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    浬-かいり-

    @Kairi_HLSY

    ガルパ⇒ハロハピの愛され末っ子な奥沢が好き。奥沢右固定。主食はかおみさ。
    プロセカ⇒今のところみずえなだけの予定。

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    浬-かいり-

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    かおみさ(※モブ男子視点)

    #ガルパ
    galpa
    #かおみさ
    loftyPeak

    こちら温めますか 今日も厳しい部活を終えて、学校を出る。日課となっている買い食いの為に、コンビニへ立ち寄ることにしよう。夕飯前だけれど、運動部の男子高校生の空腹は家までもってはくれない。
     いつもだったら通学路の途中にあるコンビニに立ち寄るのだけど。最近は少しだけ遠回りして、別のコンビニへ行っていた。


    「いらっしゃいませー」


     自動ドアが開くと、レジに居たツインテールの女の子が挨拶してくれたので軽く会釈する。今の気分はホットスナックってもう決まっていたけれど、俺は店内を物色する振りをして辺りを見渡す。


    (……いた)


     “彼女”は品出しの最中だった。ケースの乗ったカートを引きながら、棚に弁当を並べている。俺は棚に隠れながら、こっそりとその様子を窺った。

     肩まで伸びた黒髪にピンク色のヘアピンが特徴のその子は、このコンビニでバイトをしている女の子だ。名前は奥沢さん。(名札に書いてあった)
     歳は多分、俺と同じくらい。なんとなく遠回りして立ち寄ったコンビニのレジで見かけ、それ以来こうして週に3〜4度、彼女のシフトの日を狙って通っている。
     ただし俺が声を掛けられた試しは一度も無い。声を掛けて連絡先でも聞きたい気持ちは山々だが、なかなか一歩が踏み出せない。


    (でも……今日こそは、)


     今日こそは声を掛けてもいいんじゃないだろうか。というか、そうしないとそろそろ通報されそうな気がする。レジのツインテールの子、めっちゃこっち見てるし。誤魔化しのように愛想笑いを浮かべて会釈したら、同じような愛想笑いが返ってきた。俺が言うのもなんだけど、誤魔化すの下手くそか。

     視線をレジから弁当の棚へ戻す。奥沢さんは下の棚を整理している最中だった。低い位置の棚を整理すれば当然、しゃがんだ姿勢になる。
     今日の奥沢さんはショートパンツだ。コンビニ店員って下に履くものは特に規定無いのだろうか。これについてあんまり細かくコメントしてしまうと俺が変態になってしまので割愛するが――そもそもコメント出来る程凝視する度胸も無いが――これは純粋な男子高校生にはなかなか刺激が強過ぎる。今は夕方だ。これ仕事帰りのオッサンとか今から来るんじゃなかろうか。大丈夫なのか。アッ待って違うんですツインテールの子。俺は不審者じゃないです。

     今は品出し中だから、それが終わったら声を掛けよう。そんな風にタイミングを窺っていたのだが――、


    「美咲」


     その機会は、見知らぬ声に遮られたのだった。俺と奥沢さんの間に立ち塞がるようにしてやって来たのは、女の人だった。女性にしては低めの声で、俺と変わらないくらいの高い身長。女性……というより、女の子だと判別出来たのは、彼女が女子校の制服を着ていたからだ。


    「あれ、薫さん!? なんで居るの!?」

    「美咲が仕事する儚い姿を是非この目で見ようと思ってね」


     どうやら知り合いみたいだ。奥沢さんの口調からするに、かなり親しい間柄に見える。あの制服は羽丘……だったか。奥沢さんも、羽丘の生徒なのだろうか。


    「別に……見てもなんも面白いもんじゃないでしょ」

    「そんなことないさ。品を丁重に扱うその鮮やかな手付き……! 嗚呼、儚い……!」

    「あー! もう! 恥ずかしいからそういうのやめてってば!」


     真っ赤な顔をした奥沢さんが、“カオルさん”の顔を手で押し退ける。親しいのは分かったのだけど、大分距離が近くないだろうか? どういう関係性なんだろう。


    「美咲は今日何時までなんだい? 送っていくよ」

    「いやいや、あたしバイト終わるの夜ですよ。いいですって」

    「なら待っていよう。そこで待っていてもいいかい?」


     指さしたのはイートインのスペース。店内で買ったものは此処で自由に食べられる。俺も何度も世話になった。というか、今日も世話になる予定だった。
     奥沢さんは指差した先を見ると、あからさまに嫌そうな顔をして。


    「薫さんがそこに居たら悪目立ちすんじゃん……」

    「そうかい?」


     首を傾げるカオルさんに、奥沢さんが力強く頷く。レジではツインテールの子がぶんぶん頷いてた。こっちも知り合いか。
     いいから帰って! と奥沢さんがカオルさんの背中を押して出入り口へと追いやる。だがめげない彼女は、陳列してあったお菓子を手に取ると微笑んだ。


    「おっと。じゃあ帰る前にお会計をお願いしてもいいかな、美咲?」

    「……はぁ」


     溜息を吐いてレジへ向かっていく奥沢さん。俺もそろそろ出ようと、ツインテールの子のレジへと向かう。今日はなんだかイートインを使う気分にはなれない。フランクフルトを一つ注文しながら、隣のレジを盗み見た。


    「ところで美咲、その格好は寒くないかい?」

    「そうかな? 動いてると結構暑いんだよね」

    「ともあれ、最近は色々と物騒だからね。美咲も気を付けた方がいい」

    「はぁ……? 急に話飛びましたね……?」


     飛んでない。たぶん話は飛んでないぞ奥沢さん。心の中でそうツッコミを入れていたら、カオルさんと目が合った。
     合った、というか。これは睨まれている。


    (やっべ……!)


     俺の視線がバレた? 慌てて視線を逸らした先、


    「……ありがとうございましたー」


     レジ袋を手渡してきたツインテールの子が、先程とは違う哀れみに満ちたような目を向けていた。やめてくれ。
     店を出る直前、再び品出しに戻ろうとする奥沢さんをちらりと見やる。ほんのり顔を赤くしながら、眉を下げて店の外に手を振っているのを目にしてしまって。俺はもうこのコンビニに来ることはないだろうな、と確信するのだった。
     店の外に吹く秋風は、虚無になった心には冷た過ぎた。
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