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    yukiji_29

    @yukiji_29
    倉庫用。
    ほぼアスカガ。
    挫折した文章やら年齢制限のものやら。

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    yukiji_29

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    種自由後①の作業進捗の続き〜!!(まだ書き終わってない)
    添削すらできてなくて、アップできないけど
    まだこれで話の全体5か6分の1くらい😂
    終わるんだろうか…笑

    タイトル未定・種自由後② アスカガ「アスハ代表!!」

    「騒ぐな!私は無事だ。こいつらの確保を、早く!」

    カガリは満身創痍の体を引きずりながら、先程自分がかけた絞め技で意識を落とした相手から離れる。だらりと垂れた左腕からは、失神して地面に寝転がっている相手によってナイフで切られ、切り口から血が流れている。その血は腕を伝って指先に落ち、地面へ赤い斑点を作っていた。止血するように空いている右手で出血部分を圧迫して、カガリは走り寄ってきた自国の軍人達に保護される。
    いくら軍事訓練を受けていたとはいえ、流石に無傷という訳にはいかず、顔を青くする部下たちに精一杯の笑顔を貼り付けて落ち着くように諭した。

    「っつ!!」

    手当の為に支えられた体は、その揺れで腕とは別に違う箇所に鋭い痛みが走る。

    (これは、肋骨が数本イッてるかもな…)

    おまけに肩も軽く脱臼している始末。額に油汗をかきながらカガリはそのまま兵達に運ばれ、軍病院へと運ばれていった。



    オーブ連合首長国、行政府。その廊下を美丈夫が鬼気迫る表情で歩いていた。
    オーブ軍所属、アスラン・ザラ一佐。
    現在はターミナル出向の任期を終え、その身は再びオーブ本国に据え平和のためにオーブの軍事外交面で昼夜走り回っている。ターミナル出向の任務はすでに満了しているが、その身はオーブ本国に戻っても変わらずコンパスやプラント、地球連合に赴く長期任務に就く事が多かった。
    オーブを不在にする事の方が多いが、それでもその優れた容姿故に恋愛面で噂の的になる事は多々ある。アスランはオーブ軍内でも指折りの人物で、彼と初めて会った者達は大抵、顔が整っているなと感想を抱く程、見目の良い風貌を持っていたからだ。そしてその美丈夫が、僅かばかりピリついた表情で歩いている。
    美人の真顔は怖いと言うが、それを絵に描いたような状況で、すれ違う官僚達はそのピリついた空気感に触らぬ神に祟りなしと言うように道を開け、脇へと寄る。
    そんな事も気付かず、腹の底にふつふつ沸く炎を外に出さないようにアスランは先を進み行政府を出た。
    ーー目指す先はアスハ邸、現在行政府を不在にしているカガリの元へ。


    アスハ家はアカツキ島にある屋敷アスハ本邸とは別に、オーブ国内にいくつもの別邸を構えている。政府施設が置かれているオーブ首都、オロファ島にあるアスハ邸もその中にある別邸の一つだ。休暇時以外の殆どをオロファ島にあるこのアスハ邸で過ごすカガリは、ベッドで公務の資料を捲っていた。
    無音の部屋で書類に目を通していると外からコンコンと部屋の扉がノックされた。

    「カガリ様、アスラン様がお戻りです」

    部屋の中にいるカガリにそう声をかけるのは、この屋敷に勤めるメイドのものだ。アスランの帰国を知らせるそれにカガリは目を瞬かせる。カガリの記憶ではアスランの帰国まであと十日程あると把握していたが。
    間が悪い、とカガリは歯噛みした。カガリが肋にヒビを入れ、軽い脱臼も起こし怪我を負ったあのテロ事件をアスランは知らない。トーヤや側近達、そして軍内でも限られた人数しか知らず、カガリは更に保険をかけて箝口令まで敷いた。これがアスランにバレれば面倒くさい事になるのは、火を見るより明らかだ。
    あれからまだ三週間と少ししか経っておらず、肩の脱臼は殆ど完治に近い状態だが肋の方がまだ完治に時間を要する。出来れば怪我が全て治ってからアスランを見送った時と同じように、初めから何も無かったかの如くアスランを出迎えたかったのだが。
    予想外の早期帰国に本来であれば嬉しい所だが、今回ばかりはアスランの優秀具合を恨んだ。
    とにかく怪我を悟られないようにしようと努めて冷静に声を出し、カガリは扉の向こうへ返事をした。

    「入っていいぞ」

    「アスハ代表、失礼します」

    オーブ軍のトリコロールカラーに身を包んだアスランが部屋に入ってきた。

    「ご苦労だったな、ザラ一佐」

    カガリとアスランは公私を分ける為に公の場では互いの役職を付けて呼び、プライベートでは名前で呼ぶ事を徹底していた。
    役職を付けた名で呼ばれたので、カガリは代表としての顔つきでアスランを出迎える。アスランはカガリのいるベッドに歩み寄ってきて、手に持つ資料を差し出した。

    「…こちらが今回の任務の報告書類です」

    「ありがとう、貰おう」

    書類を受け取り、カガリはその紙を捲る。綴られた文字に目を通して内容を把握すれば、いくつか議会に上げ、議論が必要な項目があった。すぐに決裁はおろせそうにないので、カガリはその旨をアスランに告げる。

    「議会で検討が必要なものがある。しばらくこの書類は預からせてくれ、ザラ一佐。長期任務で疲れただろう、軍で報告を済ませたら今日は休むといい。軍には私から伝えておく」

    そう言ってカガリはアスランを部屋から下がらせようとした。怪我がバレる可能性を減らしたくて、今はなるべく接する時間を少なくしたい。
    だがアスランはそこから動き出すような仕草は無く、ジッとカガリを見つめている。

    「…どうした、一佐?」

    「体調が良くないと聞いた」

    前置きなく突然切り出された自分に関しての話題に、ドキリと緊張でカガリの心臓は一度跳ねる。悟られぬようにいつもの調子を意識しながらカガリは口を開いた。

    「あぁ…その件か。少し前に調子を崩してな、今はもう元気だ。念の為もう少し養生しろと言われて家で公務をしてる」

    書類に目を通すくらいなら、横になっていてもできるからなとカガリは本来の理由を隠して笑った。カガリが行政府に不在の理由は今回、表向きには体調不良となっておりその様に振る舞う。
    そう告げればアスランは眉間に皺を寄せ、心なしか部屋の室温も下がった気がした。
    急に下がった機嫌を見て、やはり偽りの理由だとしても黙っていて後から知らされる事自体がそもそも良くなかったか。しかし本当の事を言えば大目玉を食う事は分かっているので、ここは隠し事をしている罰として甘んじて受け入れてようとカガリは決める。

    「どうして嘘をつくんだ」

    「え……?」

    傷ついたような顔をするアスランにカガリは驚いた。どうしたんだと手を伸ばそうとすればその手を掴まれ、そのままドサリとベッドに倒される。後ろはベッド、目の前には自分を組み伏せるアスラン。カガリが驚いている間にアスランの手が服の裾から侵入してきた。
    しまったと気づいた時にはすでにあとの祭り。アスランの手が肋骨骨折の治療に使っているコルセットに触れていた。やっぱりと耳元で呟かれた言葉にカガリは一度白旗を振る選択肢しかなかった。

    「どうして隠そうとする!ひどい怪我じゃないか、どうしてテロの前線なんかに…」

    怪我や傷は深くないのか、大丈夫なのかとそう苦しそうに吐き出すアスランにカガリはそれよりアスランが放った別の言葉に目を見開く。なぜテロ事件の事をアスランが知っているのか、あれは箝口令を厳しく敷いて関わった者以外に情報が漏れぬよう情報統制を行ったはず。しかもその情報統制の役割を担ったのは、オーブ連合首長国を治める五大氏族、その一角を担うキオウ家だ。キオウ家は代々オーブの外交面を支えており、それは公的なものから表には出せない裏のものまで多岐に渡る。長年をかけて培われたそのノウハウと管理するセキュリティは、ちょっとやそっとの事で暴かれるものではない。それを、なぜ。

    「MS戦もあったと記録を見た。なぜ俺を呼び戻さない、そうしたら君がこんな傷…」

    負う必要など無かったのに、と悔いるように言う。

    「何で黙っていた、説明してくれ」

    自分に黙って危険な場所へ飛び込んで行ったカガリ。危険と知っていて飛び込んだのだ、それ相応の理由があるんだろう?とアスランは尋ねる。
    記録ではアスランが長期の軍事外交任務に入った翌日、まるで不在を見計らったように火蓋が切られた事件。そしてこの事件に気付かず予定通りの任期で任務を終わらせてオーブへ帰国をしていたら、アスランは怪我を完治させたカガリに『何事もなかった』ように出迎えられ、呑気に再会を味わっていただろう。
    話して欲しいとアスランは求めるが、カガリはそれを口にする気は一切ない。墓場まで持っていく秘密と決めたからだ。

    「アスランの頼みでも言えないんだ」

    すまないとカガリは眉尻を下げて謝る。そして聞き分けてほしいと。
    そう言われれば、自分の及ばぬ場所で国家元首としての公表出来ぬ何かがあるのだろうと思い、いつものアスランなら引き下がった。だが今回だけは見逃せない。カガリが命を晒されるような場所に居なかったから引き下がっていただけで、そうでないのなら話は別だ。そして彼女と恋人関係である立場、アスラン・ザラの一個人としても、この件は有耶無耶にする事はできない。

    「カガリ」

    名を一度だけ紡いで、拒否を示す。
    そうして根比べをしていれば、ボーンと時計が時刻を知らせる音を鳴らした。
    軍で今回の任務報告を上げる仕事がまだ残っている。アスランは短く溜め息を吐いてカガリを抱き起こし、乗り上げていたベッドから降りた。

    「…帰ってきたら、この件は話し合うからな」

    心にしこりを残したような顔で、アスランはそう言ってカガリの自室を出て行った。

    「ごめんな、アスラン…」

    広く大きな部屋で小さく呟かれた謝罪は、誰にも聞かれる事もなく消えていった。
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