恋の売り込みグラウンドの周りをぐるりと囲むように人だかりが出来ている。一見すると男子生徒ばかりだが、ちらほらと女子の姿も見える。思わず足が向いてしまうのも仕方がないと首に垂れる汗を拭いながら郭嘉は目を細めフェンスの向こう側へ視線を投げた。
バッターボックスに立つ彼に皆、夢中なのだろう。黄色い声援というよりもどちらかと言えば男子たちの雄叫びにも近い歓声が上がる様子はまさに野球場のようで、この学園にしては少々珍しい光景だった。
熱い応援、人混み、暑さに混じる制汗剤の匂い。一陣だけ吹く風が何よりも心地いい。
運動部に所属しておきながら、実はそれほど球技には興味がない。テニスは好きだけれど趣味程度の体力とテクニックしか持ち合わせていないし対戦相手に失礼のない最低限のルールしか把握していない。だからどこの部が強いとかどこの部が全国大会に出場したとか、その辺りにはてんで疎かった。
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