酒よ、彼の望みの悦びよ凛とした横顔、綺麗な形の鼻先、長い睫毛、血色のよい唇。どれも自分にはないものだと、酔いが回り始めた頃に郭嘉はそう思った。己のことを醜いと感じたことはないし寧ろ顔面の良さは自負しているが、彼とは少々毛色が違う。
手を伸ばせば、少し体を傾ければ触れられる距離にいる。荀彧のその美しい横顔を肴に酒を飲めばいつもの酒もとびきりの美酒に変わるようだった。甘くとろりと口に入り、だけど喉から落ちるときには辛みが襲ってきて喉を焼く。じんわりと食道を通るのが分かる。心地いい。なんとも心地いいのにどこか物足りなくて、わざと音を立てて杯を置いた。
「ほら。そんなに飲むからですよ」
「ん……何が?」
「もう手元が覚束ないのでしょう。貴方の酒好きは理解していますが決して強い訳ではないのですからね……」
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