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    Ac_4265

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    『焼肉に行こう!』
    ※『舞闘会』の5人
    ※気持ちズ!空手部要素が強め

    ##舞闘会

    「まさかまたこの5人で仕事をすることになるとはなあ」
     すっかり真っ暗になった空を見上げながらそうぼやく三毛縞に、気に食わないが頷かざるを得ない。
     【CROSS FIRE】にて『舞闘会』の活動が無事大成功に収まった数ヶ月後。俺たちはまた『プロデューサー』に呼び出された。
     なんでも、俺たちの活躍を聞き付けて新規層を取り込みたいという別の大御所からオファーがあったのだという。前回よりも規模は小さいものの、その代わりと言うべきかスケジュールはみっちりと詰まっており――体力に自信はあるものの、流石に少し草臥れてしまった。
     まあ、撮影は無事終わり、今回はラウンドボーイを任されてはいないので俺たちの役目はこれでお仕舞いだ。折角だから打ち上げも兼ねて久しぶりにこの面々で食事をしようと言い出したのは、意外にも鉄ではなく三毛縞だった。
     意味あり気な視線を寄越してくる隣の男は無視して前方を見やる。撮影後にも関わらず、鉄は相変わらずはしゃいで両隣にいる2人と談笑していた。去年ならこれくらい動いた後だと使い物にならなくなってたはずだが――大きく成長した後輩を見ると不思議と感慨深い気持ちになる。
    「そろそろ店に着くのか?」
    「押忍! 確か今は苺のデザートフェアもやってるんスよ!」
    「そうなんですか。……もしかして気を遣わせちまいました?」
    「いやいや、たまたまやってるってさっき知ったんスよ!」
    「あはは、じゃあラッキーだったって思うことにしときます」
    「そうだな。神様がいるかなどわからないが……今日まで頑張ってきたからこそ、幸運に巡り会えたのだと思う」
     たわいない会話につい耳を傾けてしまう。それにしても今日はどんな店に行くかまだ聞いていなかった。鉄がおすすめの店があると言ったから満場一致でそこに行くことになったが……スイーツフェアをやってるなら洒落たレストランの可能性もある。そんなところに男所帯でぞろぞろと入ったら悪目立ちしないだろうか。
    「あ、着いたッスよ!」
     鉄が目を輝かせて前を指差す。その指の先にある店を見て――俺の体は固まった。
     ――ああ、鉄。おまえがカルビを好きなのはよく知ってる。他の肉だっておまえは本当に美味そうに食べる。みてるこっちが少し食べたくなるくらいだ。けどよ――。
    「へ〜、ここが南雲くんおすすめの焼肉屋さんですか」
    「外から既に良い匂いがしてる。楽しみ、だが……」
     乙狩がこちらを振り返ってきて伺うように俺を見やる。そう言えばこいつは鉄の『悪癖』を知っているのだった。心配するなと答える代わりに1つ頷く。覚悟はもう決めている。幸か不幸か、こういう事態には何度も遭遇しているから最早慣れたものだ。
    「三毛縞」
     前の3人には聞こえないようそっと耳打ちする。三毛縞は腹が立つほど良い笑みを浮かべてこちらを見た。
    「なんだあ、紅郎さん?」
    「今日は俺の奢りだ。おまえも好きなだけ食え」
    「おお、驚天動地! 随分気前がいいなあ?」
    「タダで、とは言ってねぇよ。その代わり――」


    「――と、いうことで今日のお肉はママと紅郎さんが焼いてあげるから3人は思う存分食べるといいぞおおお……☆」
    「ってことだ。まあ、こういうのは慣れてるからよ、遠慮しなくていいぜ」
    「いや、流石に先輩たちだけに任せるのは……」
    「そうッスよ! むしろ後輩の俺たちが焼くのが体育会系ッス!」
     心底申し訳なさそうな顔をして申し出る漣とそれに便乗する鉄。概ね予想通りの展開に内心溜息を吐く。乙狩は俺たちを信用してくれているのか、多少困惑したような表情を浮かべるものの静かに俺たちの会話を見守ってくれている。
     俺だってできるなら後輩たちの意思を尊重してやりたい。だがここは寮のキッチンではなく普通の飲食店。俺たちが目を光らせているとしても『万が一』があってはならないのだ。
    「そう固ぇこと言うなよ。去年はよく飯を作ってやっただろ、それと大して変わらねぇよ」
    「たまには立場逆転……と言うとおかしいかもしれないが、それも一興じゃないかあ?」
    「2人がこう言ってるのなら……俺たちが頑なに断ると逆に失礼に当たるんじゃないか?」
     良いタイミングで乙狩が助け舟を出してくれる。決してお喋りな方ではないが、こういうことは得意なのかもしれない――本人は無自覚かもしれないが。
     乙狩の言葉に2人も一応納得したらしく、とりあえず場は収まった。口パクで『助かった』と言えば、それを見た乙狩はようやく安堵の笑みを浮かべる。
    「話が纏まったところでとりあえず注文しないとなあ! 鉄虎さんたち、注文はお願いできるかあ?」
    「ま、任せてくださいッス! 漣先輩、その機械取ってもらっていいッスか?」
    「はい。……へ〜、カラオケみたいにこれで注文するんですねぇ?」
    「最近はこういう形態の店も増えてきたな。朔間先輩が珍しく愚痴を零していた」
    「あはは、零さんは相変わらず機械音痴みたいだなあ?」
     鉄が機械を操作し注文を済ませると、程なくして次々と肉が届き始めた。白米も食べてこれも食べるのかと思うが、大の男が5人もいるのだから直ぐに追加で何かを頼むことになるだろう。
    「さっさと焼いてくぞ」
    「ははは、紅郎さんは食べるのを忘れないようになあ?」
    「う〜みゅ、任せるとは言ったッスけど、火を見るとやっぱり肉を焼きたくなるッス……!」
    「南雲、我慢も鍛錬の内だと俺は思う。それに以前火を見ると変な気分になるって言ってただろう?」
    「え、何ですか、変な気分になるって……?」
     後輩たちが会話するのをBGMに焼け始めた肉を引っくり返していく。視線が一気に肉に向かう3人を眺めるのは……まあ、悪い気はしない。鉄は兎も角乙狩と漣は俺たちと1つ違いのはずなのだが。一体どこで差が生まれるのだろう。
    「紅郎さん、楽しそうだなあ?」
    「おまえも随分ご機嫌じゃねぇか、三毛縞」
    「俺は大将と一緒なら何時でも楽しいッスよ!」
    「はは、本当に南雲くんは鬼龍先輩が好きっすねぇ?」
    「……ほら、焼けたから冷めない内にとっとと食え」
    「紅郎さん、もしかして照れ――うわっ?!」
     足を踏んづけてやろうとすると、間一髪のところで三毛縞が避けてくる。睨み付けてもやはりわざとらしく泣き真似をするだけだ。
    「何もしてないのに酷くないかあ……?」
    「さっきの自分の言葉を振り返ってから言え。……ほら、漣と乙狩も遠慮せずに食えよ。あんまりもたもたしてると鉄に全部食われちまうぞ?」
    「ちょ、大将! 俺そんなに食いしん坊じゃないッスよ〜!」
    「あはは……それじゃあお言葉に甘えて。いただきます」
    「いただきます。――――うん、美味しいな。南雲が勧めたくなるのも頷ける」
    「ほら、三毛縞も食えよ」
     肉を1枚皿に入れてやると、三毛縞はこちらを見て目を瞬かせた。……そんなに俺が肉をあげるのが意外か。
    「要らねぇのか?」
    「……いや、有難く頂くぞお! ほら、紅郎さんはママの焼いたお肉を食べるといい……☆」
     三毛縞は笑って俺の皿に肉を入れる。店の肉なんだから誰が焼いたって同じ――というのは流石に料理をする者として言う訳にはいかない。
    「おまえにそんな甲斐性があったなんてな」
    「はは、そういう皮肉はもう通用しないってわかってるだろう?」
    「う〜、大将たちが食べてる間やっぱり焼いちゃ駄目ッスかね……!?」
    「え〜と、話を聞く限り止めておいた方が良い気が……ほら、とりあえず追加で頼むものでも考えましょうよ」
    「そうだな。……実はさっきこれが気になってたんだが――」
     打ち上げはまだ始まったばかり。あと何枚肉をひっくり返せばいいのかと、音を立てながら焼けていく肉を眺めながらぼんやりと考えた。


     結局、耐え切れなくなった後輩たちが肉を焼き始めたり、鉄が4人に見張られながら肉を焼くことに成功したり色々あったが――。
     まあ、その話は別の機会にするとしよう。
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