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    sub_low326

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    コラロワンライ投稿作品
    テーマ「笑顔」+60min※事前作成
    転生現パロ前世記憶うっすら有り同棲コラロ

    #コラロのワンドロワンライ
    corallosWandoloOneRai
    #コラロ

    転生現パロ同棲コラロがご飯食べる話頭ほどもある真新しいキャベツの葉を一枚ずつ剥がすうちに、ふと春が来たなと感じる。随分と今更な話だが、この時期は毎年慌ただしいもので、季節感はつい置き去りにしがちだ。
    最後の春キャベツは水気を含んでやわらかく、冬より色味も淡い。今日はお互いどの程度食べるか、俺は少し多めにするかと思案しながら剥き続けていると、
    「なあコラさん」
    シンクの隣から声がかかった。腕組みをしたローが、沸き立つフライ鍋を睨みつけている。ロシナンテは、ローの表情と弾ける油の表面を、一瞬見比べる。
    「どうした?代わるか?」
    尋ねると、
    「いや、いい。そうじゃない」
    大きな手のひらであっさり遮られた。じゃあなんだ。揚げ具合の思案にしては目元が険しい。
    「ロー、焦げちゃうぞ」
    促して初めて気付いたのか、ローは慌てて火を止めた。短くため息をついて、こちらを見て口を薄く開ける——のを今度はロシナンテが手のひらで遮る。
    「とりあえず、飯の後にしよう」
    冷めちゃうからな、と肩を叩くと、小さく頷く。
    頬から目元鼻筋と、「恋人」の面差しはすっかり精悍な男そのものになった。
    ただ時折、その引き締まった輪郭を、かつての幼さの名残が横切っていくのが眩しく懐かしい。

    大型輸入スーパーで買った鶏肉は全部揚げてしまうことにした。
    凄まじい量だがなにぶん巨漢二人の昼食なので、毎度この調子だ。熱いうちに作り置きの甘酢をかけて、同店で購入した巨大なタルタルソースも瓶ごと添える。
    キャベツは千切りにするつもりだったが「コラさんは刃物を持つな」とローに止められたので手でちぎるにとどめている。岩塩を粗く挽いて、レモンとオリーブオイルを適当にかければ立派な箸休めだ。
    米は一食五合炊いている。足りないことはない——と思う、おそらく。
    あとは昨日の残りの味噌汁を温め皿を並べて、
    「いただきます」
    手を合わせてしばし向かい合い黙々と食べ進めた。静かな午後の食卓に、揺れるカーテンからこぼれる日差しが波のように寄せては返す。
    「週明けから、研修先の診療科が変わるんだ」
    二杯目の米を、ローは自分の茶碗に高く盛った。
    「へえ、何科だ?」
    「…小児科」
    そのあまりに深刻な告白めいたトーンに、
    「え?ダメなのか?」
    ロシナンテは目を丸くする。
    「いや、ダメっつーか」
    椅子にかけてから、ローは眼前で両手を組んだ。眉間に浅く皺が寄っている。
    「…ガキにうけるなりに見えるか?」
    「ああ、それはそうかもなあ」
    特に否定することもない。ロシナンテは同意して茶を啜る。ローはやや唇を曲げて、
    「不本意なんだよ、俺も」
    研修医として第一希望のフレバンス総合病院勤務となり2年目、研修医の診療科はローテーション制で定期的に移動する。研修成績の評価は移動の都度行われ、著しく悪ければ続く後期研修だけでなく、その後の進退にも関わる。
    知識、技術面では高い評価を得られるローだが、患者からのフィードバックには波があった。お世辞にも親しみやすいとは言えない彼の風体に、萎縮する患者は少なくない。
    「愛想よくしろとさ。せめてもっと『笑顔』で、だと」
    「なるほどねえ」
    「だからさ、コラさん。教えてほしいんだよ」
    「なにを?」
    ローは頭を掻く。
    「…ガキ向けの笑い方」
    思わず吹き出してしまった。
    「なんだそりゃ」
    「実績あるだろ」
    そりゃお前専用だ、とロシナンテは手を伸ばしてローの髪を思い切りかき混ぜた。
    ——このところのローが洗面所を占拠する時間が長い理由もなんとなく察しがついた。長い指を振って、
    「子供は正直だからなあ。顔だけ笑ってても意味ねえぞ」
    「じゃあもうどうしようもねえ」
    むくれるローに、ロシナンテは視線を傾ける。かつて幼い頃、もっときかんぼうの少年だった面影に、そっと語り掛けた日を思い出す。
    彼方の海に残したかつての記憶は今もまだ互いの間に無言で漂い、粉雪の膜の向こうに霞んでいる。
    前世の願いと祈りを込めて手渡した最期の贈り物、そのリボンを今、目の前で不器用にほどく愛しい男の姿を、
    「お前はもう、充分『いい医者』だよ」
    一人と一人、再び重なるまで、ここまでやっとたどり着いたのだと、追慕を込めて見つめる。
    「…なんだそりゃ」
    眉を上げたローに、ロシナンテは「とびきりの」笑顔を返した。小突かれたように瞬くので、分厚い胸元を、拳で軽く突いてやる。
    促すようにもう一度笑うと、ローは軽く息を吐いて、
    「…そうだった、かな」
    ようやく浮かんだぎこちない笑顔の先端を、窓から吹き込んだ春風がかすめていく。
    この眼差しが肌をなぞるとき、感じる温もりも愛しさも、いつまでもここだけのものであって欲しい本音は、当分秘めておこう。
    ロシナンテは冷蔵庫からとっておきのIPAを二本取り出すと、栓を開けてローに差し出した。
    「ついでに、「メイク」でもしてみるか?」
    教えてやるよと軽く煽れば、答える代わりに軽く瓶を持ち上げて、ローは苦笑した。
    「…そうだな、考えとくよ」
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