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    ma99_jimbaride

    成人/二次創作
    箱▷ https://odaibako.net/u/ma99_jimbaride
    蔵▷ https://galleria.emotionflow.com/s/121109/

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    ma99_jimbaride

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    とある本丸の色々とオープンなくわまつです

    注連作「そうそう、それをこっちに引っ張って、そう」
    「なるほど」
     桑名が指示した通りに五月雨が手を動かす。手の中の縄が締まる。求めていた形らしくなってきた。
     五月雨の手許を覗き込んでいた村雲は自分の手の中にある藁の束を見直して、何度かまばたきしたと思うと、こたつの天板に倒れかかるように腕を伸ばした。
    「俺そんな綺麗にできないよ〜」
    「雲さん、とりあえずはやってみましょう」
    「そうそう、まずは手を動かすのが大事だよ」
     言いながら桑名の手の中では藁の束が手際よくねじられ、紙垂をつけられていく。あっという間に簡素ではあるが見慣れた注連飾りになった。
    「別の形のも作るんだろ?」
    「うん。紙垂も小さいやつ作っといてくれる?」
    「おう」
     ひとりだけ藁ではなく紙を手にした豊前がちゃきちゃきと紙を切っては折っていく。できあがった紙垂は傍らに小さな山を作り、桑名はそのひとつを手に取るとまた縒り上げた藁につける。そうしてもうひとつ注連飾りができた。
     師走も半ばを過ぎ、連隊戦も始まって本丸には普段と違う賑わいがある。その中で四振りはこたつを囲みながら、正月用の飾りを作っている。
     毎年この時期はおおわらわだ。連隊戦と遠征に出ていない間は手分けをして新年の準備をしないと間に合わない。新年の準備は何年か前からくじ引きで仕事を割り振るようになり、江は今年は注連飾りを作る当番を引き当てた。そんなわけで、談話室として開放されている部屋でこたつを囲みながら、四振りは藁の束と格闘しているのである。
    「正門にかけるやつ、今年は祢々切丸だっけか?」
    「そうそう、大分立派なのになるみたい」
    「それ以外、厩や道場に飾る分を私たちが作るのですよね」
    「責任重大じゃん……」
     正門にかける一番大きな注連飾りは御神刀の持ち回りになっている。それ以外、本丸の至る所に使われる分を四振りは任されていた。
    「とらくたーにもつけるよお、よろしくね」
     桑名の手の中では着々と注連飾りができあがっていく。それを覗き込みながら五月雨の手の中でも藁がねじられていく。なぜか桑名のものより小さめになってしまうようで、訝しげに首を傾げている。
     それを見て笑った村雲がふと壁にかけられた時計を見た。
    「そろそろ松井と篭手切の部隊が戻ってくるんじゃない?」
    「もうそんな時間か?」
    「うん、出てった時間から考えると……まあまたすぐ出ちゃうけどさ」
    「稲葉の遠征部隊は夜でしたか」
    「うん、夕飯後くらいじゃなかったかな」
     松井と篭手切は連隊戦の部隊に組み込まれている。今年の報酬が之定の槍と通知が来て、古馴染みの歌仙兼定に付き合う形で出陣を増やしてもらったらしい。
     連隊戦の部隊は持ち回りにはなっているが、何巡かして、しばらく休憩を取ったらまた出ていく。手入れがいらない政府主催の催しなのもあって、できる限り出陣するため結構な重労働なのだ。
    「——噂をすれば影、ですかね」
     手許から顔を上げた五月雨が桑名のうしろを見たとき、そこにある戸がスパンと開けられた。
    「お疲れさん」
    「寒いから閉めて、松井」
     豊前と村雲には手をあげて応え、ただし戸は閉めず、松井はつかつかと室内に入ってきた。
     そうしてゆらりと桑名の背後で止まったと思うと、その頭をがしりと掴み、髪を撫で回し始めた。
    「ええ、何? 今手離せんのやけど」
    「疲れてるな」
    「疲れていますね」
    「疲れてるね」
     よく見ると、普段から白い顔はますます白くなり、青い瞳はやや虚ろになっている。そしてなぜか桑名の頭を見つめながらわしわしと手でいじり倒している。今朝から何巡してるんだっけ、と村雲が考えたとき、低い声がした。
    「桑名」
    「何?」
    「こっちを向け」
    「やから手離せんのやって」
     桑名の手の中では注連飾りがひとつできあがろうとしているところだった。なるほど佳境である。しかし松井はまだ髪をわしわしともてあそびながら、「手は止めなくていいから」と続けた。
    「もー、何なん」
     根負けしたのは桑名の方だった。すぐうしろに立つ松井を肩越しに見上げようと顔を動かしたとき、松井も膝を折ってその場にしゃがんだ。
     残りの三振りは息を詰めるしかなかった。松井は桑名の唇にたっぷり三秒は吸いついたあと、やはり据わった目で「よし」と一声呟き、桑名の肩を叩きながら立ち上がった。
    「松井さん、休憩はまだ……あ、皆さんもお疲れ様です」
     庭を走ってきたのは篭手切だった。両手に団子を持っている。
    「ああ、分かっているよ。少し皆の顔を見ておこうかと思ってね」
    「そうでしたか」
    「その団子ももらおうか。ありがとう」
    「いえ。あ、先ほどより顔色がよろしいですね」
    「そうかな」
     二振りは和やかに会話しながら立ち去っていく。取り残された室内の四振りはそれを何も言えずに見送った。松井はやはり戸を閉めていかなかった。
    「……びっくりしたあ……」
     口許を手で押さえながら、髪が膨らんだ桑名がようやく一言こぼした。
    「びっくりしたのはこっちだよ……」
    「わん……」
     村雲と五月雨の言葉に頷きながら、豊前がこたつを出る。「まあ回復したみたいでよかったな」と笑いながら、開け放たれたままの戸を閉めた。
    「それと、桑名、それ大丈夫か?」
    「え? ……あ」
     手は離さなくていいと言われたが、驚いて変な力が入ったのだろう。そろそろできあがるはずだった注連飾りが少し歪んでしまっている。
    「あちゃあ……」
     作り直しかあ、と桑名は髪を整えもせずに、縒り合わせた藁を解いていく。
     え、そんなするっと戻るの? と村雲は困惑したが、五月雨も少し動揺した様子のまま桑名につられるようにして自分の手の中の注連飾りに戻っていった。豊前もまた、笑いを噛み殺しながらこたつに戻ると、再び紙垂を作り始めた。
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    ma99_jimbaride

    PASTへし切長谷部の駈込み訴え。
    ミュの配信見ていて長谷部よかったな……すごくよかった……となったので引張り出してきました。中身はもうまったく関係ないです。本当に。
    しかしきっとこの長谷部も「忘れることにしたからあの方は俺の執着で汚されることはない」と考えているでしょう。

    アーカイブ配信を待って暮らします……。
    哀訴嘆願 申し上げます。申し上げます。主。あの男は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い男です。ああ。我慢ならない。死んで当たり前だ。
     はい、はい。落ち着いて申し上げます。あの男は、死んで当然だったのです。狼藉ばかりの男だ。言うまでもない、恨まれていた。多くの人間から、恨みを買っていたのです。いつ死んでもおかしくなかった。
     確かにあの男は俺の主でした。俺に名前を付けた男です。俺を俺たらしめる、最初の符丁を与えた男です。しかし、それが何だというのです。あの男は、自分が名付けた物を、そうして周りから選り分けた特別を、簡単に手放してしまえる男だった。俺に「俺」という枷を与えておいて、俺を突き放した。
     ええ、あの男は俺の主でした。その頃慕ったことがなかったと言っては嘘になる。しかし、刀などというのは皆そういうものです。持ち主に何らかの想いを抱かずにはいられない。それが敬愛であれ、憎悪であれ、愉悦であれ。俺たちはそういうものだ。よくご存じでしょう。
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