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    m_s_1ya

    @m_s_1ya

    きゅーしドロばっかりポイポイしてます。
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    m_s_1ya

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    ロナくんおたおめ!
    と言うことでサクッと書いてみた!間に合って良かった!
    ドラちゃん視点ばっかり書いてるけど、思いついたのかこれだから仕方ないね!
    ドラ→ロナ 付き合ってない
    三十年後を添えて。

    #94
    #ドラロナ
    drarona
    #ロナ誕
    lonaNativity

    23時59分その日もいつものように夕方までには家事を終わらせて、仕事に向かうロナルド君を見送った後、夜の散歩にジョンと一緒に興じていた。夏の暑い盛りに入り、夜でも蒸し暑いシンヨコの夜だが、これはこれで嫌いではなく、むしろ短い夜の時間は楽しまなければ損である。最近はこの街にもなれてきて、簡単な外出くらいならマントも外して少々ラフな格好で居ても気にならなくなってきた。ジョンも好きなように地面を掘ってみたり、草の匂いを嗅いだり楽しそうにしている。
    「今日も蒸し暑いねぇ、ジョン。あんまり無理せずに早めに切り上げようか。」
    「ヌー…」
    「ええ、まだ遊びたいのかい?仕方ないねぇ」
    土遊びに興じるジョンに、苦笑しながらも、涼やかな風が吹き抜ける土手なら、もう少しゆっくりしても大丈夫かな、と腰を下ろした。
    夏の草の匂いとジョンが掘り返す土の匂いが鼻に心地よい。今まではずっと城の中に引き籠ってばかりだったせいで、こんな匂いを感じることも久しぶりな気がする。川のせせらぎの音、風の音、遠くに聞こえる喧騒や、車のエンジン音。それに伴う商店街の匂いに排ガスの匂い。こんなふうにゆったりと世界を感じることをあまりしてこなかった。それもこれも、突然やってきた楽しくも美しい退治人に外に連れ出されなければ得ることが無かった感覚だ。彼に魅せられて事務所に転がり込んでからと言うもの、楽しくも可笑しく、素晴らしい日々に眩暈がするほど心酔している。それもこれも、全てはロナルド君のお陰だ。彼と居るだけで退屈はないし、何より彼の人となりが、高潔な魂が美しい。そばに居るだけで眩しくて目が眩みそうなのに、そのくせ自分は二の次三の次、他人のためには己を顧みない危なっかしさも持ち合わせている。心はガラスのように繊細で、振る舞いは百獣の王のように気高い。そのアンバランスさも、世話をしたくなる幼稚さに見える。ロナルド君の考えるだけで、ひとりでに笑いが溢れてしまう。自分自身でもどうかと思うくらいには、ロナルド君のことが好きなのだ。じゃなきゃ棺桶まで持ち込んで人間の、しかも退治人の家に上がり込むことはない。
    人間だと少し汗ばむだろうが、体温の低い吸血鬼だと、そこまでの暑さではない。それでもあまり長居はできない。汗と泥に塗れたジョンに、そろそろ、と声をかけて、泥を払って抱き上げる。少々の汚れは、どうせ今日も仕事で汚れて帰るだろうロナルド君の服と一緒に洗えば事足りるので気にしない。
    家路に着きつつ、帰る頃には日付が変わってしまうだろうか、ちょっと遅くなるな、などと考えていた。まぁ、夜食の手配は完璧なので、遅くなったとしても腹ペコロナルド君を待たせることはない。今日はどんなトンチキな話が聞けるだろうかと、ジョンを撫でつついつもの足取りで進んでいたところ。
    「おお、ドラルク」
    向かいから歩いてきたのは、ロナルド君の退治人仲間である、ショットさんとサテツ君だった。軽く右手を上げて挨拶をしてくれるショットさんに、やぁ、と軽く返す。
    「今日はロナルド君と一緒じゃ無かったのかい?」
    「いや、一緒だったけど、特に何もなくてな。今さっき別れたところ。」
    そうか、それはちょっと残念。まぁ、危険がないことはいいことだけれど。お疲れ様だね、と挨拶をして帰ろうとした。
    「今日ばかりは、パトロールだけで済んだのも、ロナルドのお祝いだったりしてな。」
    「確かに。平和な誕生日なんて、俺らの仕事じゃなかなか無かったりするし。」
    「まぁ、お陰でギルドでどんちゃん騒ぎになっんだけどな…」
    少し肩をすくめながら言うショットさんに、でもそれも楽しくて良かったじゃないか、なんて話すサテツ君。
    ん?今、なんて?確か、多分、ロナルド君の、誕生日…?
    「え、えっと、ロナルド君、誕生日なの…?」
    「あれ?ドラルク、聞いてなかったか?」
    「いや、ロナルドの事だし、そんなのわざわざ言うことじゃないって言いそうじゃない?」
    「あー…確かに。あいつ自分のことはマジで何も言わないからな…」
    謎に納得しているような表情で、うんうんと頷く二人。いや、二人で完結しないでくれ!本当に?今日がロナルド君の誕生日!?だとしたらちょっとまて、今、何時だ!?慌ててケータイを確認する。8月8日。23時は回っている。
    「ロナルド君の誕生日は、8月8日?」
    「そうそう。今日だよ。」
    何気なしに言うショットさんになんでもっと早く言ってくれないのか、と無駄な苛立ちを覚えたが、そんな事を言ってる場合ではない。
    誕生日。それはその人がこの世に生を受けた特別な日。どこぞの宗教やらに傾倒しているわけではないが、小さい頃から誕生日と言えば家を挙げて盛大に祝っていた。生まれてくれてありがとう。この世に存在してくれてありがとう。そう言う事を本人や家族が噛み締める日だ。私にとってのロナルド君は、まさにそのうちの一人であり、祝うべき対象だ。そんな大切な人の誕生の日を、取りこぼすところだったなんて。
    ショットさんとサテツ君に適当に挨拶をして急いで帰った。二人が帰るところということは、ロナルド君も家路についているはずだ。ここから家まで普通であれば30分程度か。こういう時に自分の虚弱体質が恨めしい。走れば疲れて砂になるので、出来るだけ早歩きで、且つ死なない程度に急いで家に向かった。途中からはジョンも自分で走って着いてきてくれた。
    そうして事務所に着いたのは23時40分過ぎ。息が切れるギリギリのラインでなんとかたどり着いたものの、事務所に灯はなかった。ロナルド君はまだ帰ってきていないらしい。なんてことだ。ケータイを取り出してロナルド君へ電話をかける。コール音のみ。でない。これはもう無理かもしれない。しょんぼりと肩を落とす。が、すぐに立て直す。そもそも、教えてくれなかったロナルド君が悪いのだ。こうなったら開き直って、日付が変わろうとも盛大に祝ってやろうと、上着を脱いでエプロンをつける。今から仕込めば明日には豪勢な料理を振る舞ってやることができる。足りない食材は後で買い足すとして、まずできることから取り掛かろうと、腕まくりをしたその時。コツコツと鈍い靴音が外の廊下から聞こえた。これは紛れもない、ロナルド君のブーツの音だ。急いで事務所に通じるドアを開けると、ちょうど事務所のドアを開けたロナルド君と鉢合わせた。勢いよく出迎えた私に少々面食らったのか、目をパチクリとさせている。その手には、沢山の紙袋やら花束やらが握られていた。その手元に私の視線が行ったことに気がついたようで、苦笑しながら肩をすくめた。
    「いや、これ、みんなから貰っちまってさ。断っても押し付けられて…どうしたらいいかな…」
    俺には勿体無くて、どうしよう、なんて、顔を赤らめながら言うロナルド君に、知らなかったのが自分だけだったと言うどうしようもない敗北感と嫉妬がごちゃ混ぜになる。ちらりと時計を見ると、現在時刻は23時57分。
    はぁーと、大きくため息を吐いて、ロナルド君に近寄った。
    「沢山祝ってもらえたようでよかったね。ひとまず、生花は萎れないように生けておこうか。あと、荷物も仕分けないと。」
    両手いっぱいの荷物を、一旦事務所のソファの上に置かせる。ギルドのメンバーだけでは無く、街のいろいろな人から貰っただろう内容と量に、ロナルド君の人望の厚さが窺える。そりゃそうだ。こんなにいい子なんてそうそういないもの。そうしてからになったロナルド君の両手をサラッと奪い取る。本日2度目の目をパチクリさせるロナルド君に、真正面から向き合って、攫った両手を胸の高さで握り込む。しっかりと目を合わせて、逃さないように。
    「遅くなったけど、大トリは私からね。
    お誕生日、おめでとう。ロナルド君。」
    君が会いにきてくれたあの日から、私の全てが変わったんだ。君に出会えてよかった。君が生まれてくれてよかった。君に、ロナルド君の命に最高の祝福を。
    23時59分。ギリギリ間に合ったその言葉。

    「お前、なん、どうした?変なもんでも食った?」
    「ッカーーーー!!!どうして素直にありがとうって言えないんでちゅかねぇーーーこの5歳児!!!いや5歳児でもお礼の言葉は言えるからそれ以下か!?」
    「うっせぇなんなんだこのクソ砂キメェ!」
    「そーらすぐ手が出る!ゴリラでもまだコミュニケーション取れるぞ!」
    砂にされてもなんのその、すぐに復活して付けっぱなしだったエプロンをパンパンとはたく。
    「それで?今日は残念ながらロナルド君が教えてくれなかったせいで間に合わなかったが?」
    「何が俺のせいだよ」
    「明日には盛大にパーティー料理でも振る舞ってやろうかと思っていた思いやりのある畏怖ーいドラドラちゃんに、何か言うことは?」
    「えっ、そんな、いいのかならオムライスと唐揚げとホールケーキがいいです」
    「遠慮」
    お前に、そんなのいるか?なんて、意地悪っ子のようにはにかんで、それでもちょっと赤くなった耳の先っぽは見逃さない。明日は豪勢な料理だけじゃない。他のプレゼントにも劣らない、もっと素敵な時間と、思い出を作ろうじゃないか。そのために今から料理はもちろん、明日のスケジュールも完璧にリスケしてやろう。
    はじめてのロナルド君の誕生日は、ドタバタだったけど、ある意味思い出深いものになった。



    はじめてのドタバタ誕生日から、数えてもう30回目。
    只今、8月7日、23時57分。
    夜ご飯も食べ終えて、後は寝るだけのゆったりした時間。二人で並んでソファに腰掛けて、膝には丸まったジョン。
    「やぁ、今年も君の誕生日を迎えれてよかったよ。」
    「ああ、こんな仕事、ここまで続くとは思わなかったしな。」
    五体満足で何よりだ、と、ロナルド君は笑ったが、本当に何よりだ。膝の上のジョンをゆっくり撫でる。ジョンも眠そうな目ではあるが、まだ踏ん張っていた。
    時計の針が、23時59分を差した。
    「今年も、誕生日おめでとうロナルド君。生まれて来てくれてありがとう。」
    「おお、毎年毎年、律儀にありがとうな。」
    照れ臭そうにはにかむ顔が、あの時と何にも変わらなくて、愛おしくて可愛らしい。
    「ヌヌヌヌー!」
    「おお、ジョンもありがとう!」

    あの日の誕生日、最後のおめでとうからその後は毎年、最初のおめでとうを必ず言うようにしている。
    そして、もちろん、最後のおめでとうも。
    彼の誕生の日。私の中で一等特別な日。
    毎年何か思い出に残る事を。その年を思い出すたびに私の記憶が思い出されるよう。心にも体にも記憶にも、私が居るように。君を大切にしてほしい人が、必ずここに居る事を。戻ってくる場所がある事を。君を愛する者がいる事を、忘れてほしくないから。年に一度、刻みつけるように。

    「さて、今年のリクエストは?」
    「オムライスと唐揚げとホールケーキ」
    「…年を考えなさいよ…まぁ、今日くらいは特別に、許してやるか…」
    「よっしゃ!さっすがドラルク!いふーい」
    「ヌヌーイ」
    「調子に乗るなよ二人とも!その代わりしばらくはカロリー控えめご飯にするからな!」
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