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    ma99_jimbaride

    成人/二次創作
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    PASTへし切長谷部の駈込み訴え。
    ミュの配信見ていて長谷部よかったな……すごくよかった……となったので引張り出してきました。中身はもうまったく関係ないです。本当に。
    しかしきっとこの長谷部も「忘れることにしたからあの方は俺の執着で汚されることはない」と考えているでしょう。

    アーカイブ配信を待って暮らします……。
    哀訴嘆願 申し上げます。申し上げます。主。あの男は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い男です。ああ。我慢ならない。死んで当たり前だ。
     はい、はい。落ち着いて申し上げます。あの男は、死んで当然だったのです。狼藉ばかりの男だ。言うまでもない、恨まれていた。多くの人間から、恨みを買っていたのです。いつ死んでもおかしくなかった。
     確かにあの男は俺の主でした。俺に名前を付けた男です。俺を俺たらしめる、最初の符丁を与えた男です。しかし、それが何だというのです。あの男は、自分が名付けた物を、そうして周りから選り分けた特別を、簡単に手放してしまえる男だった。俺に「俺」という枷を与えておいて、俺を突き放した。
     ええ、あの男は俺の主でした。その頃慕ったことがなかったと言っては嘘になる。しかし、刀などというのは皆そういうものです。持ち主に何らかの想いを抱かずにはいられない。それが敬愛であれ、憎悪であれ、愉悦であれ。俺たちはそういうものだ。よくご存じでしょう。
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    SPUR ME2022/12/11「種蒔くは待つ君が為」で頒布予定の新刊冒頭です。
    本当に間に合うのかさっぱり分からないのですが残りも頑張ります……。
    楽園にあらず ずっと潮騒が鳴っている。
     ざあ、と緑が揺れた。まだ青い稲は風に煽られて一息音を立てると、あとはさわさわ、さわさわ、囁くような余韻を残した。本物の波音と違って遠ざかっていくだけだ。不安定ながら繰り返す、あの律動ではない。
     立ち上がると眼下には山を削って段々に開かれた小さな田畑の連なりがあり、雑木林があり、その向こうに本物の海があった。ちらちらと白い光を返して、遠くからでも揺れているのが分かる。
     あの波音が聞こえたわけじゃない。
     松井江はしばらく、その海の表面に光が揺れるのを見ていた。太陽はそろそろ南中しようとしている。暦の上では秋になったとはいえ、額や背中に汗が滲んでいた。
    「終わった?」
     にょっきり、といった感じですぐ下の段で立ち上がる姿が見えた。桑名江が手拭いで額の汗を拭き取りながら松井をじっと見上げている。目許は前髪で隠れているのに見つめているのが分かるのは、さっき額を拭ったときに稲穂色の目が覗いたからだ。それに、誰かと目が合ったからといって、逸らしてしまうような奴ではないのだ。特に松井相手、しかも畑に関することなのだから。
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    MOURNING㊗️特命調査・慶応甲府復刻🎉

    とある本丸の則清です
    猫は眠れない 午後は柔らかな陽光に春の気配を知るような穏やかさだった。いつもは障子紙に日が透けるのを見ながら微睡んでいるはずの南泉一文字は今日は炬燵を抜け出し、膝を揃えて正座している。思わず肩を内に寄せて縮こまってしまうのは仕方のないことだろう。ちらりと上目で窺う相手は、そんな南泉を気にも留めず窓枠にもたれて外をぼんやり眺めている。
     普段なら、そこにいては身体が冷えるから、などと言って自分も炬燵に潜り込むのだが、今はそういう軽口を挟めそうにない。南泉がつい他に比べて気安い口をきいてしまうのをいつも鷹揚に赦してくれるこの相手は現在、物思いに沈んでいるらしい。
     長い睫毛で重そうな目蓋から覗く薄い色の瞳が物憂げなのは普段と変わりない。いつもはその下の口許が不敵に弧を描いていて、そのアンバランスさが顔の中で不思議に調和して納まっている。南泉はその思慮深さと軽妙さの均衡を保った喰えない性格を含めて、この「じじぃ」を自称する刀を敬愛している。敬愛しているから、いつもの笑みを引っ込めて目の前で黙り込んでいる一文字則宗に口を挟めないでいる。
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