ぬのさと
DONE双聶本「You Mean the World to Me」につけていたおまけ折り本の再掲。最初は秋の話だったのを途中で春に変えたので、秋バージョンを持っている方はレアかも。
元ネタは北宋の徽宗のエピソードです。
作中の七言絶句は、『全唐詩』所収の劉長卿「過鄭山人所居」(鄭山人の所居を過ぐ)より。
寂寂孤鶯啼杏園
寥寥一犬吠桃源
(寂寂として孤鶯、杏園に啼き
寥寥として一犬、桃源に吠ゆ)
ものいう鳥 数ある仙門世家のうちで唯一、刀術を使う清河聶氏の当代宗主は、聶懐桑という。
勇猛なこと、義に篤いことで世に名を馳せた聶氏を束ねる長として、聶懐桑はあまりにも頼りない。領内でもめごとが起きても、悪鬼邪魅のたぐいが跋扈していると領民から訴えがあっても、困り顔に気弱げな笑みを浮かべて扇子ではたはたとあおぐばかり。なにを聞かれても「知らない」としか答えない、一問三不知とあだ名される人物だった。
「――知らない」
ふいに、つややかな黒い羽根の小鳥がそう云った。暖かな陽射しが明るかった。
「ふうん、おいしいかい?」
聶懐桑はにこにこと笑いながら、目もとから頭の後ろにかけて黄色い肉垂れのある、真っ黒な小鳥に手ずから餌をやった。九官鳥は橙色の嘴を開け、
1438勇猛なこと、義に篤いことで世に名を馳せた聶氏を束ねる長として、聶懐桑はあまりにも頼りない。領内でもめごとが起きても、悪鬼邪魅のたぐいが跋扈していると領民から訴えがあっても、困り顔に気弱げな笑みを浮かべて扇子ではたはたとあおぐばかり。なにを聞かれても「知らない」としか答えない、一問三不知とあだ名される人物だった。
「――知らない」
ふいに、つややかな黒い羽根の小鳥がそう云った。暖かな陽射しが明るかった。
「ふうん、おいしいかい?」
聶懐桑はにこにこと笑いながら、目もとから頭の後ろにかけて黄色い肉垂れのある、真っ黒な小鳥に手ずから餌をやった。九官鳥は橙色の嘴を開け、
ぬのさと
DONE魔道祖師日本語版ラジオドラマの販促イラストとツイートがおもしろすぎたので。なんど考えても、応援団長ってわからないよ。あっはい、考えるな、感じろですね。Twitterの再掲です。
三尊の一日店長 ぴよぴよぴよぴよ……
ひよこの鳴き声がうるさい。ぽわぽわした黄色い柔毛や鳴き声に癒されるのは最初だけで、勝手なところで糞をしないか、商品をつつかないか、心配でたまらない。
「兄上、懐桑の鳥はせめて鳥籠に入れさせて――」
「……お前は応援団長だろう。しっかり応援するんだぞ」
いかめしい表情で弟の身だしなみを指差しチェックする兄上だが、どう見ても自分の一日店長としての仕事がなにかわかっているとは思えない。私たち三尊で一日店長を勤めるのは二回目だというのに。そもそも、この仮の職場へ懐桑を連れてくること自体も二回目で、兄上はいったいなにを考えていらっしゃるのか。
まあ、このふたりはこれがいつものことだから、なにも考えていないのだろう。
959ひよこの鳴き声がうるさい。ぽわぽわした黄色い柔毛や鳴き声に癒されるのは最初だけで、勝手なところで糞をしないか、商品をつつかないか、心配でたまらない。
「兄上、懐桑の鳥はせめて鳥籠に入れさせて――」
「……お前は応援団長だろう。しっかり応援するんだぞ」
いかめしい表情で弟の身だしなみを指差しチェックする兄上だが、どう見ても自分の一日店長としての仕事がなにかわかっているとは思えない。私たち三尊で一日店長を勤めるのは二回目だというのに。そもそも、この仮の職場へ懐桑を連れてくること自体も二回目で、兄上はいったいなにを考えていらっしゃるのか。
まあ、このふたりはこれがいつものことだから、なにも考えていないのだろう。
ぬのさと
DONE犬も食わないなんとやら。宗輝が不憫なのは既にお約束。聶の日の再掲です。犬も食わない「いやだ」
にべもなく聶懐桑は云い放った。
「二公子、一緒に兄君にごめんなさいしに行きましょう」
「いやだったら、いや」
てこでも動かない容子でつっぱねる懐桑に、聶宗輝は困った顔をした。よく日に焼けた実直な相貌に汗が光る。
そもそも聶宗主とその弟君がなぜ喧嘩をしたのか、宗輝は知らないのだ。知らないのに、宗家と近い血縁で年回りも近いということで、兄弟喧嘩の仲裁をして二人の仲を取り持つ役割が回ってくる。今回の喧嘩も、懐桑が一方的に癇癪を起こしていたとしか、宗輝は聞いていない。
「懐桑、宗輝を困らせるでない」
「宗主!」
「……大哥、僕は悪くないよね?」
目を白く光らせ、懐桑は不機嫌そのものの表情で兄を見上げた。聶明玦は弟の見上げる姿体に弱いとわかってのことだ。容貌魁偉で泣く子も黙る厳格な赤鋒尊は、ころりと態度を変えて懐桑をなだめた。
857にべもなく聶懐桑は云い放った。
「二公子、一緒に兄君にごめんなさいしに行きましょう」
「いやだったら、いや」
てこでも動かない容子でつっぱねる懐桑に、聶宗輝は困った顔をした。よく日に焼けた実直な相貌に汗が光る。
そもそも聶宗主とその弟君がなぜ喧嘩をしたのか、宗輝は知らないのだ。知らないのに、宗家と近い血縁で年回りも近いということで、兄弟喧嘩の仲裁をして二人の仲を取り持つ役割が回ってくる。今回の喧嘩も、懐桑が一方的に癇癪を起こしていたとしか、宗輝は聞いていない。
「懐桑、宗輝を困らせるでない」
「宗主!」
「……大哥、僕は悪くないよね?」
目を白く光らせ、懐桑は不機嫌そのものの表情で兄を見上げた。聶明玦は弟の見上げる姿体に弱いとわかってのことだ。容貌魁偉で泣く子も黙る厳格な赤鋒尊は、ころりと態度を変えて懐桑をなだめた。
ぬのさと
DONE甘さ少なめ双聶。でも同衾はしています。再掲。有明の月 窓を開けると、冬の早朝のまぶしい光がさしこんできた。青い空に白い三日月が見える。
いつもは聶懐桑が寝汚く布団にくるまって起きようとしないのを、厳格な宗主と世評に名高いその兄が叩き起こす。それはもう、容赦なく布団をひっぺがす。
今朝はどういうわけか、いつもとは逆に懐桑が先に起き、寝ている聶明玦を見下ろしていた。珍しいこともあるものだと、懐桑はこの機会に明玦をじっくりと観察した。ずり落ちかけていた薄い寝衣の肩を引き上げ、寝台の端に腰かけてのぞきこむ。体重をかけられた寝台がかすかにきしんだ。
明玦は懐桑の血をわけた兄だが、懐桑とは全然、似ているところがない。聶氏の修士を率いて大刀をふるう長身は逞しく、力と自信に満ちあふれていた。
2120いつもは聶懐桑が寝汚く布団にくるまって起きようとしないのを、厳格な宗主と世評に名高いその兄が叩き起こす。それはもう、容赦なく布団をひっぺがす。
今朝はどういうわけか、いつもとは逆に懐桑が先に起き、寝ている聶明玦を見下ろしていた。珍しいこともあるものだと、懐桑はこの機会に明玦をじっくりと観察した。ずり落ちかけていた薄い寝衣の肩を引き上げ、寝台の端に腰かけてのぞきこむ。体重をかけられた寝台がかすかにきしんだ。
明玦は懐桑の血をわけた兄だが、懐桑とは全然、似ているところがない。聶氏の修士を率いて大刀をふるう長身は逞しく、力と自信に満ちあふれていた。
ぬのさと
DONE猫の日に書いた、猫な双聶のお話。猫の日 朝、聶明玦が目をさますと、かたわらにあるはずの弟の気配がなかった。敷布のくぼみには、まだほんのりとぬくもりが残っている。
着替えて弟を探しに行くよりも先に、明玦の目が寝台のある部分にとまった。天蓋のついた広い寝台の足もとがもりあがっている。明玦が布団をめくると案の定、弟の聶懐桑がそこに寝ていた。
――まるい。
ここまでまるまっていると、呆れるというかおもしろくなってしまう。
懐桑は細いからだを胎児のように小さくして、まるくなっていた。犬や猫が鼻先を毛皮にうずめてまるくなっているのにも似ていた。
明玦が背中にそって手をすべらすと、肉づきの薄いからだは背骨の所在がよくわかる。肩にかかる髪をはらい、背をなでているうちに、もぞもぞと身動きして懐桑が目をあけた。
834着替えて弟を探しに行くよりも先に、明玦の目が寝台のある部分にとまった。天蓋のついた広い寝台の足もとがもりあがっている。明玦が布団をめくると案の定、弟の聶懐桑がそこに寝ていた。
――まるい。
ここまでまるまっていると、呆れるというかおもしろくなってしまう。
懐桑は細いからだを胎児のように小さくして、まるくなっていた。犬や猫が鼻先を毛皮にうずめてまるくなっているのにも似ていた。
明玦が背中にそって手をすべらすと、肉づきの薄いからだは背骨の所在がよくわかる。肩にかかる髪をはらい、背をなでているうちに、もぞもぞと身動きして懐桑が目をあけた。
ぬのさと
DONE「あなたのそばに遺体」というダジャレが元のアレですね。再掲です。あなたのそばにいたい「……できた」
ぷつりと黒い糸を糸切り鋏で切り、私――聶懐桑は針を置いた。バラバラに切り離され、隠されていた兄の遺体を長い年月をかけて探し出し、ひと針ひと針、こころをこめて私が縫い合わせた。私もまがりなりにも清河聶氏の公子として育ち、縫い物などしたことがない。それでも、聶明玦の唯一人の弟として、自分がすべてをしたかった。
「うん、いいでき」
初めは不揃いで不恰好だった縫い目も、均一に揃えられるようになった。そうなると、切断面を強調するかのような黒い縫い糸が気になってくる。めだたないように肌色の糸を使えばよかったのかもしれない。いや、いまどきは薄橙色と呼ぶべきなのか?
「いまの大哥だったら、土気色の糸のほうがめだたないよね」
1401ぷつりと黒い糸を糸切り鋏で切り、私――聶懐桑は針を置いた。バラバラに切り離され、隠されていた兄の遺体を長い年月をかけて探し出し、ひと針ひと針、こころをこめて私が縫い合わせた。私もまがりなりにも清河聶氏の公子として育ち、縫い物などしたことがない。それでも、聶明玦の唯一人の弟として、自分がすべてをしたかった。
「うん、いいでき」
初めは不揃いで不恰好だった縫い目も、均一に揃えられるようになった。そうなると、切断面を強調するかのような黒い縫い糸が気になってくる。めだたないように肌色の糸を使えばよかったのかもしれない。いや、いまどきは薄橙色と呼ぶべきなのか?
「いまの大哥だったら、土気色の糸のほうがめだたないよね」
ぬのさと
DONEシロツメクサの花言葉は、「私を思って」「約束」「復讐」「幸運」「私のものになって」というところからの現代AUの双聶です。think of me ねえ、大哥はおぼえている?
あの春の日の、ふたりだけの結婚式。
木立を抜けたところに広がる草原と、荘厳な建物。いまにしておもえば、キャンプ場も併設しているような広大な公園のなかなのだけど。
やわらかな草のあいだでシロツメクサやタンポポといった素朴な野の花々をつみ、小さな花束を作った。花冠を作りたかったけど、幼い私では作り方がわからなかったし、一緒にいる大哥はもっと知らないだろう。
「大哥、懐桑とけっこんしきしよ」
テレビで見た結婚式の花嫁さんが、真っ白なベールに、後ろに長く伸びたウェディングドレスを着て、かわいらしいブーケを持っているのに憧れた。どこもかしこも華やかで美しくて、花嫁さんの輝くように幸せな笑顔に、自分も同じことをやってみたかった。
1054あの春の日の、ふたりだけの結婚式。
木立を抜けたところに広がる草原と、荘厳な建物。いまにしておもえば、キャンプ場も併設しているような広大な公園のなかなのだけど。
やわらかな草のあいだでシロツメクサやタンポポといった素朴な野の花々をつみ、小さな花束を作った。花冠を作りたかったけど、幼い私では作り方がわからなかったし、一緒にいる大哥はもっと知らないだろう。
「大哥、懐桑とけっこんしきしよ」
テレビで見た結婚式の花嫁さんが、真っ白なベールに、後ろに長く伸びたウェディングドレスを着て、かわいらしいブーケを持っているのに憧れた。どこもかしこも華やかで美しくて、花嫁さんの輝くように幸せな笑顔に、自分も同じことをやってみたかった。
ぬのさと
DONE冬至のお話。一陽来復 一年でいちばん昼が短い冬至の日だけあって、あっというまに陽は傾き、薄闇の帳が下りるとともに冷え込みが厳しくなってきた。明るく輝く歳星を一番星とし、星々がまたたきはじめている。
「聶の二の若君は、こちらでしたか」
夜目にも白い校服をまとった藍氏の修士が声をかけた。
「夕餉の刻限につき、お戻りくださいませ」
「ありがとう、わかりました」
聶懐桑は星辰を観察した書きつけを片づけ、立ち上がった。ここは厳格で知られる藍氏の仙府、雲深不知処。我が道を行く聶懐桑といえども、聶氏の本拠地である不浄世にいるときのように自由気ままにはふるまえない。
懐桑の吐く息が白くなった。濃い青紫の空に、黒く建物の陰が浮かんでいた。
1232「聶の二の若君は、こちらでしたか」
夜目にも白い校服をまとった藍氏の修士が声をかけた。
「夕餉の刻限につき、お戻りくださいませ」
「ありがとう、わかりました」
聶懐桑は星辰を観察した書きつけを片づけ、立ち上がった。ここは厳格で知られる藍氏の仙府、雲深不知処。我が道を行く聶懐桑といえども、聶氏の本拠地である不浄世にいるときのように自由気ままにはふるまえない。
懐桑の吐く息が白くなった。濃い青紫の空に、黒く建物の陰が浮かんでいた。
uo_chai
DONEペーパーラリー「暑さしのぎの夏」パスワードは交流会の店舗内(サイト先)にて提示しております🙇
たぬほわが暑くてのぼせています、そこで大哥は人間の間で美味しく水分補給ができるときいた「酸梅湯」を準備してたぬほわに飲ませてあげました。
たぬほわはみるみるうちに元気になり、元気になってからも
大哥が動くまでずっとくっついていました。
uo_chai
DONE海にやってきた大哥とちんちらほわいさんいつもの漫画もどきです😂広いお心で見ていただけると幸いです!
フィーリングでお楽しみください😇
パスワードは交流会の店舗内(サイト先)にて提示しております🙇 10
iy_asa15
TRAINING寝ばっくを書こうとしてそこまで至らなかった現代AU双聶です。すでに色々とはじまっているふたりです。一応微R18です。
パスはほわBD
小一時間懐桑に着て欲しいルームウェアを検索してました… 1340