リボン結び 武者小路が散歩がてら中庭を歩いていたら山本と出くわした。
「あ、山本さん」
「武者さんじゃないか、こんにち」
「あれ?」
山本も武者小路に気づき、会釈をしようとした。しかし、言い終わる前に武者小路が首を傾げる。そんな突然の彼の行動で、山本がうろたえる。
「な、なんだい……?」
「んー……少しいつもと違うような……」
むむ、と唸りながら、ひょこひょこと山本の周りを跳ねるように違和感の正体を探っていく。いつもと変わらない藤納戸色の羽織に、黒の着物。足元から上に視線を向ける。山本は居心地の悪さを感じながらもじっとしている。その視線は首の辺りでぴたっと止まった。
「あ、わかりましたよ! タイのリボン結び!」
武者小路が山本の首元を指で示したところ、合点がいったように「あぁ、これかい」と山本は自分の首元のタイを指して頷く。
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