わたしの胃の中に蝶々膝裏が熱い。仄かに体に残る気怠さと喉の渇きが荀彧を覚醒させた。部屋に差し込む日の様子からしてまだ夜が明けたばかりなのだろう。冷たい空気の匂いを感じる。
共寝をするのには少々手狭な寝台のせいで体が軋んだ。自分でさえこうなのだから相手はもっと疲労が溜まっているに違いない。しばらくは起こさない方が良いだろうかと荀彧はそっと隣へ顔を向けて眠る彼の様子を窺った。ひどく静かだ。背をこちらに向けて眠る彼は微動だしない。
一旦名前を呼ぼうとして口を開くが、すぐに閉じた。起こすべきではないと今決めたのだからこちらも静寂を貫くべきだろう。
けれどもあまりにも静かで、そう思うと途端に不安に襲われた。呼吸はしているのか、脈打ってはいるのか。一旦思考がそちらへ向いてしまうともう戻れない。
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