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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 ぬくもりから消えていく

    ##甲操
    ##いなくなる話

    ※いなくなる話




    「ここでいいよ。降ろしてくれ、来主」
     一人で歩きたがる甲洋を強引に抱き上げて辿り着いたのは、海岸近くの何もない場所だった。成長し続けているきれいなアショーカの幹を眺められるし、人の営みの灯火を遠くに感じられる、良い場所だ。でも、なにもない。大きな樹も、花畑も、照らしてくれる灯台も。甲洋と一緒にいてくれるものが、なんにもない場所なのに。
     こんな日が来ることを、甲洋はとっくに覚悟していたのかもしれない。もしも、幸運が重なって戦場以外で眠ることができるなら。もっと運が良くて、守りたい人々のいる島でいなくなれるなら……そんな日の為に、自分が最期にいたい場所を見つけて、悟られないように、心の部屋に隠していたんだろう。悲しませない為の準備を悟らせようとない、ずるい男だから。
    「来主。降ろして」
     もう一度、安心させてくれる時と同じ優しい声で促されて、いやなのに、従ってしまった。もう、僕の手を掴まなければ立てないくせに。僕に攫われてしまえば、楽になれるはずなのに。無理に持ち上げられた格好のまま降ろされて脚を伸ばす。まわりをぺたぺたと触って確認する姿は無邪気でさえある。これからいなくなる人には、見えない。ちょっと散歩に連れ出されたみたいな、そんな軽い雰囲気で、今も、僕の前にいるのに。
    「ねえ、どうしても、ここがいいの。僕らの艦で眠るのは、いやなの?」
    「何回も言ったろ。お前や一騎たちが覚えていてくれるから、俺の記録なんか残らなくていいんだって」
     僕の心はどうなるの。訴えても、閉ざされた心には届かない。
    「俺の力なんか、残らないほうがいいんだ。自分の力に蝕まれてまで戦うのは、俺だけでいい」
     甲洋を食べさせてくれたら、甲洋の存在をもらえたら、きみみたいに、ずっと思い出せるかもしれないのに……
     消耗し切った甲洋は、じわじわと、制御しきれない自分の毒に侵されていた。次の出撃で無茶をすれば、抑えきれずに仲間を巻き込むかもしれない。だから、もう俺は戦えない。そう言って、コアにさえなった器から降りた。心に触れさせてくれないせいで、痛みの共有すらさせてもらえない。遮断されるのがどんなに寂しい事かを教えてくれたのは甲洋なのに。隣にいる事しかできない苦しみまで教えてほしいなんて、望んでいなかったのに。
     喉がつかえて何も言えないでいる僕の頬を撫でてくれる掌は、まだ温かいのに、彼はもう、いなくなる。そばに在るアショーカやボレアリオスミールに還ることを望まずに、たった、一人で。
    「この体になれてよかった。土になって、島の皆を見守れる。風にさらわれても、いつか、竜宮島にたどり着けるかもしれない。そしたらまたお前とも話せるかな」
     今の君はいなくなるのに、話せるのだって、残滓なのに。いなくなりたくないと言ってくれさえすれば、甲洋が望まないと理解していても、強引に取り込んでしまえるのに、僕にはそれができるのに手も口も動かない。彼を失くしたくないから。この手で消したくないから。まだもらった優しさに返しきれていないのに、甲洋はずっと唯一自由の利く視界で波も立てずに微笑んでいる。
    「今までありがとう、来主。皆をよろしくな」
     離された指の先から、見慣れた翡翠の結晶が甲洋を連れて行く。甲洋の全部が、僕らのよく知るかたちになっていく。手のひらが見えなくなった。抱き留めてくれた肉体が覆われた。受け入れるように閉じた瞼を食い尽くして、やわらかになびく髪までも結晶に埋め尽くされて。
    「甲洋ッ!」
     ようやく叫んだ時には、もうどこにもいなくなっていた。






    まわり触ってるとこ目が機能しなくなってるます 痛みを伝えたくなくて一生懸命閉じこもってるから操の悲しみに触れられないし慰めることもできない 優しさですれ違う
    別れに慣れていなくてもいなくなることを知っている人間は理解できなくて呻いたり、声にならない声を発して悲しみへの心の準備をできると思ってるんだけど、この操はまだ別れを知らないし、上位存在として存在のリミットを理解してしまうだろうから、段階踏んでクッションなんて作れないと思ってこう
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