Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    VAZZY227_

    @VAZZY227_

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    VAZZY227_

    ☆quiet follow

    叔父甥 仙子

    ##まどそし

    「叔父上!紹介するね!この子が小仙子!かわいいでしょ!」
    金光瑤が金凌に霊犬を与えたと聞き様子を見るために江澄は金鱗台を訪れていた。先に向かうと通達していたためか金凌は金光瑤と共に霊犬を連れて待ち構えていた。江澄の姿をみとめると犬を抱えて走ってきて冒頭のように言ったのだ。
    「阿凌、むやみに走るな。お前も犬も危ないだろう」
    「だってはやく紹介したかったんだ!見てみて!」
    ぐいと突き出された犬を受け止める。そっと抱き上げてやればぺろぺろと頬を舐めてくる。その仕草が彼女たちと同じで鼻の奥がツンと痛んだ。挨拶もそこそこに金凌に手を引かれ彼の部屋へ向かえば手当り次第集めたのであろう犬用のおもちゃが散乱していた。
    「きちんと片付けろ阿凌」
    「今やるとこだったの!叔父上も手伝ってよ」
    やれやれと手伝ってやれば犬もおもちゃを加えて金凌に手渡している。さすが霊犬だけあって賢いらしい。目を輝かせる金凌に賢いな、と声を掛けてやれば自分のことのように笑っている。
    お手やお座りを教えるんだと意気込む金凌の話を聞いてやりながら時間を過ごしていると疲れたのか欠伸をし始める。金凌の部屋に来る前に世話係の家僕から早起きをしたとの知らせは受けていた。まだ遊ぶ!と騒ぎ立てる金凌を膝にのせぽんぽんと撫でていればまだまだ赤ん坊らしい、すやすやと眠り込んでしまう。そっと寝台まで運んで寝かせてやれば追いかけてきたらしい犬が寝台の下にすとんと腰を下ろした。金光瑤が用意しただけはある、もう忠犬としての心得は身についているようだ。金凌が眠っていることを確かめ江澄は手を伸ばした。
    「…仙子」
    この数時間で江澄を金凌にとっての敵ではないと見なしたらしい仙子は大人しく耳を垂れ江澄の前に伏せた。仙子を持ち上げ目を合わせると江澄は口を開いた。
    「仙子、お前に頼みがある」
    黒い瞳が江澄を見つめる。
    「阿凌には家族がいない…俺のせいで。だから仙子。お前があいつの一番の家族になってやってくれ。守ることは俺でも出来る。ただ日々を寄り添い寂しさを埋めてやることは出来ない。阿凌を…俺の甥を頼むぞ、仙子」
    仙子は鳴かなかった。ただその黒い瞳で江澄を見据え江澄の頬を一度だけ舐めた。
    「…ありがとう仙子」
    話すことは出来ない。ただ犬が賢いことは彼もよく知っていた。茉莉も妃妃も小愛も皆江澄の言葉をよく理解し寄り添ってくれていたのだから。物音で金凌が目を覚まさぬよう優しく床に下ろせば仙子も静かに金凌の傍に座る。その姿は「任せてください」と言わんばかりで。頼もしい友人だと微笑んだ。
    数年後、金凌に同世代の友人が増えるに連れて江澄が仙子と共に過ごすようになるとは彼はまだ想像もしていないのである。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works