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    浬-かいり-

    @Kairi_HLSY

    ガルパ⇒ハロハピの愛され末っ子な奥沢が好き。奥沢右固定。主食はかおみさ。
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    はぐみさ

    #ガルパ
    galpa
    #はぐみさ

    スタートライン「はぐみね、みーくんと一緒にいると、この辺がポカポカーってして、すごくあったかい気持ちになるんだよ。これがきっと恋って言うんだよね」


     いつになく真剣な眼差しから、目を逸らせない。頰を赤く染めたはぐみが、彼女以上に顔を真っ赤にしている美咲へと。一歩、詰め寄って。


    「みーくん、大好き。はぐみと恋人になってくれますか?」


     はぐみの一世一代の告白に美咲が頷いたのが、一ヶ月ほど前のことである。



     その日はバンド練習日だった。放課後に集まった為あまり時間は長くとれず、あっという間にスタジオの使用時間は終わりを迎えた。こころはまだ元気が有り余っているようで、片付けが終了しても動き回っている。


    「まだまだ物足りないわ! 今からみんなで楽しいことを探しに行かない?」

    「いや、もう外暗くなるし……。また今度にしようよ」


     苦笑いをする美咲に、こころは別段不満げな様子をする訳でもなく、「それもそうね!」と頷いた。荷物を手早くまとめて、「じゃあ帰りましょ!」とこころが号令をかける。花音と薫もそれに頷く中、珍しく首を振ったのははぐみだった。


    「あっ、今日はね、はぐみはみーくんと帰るよ!」

    「……? いつも一緒に帰ってるじゃない?」

    「うう〜、そうなんだけど、そうじゃなくて……!」


     不思議そうな顔のこころに、はぐみは眉を下げて困った顔をする。続きの言葉を考えあぐねているようで、視線をきょろきょろと彷徨わせながら指をもじもじと弄る。その間に、こころが同じように困った顔をした美咲の手を取って。「ほら、一緒に帰りましょ!」と笑うと、


    「みーくんは! はぐみと帰るの! はぐみのみーくんだからダメーーーーッッ!!」


     そんな風に大声を上げた。必死な声色と顔に、顔を真っ赤にして呆気にとられる美咲の手を取って、ばたばたと慌ただしく二人がスタジオを出て行く。首を傾げるこころの後ろで、何かを察したらしい三年生二人が顔を赤く染めていた。




    「……ごめんね、みーくん。はぐみ、うまく言えなくて……」

    「あー、大丈夫。まだ誰にもあたし達のこと言ってないし、仕方ないって」


     並んで夜道を歩きながら、はぐみはシュンと肩を落とす。そのしょんぼりした様子に、美咲は苦笑いをしてみせた。
     まだ付き合って一ヶ月。話し出すきっかけをはぐみも美咲も、まだ掴めずにいた。


    「今日はみーくんと一緒に帰るって約束してたから、はぐみ楽しみで……。こころん怒っちゃったかな」

    「こころはそんなことで怒るような子じゃないから大丈夫だよ。それに……、」


     二人で帰るの楽しみにしてたのは、あたしもだし。顔を赤くしながらぼそりと零した言葉は消えてしまいそうな程小さかったが、はぐみにはバッチリ聞こえていたらしい。しょぼんとしていた顔がぱぁ、と晴れたように明るくなる。
     嬉しそうなはぐみの顔と対照的に、美咲は怪訝な顔をしてみせた。


    「……で、はぐみは何してんの」


     歩道を歩く美咲の外側で、はぐみが両手を広げて横向きに歩いている。あれ、カニと一緒に帰ってるんだっけ、あたし。すれ違う車の中の人が、興味深げに此方を見ていたのが目に入った。あたしが恥ずかしいんだけど。
     

    「はぐみがね、車道の方を歩くの! みーくんが車に轢かれないように!」


     得意顔のはぐみが元気いっぱいに答える。成る程、車から守ってくれてる訳ね。納得したのも束の間、今度はやたら周りをキョロキョロしだした。後ろを頻りに気にしたり、歩く美咲の周りをうろうろしてみたり。


    「……今度はなに」

    「暗いから、みーくんが怖い人に襲われないようにしてるの! 大丈夫だよ! みーくんは、はぐみが守るから!」

    「……ぷっ、」


     必死に自分を守ろうとしてくれるはぐみの気持ちと、奇行とも言える行動が噛み合ってなくて思わず吹き出してしまう。自分は真剣なのに。頰を膨らませるはぐみの頭を撫でて、微笑む。 

    「もー! みーくん!? はぐみはちゃんと真剣に、みーくんを守ろうとしてるんだよ!?」

    「分かってる分かってる。……けどさ、はぐみはあたしのボディーガードじゃないでしょ。普通でいいよ」


     どこか嬉しそうな笑顔の美咲に、はぐみは首を傾げる。彼女が自分を守ろうとしてくれる。恋人だと意識してくれている。その気持ちだけで、美咲は嬉しかったから。


    「そんなエスコートしようとしなくて大丈夫だよ。薫さんじゃあるまいし」


     呆れ顔で笑う美咲に、はぐみはまだ不満げに眉を寄せていた。じゃあどうすればいいんだろう。どうすれば恋人らしくできるんだろう。目の前で楽しそうに笑う彼女を満足させてあげられるんだろう。
     考えていたはぐみに、美咲が詰め寄る。顔を赤くして、視線を彷徨わせてから、


    「……こ、恋人ってさ。対等なもんでしょ」


     小さく、そう呟いた。


    「対等……対等……! うん、そうだよね……!」


     言われた言葉を反芻させて。噛み締めるように繰り返してから、何度も頷く。嬉しそうな顔は、笑顔を隠しきれていない。


    「じゃあ、何か対等な恋人らしいことしよう!」

    「えっ、」


     はぐみの提案に、美咲が固まる。期待いっぱいのきらきら輝く夕焼けと同じ色の瞳が、美咲を真っ直ぐに見つめていた。その視線から目を逸らせない美咲が、赤い顔のまま手を差し出して。


    「……じゃあ、あの、て、……手、繋いでよ」


     恋人の可愛らしい提案に、はぐみも釣られて顔を赤くした。


    「このまま帰るのはなんか勿体ない気がするからさ。はぐみんち寄ってコロッケ食べていい?」

    「それいいー! はぐみお腹空いちゃったぁ」


     すっかり日の落ちた空は、オレンジから紺色へと変わっていく空の下で、恋人としてまだ踏み出したばかりの二人が、手を繋いでゆっくりと帰路に着く。
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