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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    夏五
    教師×教師の平和軸
    支部に掲載中の『巡る季節 巡る想い』から9月のお話。
    真希さん視点で、戦闘訓練からの休憩時間のワンシーン。

    #夏五
    GeGo

    【長月】 照りつける陽射しはまだ暑く秋なんて名ばかりで、じっとりと汗をかけば手が滑る。僅かに気が逸れたと自覚する前に、左肩に受けた打撃を流しきれずに不様に転がった。
    「ちっいっ」
    「重心は下げて。瞬発力を鍛えた方が堅実だね」
      淡々とわかりきった事を告げる様子に、嘲りや侮蔑は入らず、事実だけを伝える。力の差が歴然といる私にもそれだけはわかった。大丈夫かよ、と心配そうな表情で近付いてきたパンダに、ひらりと手を振って大事ないことを合図した。
    「そう簡単には」
    「そうだろうね。積み重ねの鍛練だし。筋トレも大切だけど、体幹を鍛えた方がいいかな」
      強かにうった腰を擦りながら起き上がると、離れて見ていた悟が近づいてきた。木陰から出た途端、きらきらと髪が光を集めて反射して眩しいぐらいだ。見た目も特級なだけある。
    「転がっただけで、何ともなさそうだね、真希。傑相手に善処と言いたいけれど、呪霊相手だとそんな甘いコトも言ってられないからねぇ」
      へらりと笑った口元と言葉はふざけているとしか思えないけれど、それだけではないことは付き合いの中で学んでいる。そう、見た目だけではなかったな。そんな事を思いながら眺めていたら、くるりとこちらに背を向けた。
    「久しぶりに手合わせする、傑」
      えっ
     思わずハモったのは悠仁で瞳を輝かせている辺り単純で、恵はイヤそうな表情を浮かべている。付き合いも長いらしいし、苦い思い出も多々あるのだろう。
      珍しい。
      視線を合わせた、夏油先生には同じように歯が立たない棘は、驚きの表情を浮かべている。
    「そうだね、たまには本気で動いた方がいいし、お願いできるかい」
      これは、みものだ。
      照りつける陽射しも、背中を伝う汗の不快感も、一気に飛んだ。
      相対するふたりは、別段、常と変わらず談笑したままなのに、見ている私たちはぴりりと緊張と警戒が高まる。体術の訓練だから獲物はなく、当然術式も使用せず体ひとつだ。身長はあっても、体の厚みを考えれば、夏油先生に軍配が上がりそうだが、最強の名を冠する悟は伊達じゃない。程なく先ほどの私たちのように、距離を開けて向かいあった。
      微笑を浮かべたまま、睨みあいが続くかと思われたけれど、悟がにやりと三日月形に唇を象ると、それが合図となった。


    「やっぱり、先生たち、バケモノじゃん」
    「しゃけ、しゃけ」
     少しでも盗もうとした技は、目が追えない速さで参考にするには強過ぎた。手を抜いて私たちの相手をしていたのは当たり前で、けれど、それすらも、落ち込む事すらできない闘いを見せられて、ぐうの音も出やしない。
    「少しは勉強になったかな」
     得意満面な悟は息も乱さず、ハイテンションで私たちを見下ろした。ハーフアップにした髪を乱したぐらいで、同じように疲れを見せない夏油先生の背中に寄り掛かるようにして楽しそうなのがムカつくほどだ。
    「せんせー、早過ぎてわからなかったトコあるんですけど」
     はーいと意気良いよく手を挙げた悠仁に、後で聞いてあげるよとひらひらと手を振り返す。
    「さすが暑いし」
    「上着、脱いだ方がよくないですか」
    「おっ、悠仁、そーだね」
     いや、その前に、そのべったりとくっついているのを離れたら、風も抜けていくだろと突っ込みを入れたが、あっさりと無視された。ああ、そうだろうな。
     今度は恵と悠仁、パンダと野薔薇で始めた対戦を見るとはなしに見ていたが、さすがに扱かれた後は暑いし、体に着いた砂埃も気持ちが悪い。先ほどの木陰で談笑し始めた先生たちと少し離れた日陰に身を置いた。
    「悟、後で背中拭いてよ。傷に汗が染みて痛い」
    「えっ。あぁぁ、ごめん」
    「ふふ。いいよ。残してくれた方が嬉しいし」
     ふたりの潜めた声はそれでも風に乗って聞こえてきて、どことなくうっすらと甘く、安いオレンジジュースのようだ。
     夏油先生の黒いTシャツを覗き込むと、束の間、首筋に顔を埋めた悟は身を離した。
    「汗拭きシートぐらい、恵が持ってるでしょ」
     そう言って走り出したところに近寄っていった。生徒の鍛錬中に手を止めさせるなよ。
    「汗拭きシート」
    「あ、真希。サンキュー。ってフローラルな香りとか」
    「私がすると思うか。無香料だよ」
     だよねーって、背後に響く返事に、何気にそれも失礼な気もすると、突っ込みを入れようとしたところで声が掛かった。
    「悟、その言い方は女の子にどうかと思うよ」
    「えー、そう」
     その辺は夏油先生は常識あるんだよな、と珍しいTシャツ姿のふたりを振り返って、目にしてしまった。
     たくし上げた黒いTシャツの下、広い背中に走った数本の赤く長い引っかき傷と、その背中を拭く悟の緩く開いたTシャツの首周りに、散らばる花びらのような鬱血。
     こいつら。
    「職務室にでも戻ってやれよ」
     忠告をしようと思った言葉は、口の中で転がして本人たちには届かない。詳しい事は知らないけれど、ずいぶん昔のこの時期に、大変だったと何となく漏れ聞いてはいるので、見逃す気になった。
     深いため息は、多少の涼を呼ぶ風に溶けて消えていった。
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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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