「…似合うのか?」
衣装を渡された時の率直な感想はそれだった。黒とピンクを基調とした割と、いやかなり派手なジャケットはこれまでの人生でほとんど手に取ったことのない類のものだった。インナーも同様の色合いなわけで顔が負けてしまいそうだとため息をついた。
「どうしたのかな?ため息なんかついて」
微笑みながら近づいてきたリーダーは既に衣装を身につけていた。白い衣装から除く首元もまた白く儚げな印象を際立たせている。
「今回の俺の衣装、ピンクが強くてさ」
「そうだね。岳の私服とも雰囲気が違ってみえるね」
気はずかしいとも照れくさいとも違う形容しがたい感情を翔は正確に読み取ってくれたようだ。岳の苦笑いを見て彼は言葉を続けた。
「ルカの方が似合う、と思っているのかな?」
「正解。ルゥっぽいなって思ってさ。まぁ俺は脇は見せられないけど」
渡された脇の開いた衣装を難なく着こなし悠人に見せつけている幼なじみを見やる。真面目な悠人のことだ、しっかり褒めているに違いない。その証拠にちらりと見えた項がほんのり朱に染まっている。悠人には見えていないだろうが。
「僕は岳も似合うと思うけれど」
「そうかぁ?派手すぎないか?」
そんなことはないと首をふる彼に促されとりあえずジャケットに袖を通す。軽く整えて前に立つ男を見れば楽しげに微笑んでいた。
「どう?…って聞くのもおかしい気がするけど」
「よく似合ってるよ、岳は何色でも映えるね」
「そんなことないよ、翔の方がよく似合う」
「僕は白が多いから」
そう言った彼は軽く辺りを見回すと岳を引き寄せて耳元に唇を寄せた。
「だからこうして触れ合っていれば岳の色に染まれるかもね?」
身体を離した翔の涼しげな微笑みとは裏腹に自分の顔が熱くなるのがわかる。さらに目の前の男は笑みを深めて付け加えた。
「ふふ、耳もピンクになっているよ」
「翔!!」
恥ずかしさから思わず少し大きな声が出てしまって。こちらを向いたルカが駆けてくる。
「がっくんと翔くんどうかしたの?」
「なんでもないから」
ルカを追って悠人もやってきてわぁわぁと周りが一気に騒がしくなる。少し離れて笑みを絶やさない白い男の耳もピンクに染めるべく岳は考えを巡らせていた。