犬も食わない「いやだ」
にべもなく聶懐桑は云い放った。
「二公子、一緒に兄君にごめんなさいしに行きましょう」
「いやだったら、いや」
てこでも動かない容子でつっぱねる懐桑に、聶宗輝は困った顔をした。よく日に焼けた実直な相貌に汗が光る。
そもそも聶宗主とその弟君がなぜ喧嘩をしたのか、宗輝は知らないのだ。知らないのに、宗家と近い血縁で年回りも近いということで、兄弟喧嘩の仲裁をして二人の仲を取り持つ役割が回ってくる。今回の喧嘩も、懐桑が一方的に癇癪を起こしていたとしか、宗輝は聞いていない。
「懐桑、宗輝を困らせるでない」
「宗主!」
「……大哥、僕は悪くないよね?」
目を白く光らせ、懐桑は不機嫌そのものの表情で兄を見上げた。聶明玦は弟の見上げる姿体に弱いとわかってのことだ。容貌魁偉で泣く子も黙る厳格な赤鋒尊は、ころりと態度を変えて懐桑をなだめた。
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