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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    祓本
    酔った傑とほだされている悟。桜の時季は一緒にいたし、素面の時に言えよってヤツ。まあ、甘い話が好きなので(笑)
    pixivに展示した短編集より。

    #夏五
    GeGo

    【薄桜】 花びら 自動制御で空調は効くけれど、僅かに開けた窓から夜の香りと共に束の間だけ喧騒が漂った。予想通りの発生元だとすれば、そろそろ上がってくるだろう。そう踏めば、違わずスマホが震えた。ただ、画面には傑ではなく、悠仁の名が表記されている。まあ、傑だけならスマホは鳴らないよな。
    「おつかれ」
    「おつかれっす。すいません、夏油さん、飲ませ過ぎちゃいました」
    「いいよ、いいよ。悠仁が飲ませたわけじゃないだろうし。今、開けるね」
     喋りながらドアを開けると、東堂に左肩を半分抱き抱えられるようにして連れられた傑がいた。隣には傑の荷物を持った悠仁が申し訳なさそうな表情で、スマホを手に立っている。
    「あっ、さとるぅ~~」
     ふにゃりと笑うと、組まれた肩を振り払うようにして、危なげな足取りで俺に向かって両腕を伸ばす。慌てて近付くとそのまま覆い被さるように抱き着かれた。たたらを踏むようにして、酒と煙草の匂いを纏った酔っ払いを支える。
    「さとるだぁ」
    「はいはい。さとるだよ。おかえり」
     首筋に顔を埋めるようにして懐かれて、ハーフアップにした艶やかな黒髪に指を絡ませわしゃわしゃと撫でる。甘やかしているのは、百も承知だ。張り付いたままの傑はそのままに、肩越しに手間を掛けた後輩に礼を言う。
    「悠仁と東堂、傑が迷惑かけてごめんね。お茶でも飲んでく」
    「迷惑なんて。いつも面倒見て貰ってるんで」
     一旦言葉を切った悠仁は隣に並ぶ東堂とアイコンタクトを取ると頷いた。
    「今日は夏油さんもお疲れだし、帰ります。でも、こんなに酔うのは珍しいっすね」
    「五条、悪いことは言わない。この時期だけは夏油と一緒にいた方がいい。俺らは兎も角、先輩たちは多少の無理も押し通せるだけの力があるんだから」
    「俺としたら年中傑と一緒にいたいけど、冥さんの仕事の取ってき方、エグいからね」
     傑の肩をぽんぽんとあやしながら冗談半分に嘆くと、珍しく東堂が渋い顔をしてみせた。
    「ほろ酔いのころは、悟がね、悟はね、って五条さんの話ばかりしながら楽しそうだったんです。それでも途中で寂しくなったみたいで。さとるすきだよ~って俺らに間違えて言ってるから、申し訳なくて」
     頭を搔きながら首を傾げた悠仁に、ごめんねと手刀を切っても、抱きかかえた体は剥がさないのだから、俺も大概だとわかってはいるだろう。
    「先輩たち、仲良しですよね」
     そう言って朗らかに笑ってくれる気のいい悠仁たちを見送ると、傑を部屋に招き入れた。
     
    「さとるぅ~」
     にこにことご機嫌でソファに腰掛けて、俺の腰を抱いたまま離さない傑は大型犬のようで、ぴんっと立った耳と大きく揺れる尻尾が見えるようだ。
    「傑がこんなに酔ってるの、珍しいな」
     もう好きにさせればいいやと、懐かれるままに、ぽやぽやとご機嫌な頭や肩を撫でていく。
    「だってさ、今生もその前も、さとると出逢ったのって、桜の時期だよ」
     そう。桜に彩られた学校で、どちらの生でも出逢った。墨絵に桜だけ淡く色付けされたような、そんな掛け軸画のような、凛とした美しさと強さを兼ね備えたような雰囲気を纏った男が、にこやかに微笑んだのだ。
    「だからさ、桜の時期は嬉しいじゃない。それなのに今日は花見なのに、悟居ないし」
     拗ねたような傑がかわいくてあやしながら、無駄だと思いつつ主張はしておく。
    「今日はピンの仕事入ってたし、傑が夜の酔っ払いもいる公園に、途中からひとりで参加なんて、危ないから家で待ってろって言ったんだろ」
    「そりゃね、私が迎えに行くんじゃなきゃ、行かせられないし」
    「傑、過保護過ぎない」
    「悟が警戒しなさ過ぎるんだよ」
    「女の子じゃないんだから」
    「そんなの知ってるよ。私の悟に指先でも触れる奴がいたら、許さない」
     ぷんすか、そんな表現が似合いそうな、剣呑ではなく、子どもの独占欲に近いものを感じられて口元が緩んでしまう。
    「ふふ、さとる、かあぁいぃ」
    「傑もかわいいよ」
    「さとる、すき」
     マシュマロのように甘くやわらかな声が、耳から溶かすようにとろりと流し込まれる。その度に、とくん、と跳ねる心臓を、傑はしらない。俺がどんなに嬉しいのか。それでもそんな思いを押し殺して、あたり前のような顔で受け止める。
    「しってるよ」
    「さとる」
     潜めた声と共に寄せられた顔に、反射的に目を閉じた。それを見ていたかのように、唇に優しくてあたたかな感触が重なり合う。何も言わずに目を閉じたまま、何度も触れるだけのキスを繰り返す。その度に跳ねる心臓を、何とかして欲しい。
    「さとる、すき。さとるは」
    「……。 うん」
    「うん。うれしい。さとる、すき」
     するりと大型犬から猫のようにすり寄って大人しくなると、肩に頭を乗せられ重みが、一気に増した。そして静かな寝息が聞こえてきた。そっと膝枕にすれば黒髪にひとひら、桜の花びらが彩を添えていた。
     
     いい加減、素面の時に告白しろよ。
     キスまでして、憶えてないとか、今日こそ言わせない。
     俺から告白なんて、するもんか。
     起きたら傑から好きって言わせてやるんだ。
     だから、寝落ちなんてしてないで、早く起きてよ、傑。
     そう思いながら、とくとくと速まる心音を宥めすかして、俺から唇を合せた。

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    Replies from the creator

    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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