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    046hanken

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    046hanken

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    ふぃかちゃんへの誕生日プレゼントです。
    仔猫ビがヒーロー軸の東セクターの元に現れるパラレル話。

    子猫は夢を渡る目が覚めると目の前にはオイラによく似た人間の男の子。

    「みゃうん?」

    こしこしと何度も目を擦ってみるけれどやっぱりこれは夢なんかじゃないみたい。おかしいな、俺っちは今までグレイの部屋のお手製のベッドで丸くなって眠っていただけなのに。

    「ワオ!オイラによく似た可愛いKittyだネ。何処から来たのカナ?」

    「みゃー、みゃ!」

    ふわりと抱き上げられたそっくりな男の子はゴーグルの奥で笑っていた。グレイの部屋からだヨ、って答えてみるけど伝わってはないみたいだ。困った顔をして優しく頭を撫でてくれた。

    「またサブスタンス関係?でもそれらしい報告や現象は聞いてないしなぁ。わ、そんな悲しい顔はしないで!ほらほら、ボクちんの手をよく見てて、ワン、ツー、スリー!」

    ぽんっ、と魔法みたいに出てきたのはハチミツのキャンディ。そっくりな男の子は得意な事まで一緒だったみたい。お返しに、って思ってボクちんも得意のマジックで小さなお花を出してみせた。本当はグレイの為だったんだけど、特別ネ。

    「びっくりだヨ!マジックが得意なの?君ってば本当にオイラみたい!!」

    抱き上げられてくるくると回る男の子はとっても喜んでくれてオイラまで嬉しくなっちゃう。みゃうみゃうって得意げに鳴いた時、勢いよく開かれた扉から怖い顔したお兄さんの怒鳴り声。

    「うるせぇぞ!一体何してやが…んだ…?」

    お兄さんは俺っちを見た途端声は段々と小さくなって、不思議なものを見るような視線が突き刺さる。

    「NO、NO。だめだヨ、アッシュパイセン。この子が怖がっちゃうでしょ。」

    「何だよそれ。サブスタンス関連なら直ぐに報告するのが規則だろうが。」

    頭の上に伸びてきたお兄さんの手がオイラに影を落とす。やだやだ、乱暴なのは嫌いだヨ。男の子の手の中でぶわりと毛を逆立てた。

    「シャーッ!」

    「ああ?生意気な猫だな。テメェそっくりだ。」

    お兄さんの手が俺っちに届く前に男の子はさっと腕を引いてお兄さんと距離を取ってくれる。

    「もう、アッシュパイセンってばこの子はまだ仔猫なんだからもっと優しくしなきゃ。」

    「みゃう!」

    お兄さんはちょっとだけ罰の悪そうな顔をしてた。もしかしたらオイラが思うよりも良い人だったのかもしれない。ひょいと男の子の手からお兄さんの手に飛び乗った。慌てた様子で、でもしっかりとボクちんを落とさない様に手のひらを広げてくれる。

    「みぃ、みゃ!」

    「チョロチョロすんな、あぶねぇ。」

    お兄さんが呆れた溜息をついて、そっとオイラを男の子の手に戻した。男の子がくすくすと笑う。その額にデコピンを一つ落としてお兄さんは部屋を出ていった。

    「一応君の報告に行くんだって。オイラは多分だけど、君はサブスタンスとは関係ないって思うんだけどネ。あのお兄さん、結構心配性だから。」

    多分きっと、この男の子はあのお兄さんの事好きなんだと思う。じゃなきゃそんなに優しく笑わないもんネ。
    それから暫くして、お兄さんと一緒にまた知らないおじさんが現れた。オイラを見て可愛いって撫でてくれたけど、その手が冷たくてびっくりしてつい噛みついちゃった。その手も固くて、それが不思議でペタペタ触ってみればおじさんは優しく笑っていた。

    「みゃう。」

    「本当にビリーそっくりだな。」

    「みぃ?」

    今のは俺っちの名前?ううん、もしかして、もしかして、男の子は名前まで同じなのかな?おじさんの手の中でその様子を見ていた男の子の方を振り返る。

    「んふふ、ジェイもそう思うよネ。なんとこの子マジックが得意なのも同じなんだヨ!」

    男の子はパチンとウインクを飛ばしてオイラがさっき出したような花を降らせた。ボクちんも真似して花を降らせばおじさんは凄い凄いと褒めてくれる。グレイに褒められる時もだけど、なんだかここの人に褒められると心の真ん中辺りがほかほかするんだ。

    「みゃう!みゃー!」

    嬉しくってぴょんぴょんと机の上で飛び跳ねる。そんな時、開いた扉から顔を出したのはグレイだった。勢いのままに飛びついて気付く。おかしいな。グレイだけど、グレイじゃない。

    「え!?え、ビリーくん?じゃない、よね?」

    「みゃう…?」

    すんすんと匂いを嗅いでもグレイなんだけど、うーん、何だろう。違うのに、でも、安心する匂いだ。擦り寄って手の中でくるんと丸くなる。

    「はわわ…可愛い…っ…!あ、えと、じゃなくて、えっと、この子は…?」

    「グレイってば早速その子に気に入れてちゃったみたい!同じオイラだもんネ。グレイの事が大好きに決まってる。」

    「みゃ!みゃん!」

    つん、と男の子に頬を指されて、そうだヨって返事をした。よく分からないけど、このお兄さんもグレイなんだって。ああ、そういえば、オイラの大切なグレイはどこに行ったら会えるんだろう。そっくりな人にあったからかな。とっても寂しくなってきちゃった。

    「みゃう…みぃ…」

    「え、あれ、どうしたのかな…お腹空いちゃった…?」

    「みぃ、みぃ…」

    ぐりくりと頭をグレイに押し付けた。寂しいな、俺っちもグレイに会いたいヨ。グレイが優しく頭を撫でてくれるけど、とっても優しくて、丁寧で、良く似た手付きなのに、どこか違うんだ。
    こっちのグレイが困ってるって分かるのに、寂しいを抑えられなくなってしまった。ビ、ビリーくん、って多分男の子の方を呼んでるんだろう。

    「グレイ、ちょっと待ってて!」

    ぱたぱたと急ぐ足音が聞こえて、それから暫くしてほっとする甘い匂いが漂った。グレイの手のひらで泣き疲れて丸くなった背を伸ばす。男の子がことりと目の前に置いてくれたのはホットミルクだった。

    「みぃ」

    ゆっくりと机に降ろされて、温かいホットミルクに舌を伸ばす。ハチミツたっぷりの甘くて優しい味。男の子が目の前で笑ってゆっくりでいいヨって。いつの間にかおじさんも、お兄さんも、グレイも傍にいてくれたみたいだ。

    「みゃう、みゃー」

    ありがとう、って伝わらなくても伝えてみた。ここには優しいが沢山ある。同じ顔の男の子の周りにそれがあるのが無性に嬉しいと思うのは何でだろう。今日初めて会ったのに、ずっと一緒に居たみたい。

    「み、みゃぁ〜う…」

    安心して、お腹いっぱいになったら本当に眠たくなってきちゃった。えっと、えっとネ、重たくなる瞼を必死で耐えて男の子の手に擦り寄った。

    「みゃう、みー、みゃう」

    もう寂しくないネ、って。大切が沢山あるのは嬉しいネ、って。幸せだヨ、って。不思議と伝えたいって思ったんだ。男の子のゴーグルの奥の多分きっと同じ瞳が揺れた気がした。
    ああ、それにしても、とっても眠たい。オイラのグレイを探さなくちゃなんだけど、ちょっとだけ眠ってもいいよネ?

    ***

    「みゃうん?」

    ぱちりと目を開けるとそこは見慣れた部屋だった。グレイお手製のベッドの上でボクちんってば夢を見ていたんだろうか?
    見慣れた姿の嗅ぎ慣れた匂いのグレイがおはよう、っていつも通りに笑い掛ける。小首を傾げてやっぱりあれは夢だったんじゃないかって思ったけれど、口の中に残るのは甘いハチミツの味。

    「みゃー!みゃう!」

    ぴょんとグレイの元に駆け寄った。不思議な事があったんだヨ。あのネ、男の子のオイラもグレイの事が大好きで、沢山の優しいが周りにあって、とっても幸せそうに笑うんだ。俺っちと同じでネ!

    「ふふ、ビリーくんとっても良い夢を見たんだね。」

    「みゃうっ!」

    でもでも、やっぱりオイラのグレイが一番だヨ!
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