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    rosso_addict

    @rosso_addict
    犬辻のDom/Subユニバース長編書いた人。
    荒奈良も書きます。

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    エワ開催おめでとうございます!新刊が間に合わなかったので、冒頭展示します。この話だけでも読めると思いますので、気楽に楽しんでもらえると嬉しいです。

    雨の日の出会い※このお話には擬獣化成分が含まれます
    ※ボーダーのない世界線です
    ※年齢操作有
    ※カプ要素は犬辻のみです
    ※飼育方法は可能な限り調べていますが犬や猫を飼育したことのない人が書いています

    〇登場人物紹介〇

    犬飼澄晴……社会人。黒猫のしーちゃんを飼っている。現在は辻と同居中。

    しーちゃん……犬飼澄晴の飼い猫。真っ黒な毛並みとスレンダーな体型が魅力。甘えたがりで来客は苦手。

    辻󠄀新之助……社会人。犬のスミさんを飼っている。現在犬飼と同居中。

    スミさん……辻󠄀新之助の飼い犬。金色の毛並みで愛想がよく賢い。犬飼先輩とも表面上仲は良いが真意は謎。

    二宮匡貴……社会人。犬辻の先輩。犬猫の飼育経験が無いのに子猫を拾ってしまう。

    【雨の日の出会い】



    黒い猫飼ってる先輩と
    大きな犬飼ってる後輩と
    子猫を拾った二宮さん




























       黒い猫飼ってる先輩と大きな犬を飼ってる後輩と子猫を拾った二宮さん

    ◯はじまり

    最近の天気予報はあてにならない。降水確率が低くとも局地的に叩きつけるような雨が降ってくる。
     手持ちの折りたたみ傘ではとても防ぎようもなく、肩や裾周りはあっという間に濡れてしまった。
     二宮は自宅マンションのエントランスに入ると、やっとひと心地ついて傘を降った。
     と、傘の動きに反応してビクッと体を震わせる小さな生き物の気配を感じた。
     振り向くとそれは自分と同じくずぶ濡れになった子猫だった。ひどく汚れていて、毛並みは灰色なのか黒なのか茶なのかもはっきりしない。
    「ニャー 」
     二宮の視線に気づいた子猫は甲高い声ではっきりと鳴いた。
    「ニャー ニャー 」
     強く何かを訴える声に二宮は眉間にしわを寄せたが、子猫は怯むことなく鳴き続ける。
     試しにエレベーターの方へ歩くと付いてきた。
    「ニャー ニャー 」
     エレベーターを待つ間も盛んに二宮の周りを歩き回って鳴き続ける。
     エレベーターに乗る際、一応ドアに挟まれたりすき間に落ちないよう見守りはしたが、子猫はそんな危険に気づくこともなく、ただ一心不乱に二宮へ鳴き続けた。
     エレベーターを降り、ついに自宅のドアの前まで来るとさすがの二宮も猫を中へ入れていいものかためらわれた。
    「……おい、ここは俺の家だぞ。お前の家じゃない」
    「ニャー ニャー 」
     子猫は変わることなく二宮をまっすぐ見つめて鳴いている。黄色いが中心が緑がかった瞳は、猫としてはさほど珍しい色合いではないのだろうが、二宮にはそんなことより必死に訴えかけるその様がうるさかった。
    「……チッ」
     舌打ちすると玄関ドアに電子キーをかざし、解錠するとドアを開ける。二宮が入るともちろん子猫も後を追った。
    「おい、そのままあがるんじゃねえ」
     濡れた体で室内に上がろうとする子猫に二宮はつい小言を口にしたが、猫が聞き分けるはずもなく、二宮は仕方なく子猫を抱き上げた。
    「ニャー ニャー 」
    「おい、暴れるな」
     暴れる子猫に手こずり、とにかくどこかへ入れておかなければ、と畳んであった通販の段ボールを組み立てると中にバスタオルを敷いて子猫をそこへ容れた。別のタオルで子猫を拭いたがどのタイミングでも暴れるので二宮の手は傷だらけだ。
     段ボールの中でも落ち着かず、爪をバスタオルに引っかけてはパニックになっているのでいい加減二宮もうんざりしてきた。
    (そう言えば、犬飼が猫を飼ってるとか言ってたな……)
    「しーちゃんって言うんです。可愛いでしょ」
    と焼き肉の席で黒猫の写真を見せられた記憶がある。
     もう深夜の時間帯だが、他に頼るあても無い。とにかく電話をかけてみることにした。

     ◯ ◯ ◯

     犬飼はリビングのソファーでくつろいでいたところ、急にスマホが鳴ったので、
    「ん? 」
    と思いつつ、手に取った。
    「二宮さん? こんな時間になんだろ? はい、犬飼です。……え? 猫? 飼ってますけど」
     膝にいたしーちゃんは、犬飼を見上げて首をかしげる。
    「え? 猫を拾った 猫ってどれくらいの……いや、わかんないですよね。とりあえずおれ行くんで、体だけ冷やさないようにしてください」
     慌てて立ち上がろうとするので、しーちゃんが犬飼の膝から飛び降りる。
    「カイロは火傷するかもなんで、ゆたんぽ! ペットボトルに四十度くらいのお湯入れてタオル巻いてください! 」
     寝室へ歩いて行って、ベッドで本を読んでいた辻に声をかける。
    「あ、辻󠄀ちゃん! おれちょっと二宮さんの家行ってくる! 二宮さん猫拾ったんだって」
    「え? 猫ですか? 」
     犬飼は寝室のクローゼットからパーカーを取り出し、スウェットの上に羽織った。
    「うん、まだ子猫みたい。子猫用ミルクとか……この時間じゃどこも売ってないよなあ」
     しーちゃん用のシリンジで未開封のものを探すと、カバンに放り込む。しーちゃんのキャリアも数日貸すことになるだろう。
     未使用の猫グッズで使えそうな物はないかと家中を探し回る犬飼を横目にしばらく考えていた辻がつぶやいた。
    「……二十四時間営業のスーパーとかどうですか? ペットコーナーに確かあったはずです」
    「それだ! 辻ちゃんナイス 」
     車借りるね! と言うと玄関にあった車のリモコンキーを掴んで出て行ってしまった。
     ふう、とため息をついて辻はリビングをのぞく。
     急に置いていかれてしまったしーちゃんが不安そうにリビングをウロウロしている。
     スミさんはもうゲージの中のペットベッドで熟睡中だ。
     辻はしーちゃんを抱き上げて、ソファーに座って背中を撫でてやることにした。
     先に寝てしまっても構わないだろうが、犬飼と二宮の様子も気になるし、せめてしーちゃんが落ち着くまでは待っていてもいいだろう。

     ◯ ◯ ◯

     犬飼が二宮宅に着いた時には、子猫はペットボトルのゆたんぽにくっついて熟睡していた。
    「歩いて二宮さんについてきたってことは、もう目や耳は開いてそうですね。夜間対応の動物病院調べて来たんで、寝てるうちに連れて行きましょうか」
    「ああ、世話をかける」
     犬飼は自分が運転して連れて行くつもりだったが、二宮が車を出すと言ってくれたので自分は後部座席で子猫を入れたキャリアの隣に座ることにした。
     子猫は途中で目を覚ましてしまい、車の中でニャーニャーとあの甲高い声で絶叫した。
    「ごめん、怖いよねえ。これから、病院できみのこと調べてもらうから、それまでがんばろうね」
     気休めの語りかけも子猫の耳に届いている気配などないが、狭い車内に響く悲鳴を無視するわけにもいかず、犬飼は苦笑しながら声をかけ続けた。
     夜間診療の待合室は人も動物もまばらで、緊張感が漂っている気がした。ヒリついた空気に子猫だけでなく、他の犬や小動物たちも落着きがなかった。
    「二宮さーん、お入りください」
     診察の間、子猫はパニックになり暴れたが獣医師やスタッフ達はみんな、
    「暴れる元気があれば大丈夫」
    とにこやかだった。
    「今、三ヶ月くらいかな。ミルクあるんなら、今夜はミルク飲ませて明日元気な時にウェットフードあげてみてください」
     ノミ・ダニの検査に始まり血液検査まで終える頃には子猫も二宮もぐったりと疲れきってしまった。
    「一応、マイクロチップ入ってないかも見ておきますね」
     ピッピッと鳴った高い電子音を聞くと猫は歯を剥いて威嚇した。

    ◯ ◯ ◯


    「ただいまー……」
     犬飼は玄関のドアそうっと開けた。動物病院から戻った後も二宮の家で子猫にミルクを飲ませたり、簡易ネコトイレを作ったりしていたらあっという間に日付が変わってしまった。ルームシューズに履き替えているとしーちゃんがリビングから来て足元にすり寄り、出迎えてくれた。
     しーちゃんを撫でて顔を上げるとリビングのドアが開いて、辻がゆっくりと歩いてきた。
    「おかえりなさい」
     待っていてくれたことについ頬が緩む。
    「先に寝ててよかったのに」
    「もう少ししたら、そうしようと思ってました」
     洗面所で手洗いうがいを済ませて、リビングに入ると、ダイニングテーブルには辻が飲んでいたであろうマグカップが置いてあった。
     中身はホットミルクではなく、カフェオレだ。寝不足にはなってほしくないけど、自分が帰るまで起きていてくれたことに愛しさがこみ上げる。
    「犬飼先輩も何か飲みますか? 」
    「うん。ルイボスティーまだあったっけ? 」
     電気ケトルにお湯が残っているのを確かめていると、辻がティーバッグを出してきてくれた。
    「はちみつ入りのやつならあります」
    「ありがと。そうそう、二宮さんの拾った猫、生後三ヶ月くらいだって。離乳はしてそう」
     犬飼はルイボスティーにミルクも足そうと冷蔵庫をあける。
    「そうでしたか。二宮さんはその猫、飼うんでしょうか? 」
     二人でソファーに座るとしーちゃんが犬飼の膝に乗ってきた。犬飼はルイボスティーを飲みながら動物病院へ行ってきたことや二宮の家に最低限のセッティングをしてきたことを話した。
    「二宮さん自身はあのまま飼ってもよさそうだけど、その子、マイクロチップが入ってたんだよね」
    「……ということは飼い猫ですか」
    「たぶん。だから、飼い主が見つかったらそこに帰るんじゃないかなあ」
     犬飼があご下をくすぐってやるとしーちゃんも気持ち良さそうにゴロゴロとのどを鳴らす。二人は子猫を必死で探しているであろう飼い主に思いを馳せた。
    「……しーちゃん、お外行っちゃだめだよ。しーちゃんのお家はここだか、ね」
     言い聞かせるしかできないが、しーちゃんはのどを鳴らしてくつろぐだけだ。
    「そろそろ寝ましょうか」
     辻󠄀は飲みかけのマグカップを持って立ち上がった。犬飼もしーちゃんを抱き上げてそれに従う。
    「うん、遅くまで付き合わせちゃってごめん」
    「気にしないでください」
     なんだか無性に顔が見たくなった辻󠄀は、キッチンにマグカップを置くとスミさんのベッドがあるペットケージを開けて、しばらく寝顔を見ていた。
    「今日は一緒に寝る? 」
     寝室は別にしてあるが、こうしたお誘いがある時は同じベッドで眠る。しーちゃんを真ん中にハグすると、辻󠄀は名残惜しそうに離れた。
    「そうしたいですが、スミさんの散歩までに起きないといけないので」
     もう朝が近づいていた。


    続きは新刊でお楽しみください。
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