『施しの箱庭』設定


【あらすじ】

　XX年後、科学――特に再生学が目覚ましく発達した世界。ある科学者によって再生医療は大きく姿を変えることになった。――ヒトの細胞を用い、そのヒトと全く同じ性質を持つ人間を人工的に創り出すことが可能になったのである。
　生み出された命は『ドナー』と呼ばれた。彼らは特殊な体質を持ち、どんなに内蔵を失っても、どんなに腕や足を切り落としても時間が経過すれば元通りになる脅威の生命力を持っていた。――ただし、心臓と頭を除いての話だが。
　沢山のドナーたちが今日も『夢ノ咲』と呼ばれる施設で穏やかに過ごしている。――いつかレシピエントに体を捧げる日を静かに待ちながら。


【用語】

『ドナー』
　ある科学者によって開発された人間と似て非なる生命体。人間ではないため人権はなく、整備された法によって権利が保障されている。また現在も改良・開発の実験が盛んに行われている。
　ヒトの細胞と結合することで、その個体と全く同じ性質を持つ人間になる。ただし、容姿・性格等は必ずしも同じになるとは限らない。人と同じように老いて死ぬが、その生命力故レシピエントより長く生きるドナーも多く存在し、彼らの扱いが徐々に社会問題化している。
　安全を確保するため『夢ノ咲』と呼ばれる施設で一生を過ごすことになるが、それが人道に反しているのではと疑問視する声も多い。

『レシピエント』
　様々な事情により、『ドナー』を創ることを国から許可された人たち。研究者とはまた別の括り。
　主に虚弱体質や難病患者、危険な仕事に就く人に許可が降りる。『ドナー』の急激な増加に伴い、年々審査は厳しくなっているという。


【登場人物】

・南雲鉄虎
　箱庭の夢ノ咲区に住むドナー。レシピエントは守沢千秋。
　昔は虚弱体質だったもののドナーは結局必要にならず、今ではすっかり千秋が元気になってしまったため自分の存在意義に悩んでいる。
　とある日、新入りのドナーとしてやって来た一彩と出会い――。

・守沢千秋
　鉄虎のレシピエント。幼少の頃体が弱かったため、念の為にと親がドナーを申請した。
　自分のドナーであるためか、鉄虎と波長が合うため弟のように可愛がっている(鉄虎には若干ウザがられている)。夢ノ咲に閉じ込められている鉄虎を筆頭したドナーたちを解放したいと考えており、それを訴える団体にも所属している。

・天城一彩
　鉄虎が17歳を迎えた時にやって来た新入りのドナー。レシピエントは天城燐音。
　ドナーであるにも関わらず、外の世界に興味がある珍しいタイプ。ひなた曰く、『同類』とは思えない。
　学院で鉄虎と出会う。次第に仲良くなっていくが――。

・天城燐音
　一彩のレシピエント。申請理由は謎だが、一彩曰く高貴な身分であるらしい。
　飄々とした態度が目立つが、ドナーである一彩を実の弟のように可愛がっている。事ある毎に揶揄うため、鉄虎からは嫌われている。

・葵ひなた
　ある実験のモルモットとして生み出されたドナー。そのためレシピエントは存在しない。
　自身と弟のゆうたを人間扱いしなかった研究者を酷く恨んでいる。しかし、彼のことを『お父さん』と呼ぶ。
　夢ノ咲学院に通い始めてから鉄虎と仲良くなる。突然現れた一彩に疑問を抱いていたが――。

・鬼龍紅郎
　ドナーの医者を務める青年。業務の傍ら、趣味で武道をドナーたちに教えている。
　実は元ドナーだったが、レシピエントが病気で先に他界。ドナーの自分には何もできなかったことを後悔し、医者を志すようになる。ちなみにレシピエントは女性であり、紅郎は異性のドナーという珍しい例だった。今でも彼女の家族とは実の家族のような交流がある。