上下する。
    「っ、結局…何に気が触ったんだ。」
    「そうさなぁ…唯一の存在に無碍にされる己自身、と言ったところか」
    低く落とされる声はすんなりと耳へ届くのに全くもって理解出来ずただ困惑する。
    「なに、純粋なもの程穢したくなるという事だ」
    「は?」
    宿儺自身の中で分かりきった事だと言わんばかりの言葉と同時に自己解決した様なキッパリさに置いてけぼりを喰らってばかりでイライラとし、分かってはいてもこちらを顧みない言葉の応酬に噛みついてやろうかと言葉を探し口を開こうとした瞬間、目の前に深い紅が広がる。

    は、と漏れ出た驚きの声をばっくりと食われて合わせられた唇が分厚い舌で割り開かれる。
    「ッ!?」
    キスされているのだとわかった瞬間、身体が強張りそれから慌てて抵抗する。
    目の前の身体を押し退けようとしたところでびくともせず、力を入れてどうにか逃げようとしている間にも熱い宿儺の舌が口腔内に差し込まれ無遠慮に粘膜を舐め上げられる。
    「んんッ!ぅ、、っ」
    ぢゅっと音を立てて舌を吸い上げられ、痺れるような快感が下腹部に広がる。
    同時に内側へ送り込まれてくる濃厚な呪力に目の前がばちばちと爆ぜて心臓がいっそう強く跳ね上がる。

    「っ〜!っ、は!あ、、はっ、おまえ!」
    拘束が緩み口が離れたかと思えば、滲む視界に自分の腕が映りこみ両手首に2本の呪印が走っているのが見え目を見開く。
    なんだこれっ
    自分の身体の中に確かに渦巻く宿儺の呪力と、目に見える呪印に頭の中が混乱する。
    「俺は俺の悦を求める、何を今更驚く事がある?」
    くつくつと笑って見せる宿儺の表情が歪み始めぐるりと視界が回る。
    「まだ馴染むには早いか。良い良い、ゆっくりと胎(はら)をつくれ。」
    ふらりと倒れる身体がしっかりと支えられて脚を掬い上げられる。
    横抱きにされた身体は抗う力も失せだらりと脱力する。
    呪いの王という男の腕の中、真っ先に命の危険を感じるはずの場所が心地良く安心するようになったのはいつからか。
    押し寄せてくる呪力に耐えきれず眉を寄せ苦痛に浅い呼吸を吐き出していく。
    じわりじわりと浮かび上がる汗と合わせて感じる動悸に、無自覚にも縋る場所を探して両手が彷徨う。

    ちゃぷちゃぷと影が揺らめく音がする。
    ずずっと影の中へ引き摺り込まれる慣れた感覚に呼吸が楽になる。
    正体を失ってしまう浮遊感も慣れてしまえば母胎の心地良さに感じてくる…。

    「ケヒッ、暫く寝ておけ影(そこ)は良く馴染むだろう。お前の代わりは俺が果たそう。」




    END

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    Replies from the creator

    recommended works

    zen_mitsuno

    DONE※オタクな宿伏が出てくるので注意※
    神文字書きサークル主宿儺さん×隠れ腐男子恵。
    以前ワンライで書いたお題「報酬」の続きですが、あらすじ的なものを盛り込んだので読まなくても大丈夫です。
    フォロワーさんのお誕生日祝いです!おめでとうございます!!
    とあるROM専の初体験と神の新刊 ツイッターランドの住民はやらかしたオタクの体験談とか好きだよな?慰めると思って少しだけ話を聞いてほしい。
     俺こと伏黒恵は、ひっそりと小説を楽しみたまにイベントに赴く隠れ腐男子だ。ある日、大学の友人である釘崎と虎杖に頼まれて、都内で行われる大型イベントで自カプの受けのコスプレをすることになってしまう。事前に学食のデザートを奢られて断りきれなかった自分を悔やんだが、イベント当日はやってくる。虎杖の意外な特技で化け、何とか併せというミッションを終えられたところまでは良かっただろう。その後従兄弟に昼食を届けるという虎杖に連れられ辿り着いた別ホール、大好きな小説サークルのスペース前で人にぶつかってしまった。自カプの攻めコスをしたその人は、なんとサークル主の両面先生…!動転しながらも挨拶、手紙を渡す、御本を受け取る、という一般参加者のテンプレをこなした俺はよくやった。初めて直接先生から手渡しされた御本を胸に舞い上がっている俺の耳元で、先生はこうおっしゃった――新刊の感想はアフターで聞く、と。
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