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    遊兎屋

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    遊兎屋

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    宿伏Webオンリー【宿命もねじ伏せて魅せろ2】
    展示の小説になります!

    「はぴば伏黒」2022.12.22 伏黒誕



    「うわ…」

    任務が終わり、連絡しようと開いた携帯の通知に思わず声が漏れる。
    虎杖と釘崎からのメッセージが何件も来ていて、俺抜きでグループチャットを動かしたのが内容で見て取れる。
    スイスイと画面をスクロールさせて既読を量産すれば、後半には俺を待ちくたびれた様な文句がつらつらと短く書かれていて思わず口元が緩む。
    1番最新のメッセージまで行けば虎杖から、
    "まだ?"というセリフの入った首を傾げた黒い犬のスタンプが送られていて、それに短く"終わった。"とだけ打ち込む。

    待ってましたと言わんばかりに虎杖から今度も同じ犬のスタンプでお疲れ様!!と尻尾を振るイラストが送られてくる。
    それに次いで、釘崎からはちゃんと連れて帰ってきなさいよ。とメッセージが来て首を傾げたところで顔を上げたそこに立っている宿儺に合点がいく。

    「なんだ、追い払われたのか?」
    「俺は邪魔らしい。」

    寒さでか少し鼻を赤くした宿儺の言葉に苦笑して、ゆっくりと隣へ立つ。
    虎杖や釘崎のやることへいちいち小言のように口出しをしていれば追い出されるのは目に見えている。

    「ただ待つのもつまらん。そうしたらお前を迎えにいけとな。これを巻け、身体が冷える」
    「…宿儺のだろ」

    ふん、といかにも不服ですと態度にだす宿儺に容易にその場面を思い起こすことができる。
    長居するのも風邪をひくだけだと脚をすすめようとしたところで、手首を掴まれマフラーを渡される。
    赤と黒のシンプルなそれは手触りが良くてきっと暖かい。
    半ば強引に渡されたマフラーを受け取ってしまえば宿儺はポケットへ手を突っ込んでしまった。
    どうしたもんかと思っていれば、数歩先に進んでいた宿儺が振り返り、すっと目を細める。

    「恵に渡すために持ってきた。」

    言われた言葉と手にあるマフラーとを結び付けたところで一気に顔が熱くなる。
    それを隠すように慌ててマフラーを巻けば、満足そうに笑った宿儺にしてやられたような悔しさを感じて、小さく舌を打つ。
    喉の奥で上がりそうな声を押し殺して、舌打ちだけで発散できなかった分を足に回し、硬い宿儺の太ももを蹴る。
    ドッと上がった音に対して宿儺の身体はブレず、何が面白いのか愉しそうに笑う。

    「ッー、くそ」
    「ケヒ、まだまだだな、恵」

    恥ずかしい言葉をサラリと惜し気もなく言葉にする男に勝てる気もせず、手や足が出る。
    そんな俺を楽しむ男は二度目の蹴りをひらりと避けて見せて、一瞬で腰を引き寄せられる。

    「っ、おい!」
    「俺のマフラーは使われているからな。」

    誰がいるかも分からない場所で、急激に近くなった距離に慌てて声を上げれば飄々とした男がのたまう。
    確かに寒そうな格好をしている宿儺に、なぜか罪悪感を感じてしまえばもう俺の負けだ。

    「早く帰るぞ、小僧たちが喚く。」

    結局、高専の敷地に入るまでピッタリとくっついた宿儺が離れることは無かったし、宿儺に振り回されて帰った先、部屋で虎杖と釘崎に待ち伏せされていいた俺は扉を開けた瞬間にパイ投げの的になった。




    「伏黒!早くこっち来なさいよ」
    「ちゃんと温まった?」
    「恵、隣に座れ」

    思いっきりパイをぶつけられた後、任務明けで汚れていたこともありそのまま風呂に押し込まれ、
    着替えて三人の元へと戻った頃には湯気のたつ美味しそうな料理の数々がテーブルに所狭しと置かれ、囲むように座った三人に迎えられる。

    「すごいな。これ全部作ったのか?」
    「そうよ!心して味わいなさい!」
    「ほとんど宿儺だけどな」

    宿儺が叩く席へと座れば、釘崎が胸を張り大袈裟に威張る。
    それに苦笑しながらも虎杖が料理を指差し誰がどれを作ったのか教えてくれる。
    どれも美味しそうな料理に目移りしながら宿儺を見れば、俺の反応を見ていたのかバチリと視線が合う。

    「ありがとうな宿儺」
    「大したことない」

    俺たちよりも階級が高く、任務の難易度も頻度も飛び抜けているはずなのに時間を作って祝ってくれる。
    きっと任務調整をする人たちには迷惑が掛かっているんだと知っていても、友人たちに祝われる誕生日は嬉しい。
    そう思うようになったのも、一年次から一緒にやってきたこの三人だからだろう。

    「あ、後でゴジョセンも来るって」
    「もうパイは無いよな?」

    あの人なら絶対やりたがるに決まってる。
    ダッツ買ってこーい!と騒ぐ釘崎の声を聞きながら虎杖へと目を向ければなんとも微妙な反応をする。

    「おい…」
    「あははは…」
    「そうか、そんなに投げつけられたいか小僧」

    ガタガタと全員が席を立ちピリッとした空気に、なぜだか笑いが込み上げてきて思わず笑い声が漏れる。
    そんな俺をみんなが驚いたように見てきて、その表情にすら煽られて次第に我慢できなくなってくる。

    「珍しいわね、伏黒が笑ってるわ…」
    「俺も楽しくなってきた!伏黒おめでとう!」

    こうしてみんなで楽しく祝う誕生日がいつまで続くのか、出来る事ならずっと続けていきたい。
    そのために、強くなる。
    そんな思いを感じながら、ひとしきり楽しみ、途中で乱入してきた五条先生へどうやってパイを投げつけるかの議論が始まる。





    end.

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    kyosukekisaragi

    DONEワンライお題:「離さない」

    虎杖への想いを自覚しつつ、友達という立場で学校生活を過ごすことに甘んじていた伏黒。しかし、ふとしたことから虎杖がモテることに気付き、虎杖に恋人ができた時のことを想像して恐ろしくなってしまう。
    伏黒は五条に頼み込んで、卒業後、虎杖に黙って海外任務に逃亡をはかったが――。
    後輩の結婚式で、伏黒くんが嫌々虎杖くんと再会しちゃうお話。
    Silent escape. 披露宴開始の五分前というギリギリに滑り込んだ先に待っていたのは、伏黒が恐れていた通りの席順だった。
    「伏黒、久しぶり!」
     パーティー仕様なのか、前髪を少し上げた虎杖は、中に仕込んだ橙色のシャツも似合い、腹が立つ程に決まっている。三年前に会った時より、更に男振りが増したように見えた。
    「元気してた?」
     反面、顔を合わさなかった期間なんてなかったかの如く、虎杖の人懐こさは変わらない。太陽のような笑顔相手に、話しかけんな、とも、今最悪の気分だ、とも言えず、伏黒はぼそりと返した。
    「――それなりに」
     たった三人しかいない同級生なのだから、虎杖の隣に自分が配置されるのは予想はついていたものの。苦々しい気持ちで席に着く。これが嫌だったから、伏黒は披露宴の受付もギリギリに済ますように調整していた。宴が始まってしまえば、虎杖とそこまで話す必要がないと踏んだからである。伏黒は今日の一個下の後輩同士の結婚式について、何処までも打算的だった。
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