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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 Leidenschaft
    頂いたお題から

    ##甲操

    2021.02.10

     あんまり寒くて、厨房の空調が悲鳴を上げてしまった。棚卸しと店舗清掃ついでに食器類を整え直そうと決めていた今日に限って。殆ど終わってからの不調は幸いなものの、まだ三分の一ほどが洗浄と消毒を待ちわびている。
     幼い総士に触れる手をなるべく荒れさせたくはないし、来主の柔らかい手も空調なしに冷えきった水には向かないだろう。
    「一騎、来主。店の空調は無事の筈だから、あっちを任せてもいいか。残りは俺がやるから」
    「はーい!」
     指示も聞かずに飛び出すな。第一関門突破。
    「えっ、俺もやるよ。二人のほうが早いだろ」
    「来主を一人にさせる気?」
     扉の向こうで動く来主は、今のところ教えた通りに動けている。調度品に埃よけを被せ、高いところから順番に。覚えはいいし、行動力もある頼れる奴だ。自由にさせ過ぎるとなにをしでかすか不安という一点を除けば。一騎もそれをよく知っているから、もう追撃は不要だ。成長の為にも一人にさせてみたいけど、寒い厨房に残すのも、労力の掛かる向こうを一人で任せるのも不安だ、なんて顔で来主を見ている。第二関門突破。
    「……わかった。甲洋も無理はするなよ、たくさんお湯使っていいんだからな」
    「はいはい」
     どうせ消毒用の水で冷えるんだから、意味はないけど、気持ちにはありがたく返事しておく。さて、さっさと終わらせてしまおうか。


    「で、ぜんぶ水で洗ったの。たまに馬鹿だよね甲洋って」
    「うるさいな……」
     冷え切って赤くなった手に俺よりも慌てる一騎を無理に送り返してから、自室。両手でハンドクリームを塗り込みながら温めてくれているくせに、文句も立派に言ってくる。こいつは俺を慰めたいのか?それともけなしたいのか?
    「きみの店なんだから、もっときみに優しく使えばいいのにさ」
    「……どうせ冷やすんだから、長時間使ったところでさ……」
    「ずっと冬の海に浸かるのと、ぬるま湯からちょっとの間だけ冷たい場所に行くんじゃ全然違うでしょ。馬鹿なの」
     二回も言うことないだろ。俯いているせいで表情が読めない。握ってくる手に力がこもる。
    「一騎は冷たいの知ってて手伝いたがったでしょ。僕も甲洋の手がこんなになるくらいなら、冷たくても一緒に頑張ったよ。なんで一人でやろうとするの、馬鹿」
     三回目。皿洗いのことでこんなに罵らなくてもいいだろう。塗り終えられた右手と、まだ乾き切っていない左手で白い両頬を挟んで持ち上げる。なんだ、こっちのほうが温かいじゃないか。手の中でもぞもぞ動く来主はこうされるのを嫌がるが、表情の豊かさをよく味わえるから好きだった。ぬくもりを欲する今日なんかは特に。
    「ちょっと! 僕怒ってるんだけど!?」
    「なんで?」
    「甲洋が、自分を大事にしないから」
    「うん。それで? お前は俺にどうして欲しいの」
    「どう、どうって……」
     頬肉を挟まれたまま視線をさまよわせる。ベッドと本棚くらいしかない部屋では結局俺を見るしかなくて、普段キスする前よりも、よっぽど間近で目を合わせている。泣いてしまいそうにうるむ瞳に次を聞かせてくれと伝えたくて、指の腹で唇をなぞった。
    「……自分だけが痛くて済むなら全部引き受けようってところ! 戦いにまで持ち込まないでね!」
    「はいはい」
    「規模の話じゃなくて! 甲洋が自分を大切にできるまで、僕ずっと怒るからね!」
     触れたところから、変化を促そうと感情の込められた瞳から、来主の熱で温められていくような。説教の原因がくだらなくても、俺の為懸命に怒ってくれる。だからこいつが好きだ。悪癖は彼の優しさを確かめる為ではないから、直せる自信はないけれど。
    「な、なんで怒られてるのにうれしそうなの……」
    「さあな。お前と好きあえて嬉しいからかも」
    「ばっ……かじゃないの……」
     四回目。夕陽色が可愛らしくて、とうとう笑い出してしまった。ああ、まだまだ説教は続きそうだな。


    「……キスは、しないの」
    「するよ。口開けて」
    「なっ、なに、今日ほんとにおかしい……!」
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