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    yukiji_29

    @yukiji_29
    倉庫用。
    ほぼアスカガ。
    挫折した文章やら年齢制限のものやら。

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    yukiji_29

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    アスカガ本に収録予定の新作サンプルです!
    種無印後の話(双子+アスカガ)
    キラとカガリの出自に触れた話と、自分の生まれた意味に人知れず苦悩するカガリの話。
    アスランがアレックスとして生きる決意をした所までを画いています。

    サンプル①C.E.71年。
    地球・プラント間で勃発した全面戦争は、両者一歩も譲らぬまま泥沼戦争へと突入し、やがて民族浄化を目的とする絶滅戦争へと発展していった。その状況を憂いた中立派・非戦派の者達で構成された三隻同盟の働きと、ブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエル氏とプラント最高評議会議長パトリック・ザラの死により戦争は停戦。その後アークエンジェルとクサナギは、エターナルを宇宙に残しオーブへと降下した。
    オーブはカガリの叔父、ホムラ代表の指揮下で連邦から主権を取り戻し、荒れた国内の復興に慌ただしい日々を送っていた。
    カガリもまた、アスハ家の人間として自国を立て直す為に各所を奔走する動きを連日送っている。
    オーブは連合の占領下に置かれた期間に国力を著しく低下させ、その影響で国内は逼迫していた。そしてTVで流れるオーブの外の世界も、未だ混迷を続けている。
    ーー後の歴史に、この期間は薄氷の平和の時間と呼ばれる事となる。

    「カガリ」

    TVから流れる映像を沈痛した面持ちで見つめるカガリに、後ろからキサカの声がかかる。振り向けば、ぽんと一枚の封筒を手渡された。

    「届いていたぞ」

    なんだと思いその封筒の宛先を見て、カガリは一瞬息を詰める。一難去ってまた一難と言うべきか、溜め息に似た呼吸を一つ吐いた。



    「キラ、お夕飯までのお時間どういたしますか?」

    緑が生い茂る豊かな海岸線。その側に立つマルキオが運営する小さな孤児院に、キラはラクスやアスランと共に身を寄せていた。
    太陽の光で反射する水面をぼんやりと見つめていれば、波打つピンクの淡い髪がキラの視界いっぱいに広がる。キラの心の柔らかい部分を預けている少女が自分の隣で膝を折り、ゆっくりとした動作でキラの顔を覗き込んできた。

    「ラクス…」

    呟くように少女の名前を呼んで、返事の代わりに彼女の笑みが深くなる。

    「ここで、ゆっくりしてるよ」

    あまり感情の乗っていない声が返ってきて、分かりましたとラクスは頷いた。

    「では私、アスランと一緒に子供達を連れて外へ遊んでまいりますわ。お夕飯を準備する時間までには帰ってきますね」

    「うん。気をつけて」

    立ち上がってキラの側を離れ、ラクスは子供達の手を引き浜辺へと歩いて行く。アスランも子供達にその手を引かれラクスの後に続いた。心配そうにこちらに視線を向ける友に、ゆっくり手を振り送り出す。そうして静かになった孤児院に海の波音だけが届いて、先程まで凪いでいたキラの心に一つ波紋を落とした。
    蘇るクルーゼとの舌戦、守れなかったもの、奪ってしまった命、自身の出生、そして話したかった事を話せぬまま帰らぬ人となってしまったフレイ。キラは俯いてギュウっと目を瞑り歯を食いしばった。キラの心に大きく影を落としたあの大戦は、今は世捨て人のように暮らす彼に何故を問い続けている。その問いかけの答えは見つからぬままキラは呼吸をして、物を食べ、各国で燻る戦火を見て、己は何であり、どうあるべきで、どうしたくて、何をすれば良いのか日々自問自答を繰り返していた。

    「キラ」

    視線を落とし定められぬ答えに思考を巡らせていれば、それを遮るように名前を呼ばれ顔を上げる。
    海風に揺れる金の髪と琥珀色の瞳。そこに立っていたのはキラの大切な仲間であり、そしてきょうだいであるカガリだった。
    いつもの溌剌とした雰囲気は息を潜め、何かあったのかとキラは椅子から立ち上がり歩み寄る。

    「どうしたの?カガリ」

    相手が話を打ち明けやすいようにキラはゆっくり話しかける。

    「これ…」

    カガリは左手で持っていた白い封筒をキラに差し出す。何だろうと受け取りカガリを見た。

    「持ってくるのが遅くなってごめん、結果が出た。私的鑑定で検査してもらってる」

    それは何がと問うほどキラも鈍くはない。
    宇宙からオーブ帰国してすぐ、キラとカガリは公的機関へDNA鑑定の依頼を出していた。その結果がカガリの手元に数日前に届いたのだ。
    戦後の復興でカガリは多忙を極めていた為、検査結果をキラに届けるまで日にちがかかってしまった。

    「カガリは…もう見たの?」

    「いや。お前と一緒に見ようと思って、封は開けていない」

    「…そっか」

    こっちとキラはカガリを呼んで、先程座っていた椅子の隣に案内して座らせる。カガリが腰を落ち着けたのを確認して、開けるよと声をかけキラは封を切った。
    『私的DNA兄弟・姉妹鑑定結果報告書』
    そう書かれた紙が表紙に置かれ、透明なクリアファイルに数枚の書類が一緒に綴られていた。クリアファイルから取り出し、二人は表紙を捲って次の紙の文書に目を走らせる。
    『キラ・ヤマト、サンプルID×××ー××××。カガリ・ユラ・アスハ、サンプルID×××ー××××。結果、兄弟/姉妹関係であることが極めて高い結果となりました事をお知らせいたします。』
    そう簡潔に記された文字に、二人は事実を改めて飲み込むように見つめる。DNA鑑定の正確性はほぼ100%と言われており、ここで今キラとカガリは科学的にもきょうだいであることが立証された。

    「予想通りの結果だったな」

    「え?」

    二人して覗き込んでいた書類からカガリは姿勢を起こし、少し苦笑いする。

    「お父様から渡された写真とキラと少佐がメンデルから持ち帰ったデータを見て分かってはいたけれど、結果を見るまで夢心地だったんだ。けど、いざ見たらなんか…拍子抜けだ」

    そう肩を竦めるカガリにキラも同意した。血縁関係かもしれないという事実が、二人のテーブルに上がってから心の準備をするまでに随分期間があった。当時はだいぶ動揺したが、二人の関係性が急に変わる訳でもなくキラはカガリをカガリとして、カガリはキラをキラとして変わらず接し合っている。ふとキラは思い付き、カガリと科学的に立証された片割れの名を呼んだ。

    「僕は、法的立ち位置は今後どうしたらいいかな?」

    お互い一人っ子だったキラとカガリは、きょうだいが出来たことは素直に嬉しいが今後のことも同時に考えなければならなかった。
    キラは良いとして、問題はカガリだ。
    オーブの五大氏族に名を連ねるアスハ家の人間で、そしてオーブの姫でもある。カガリがあまりにもフランクで人との壁が無く忘れがちだが、ゆくゆくは代表首長に立つ身であり、やんごとなき地位にいる身分の人。今まで通りを貫くのか、それとも血縁関係や構成を現在提出している内容に手を加えるのか。たかが一枚の紙切れ、されど一枚の紙切れ。お互いの人生が大きく変わるかもしれない事案を、キラとカガリは話し合わねばならなかった。
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