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    hauntedxmansion

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    トゥルリズ、朝の調パス祭り。
    ジナイーダ事件後、パスト君が出所し霊犀調査員さんと同居している設定です。
    ※諸々捏造設定ありなので注意です。

    【パスト君が大好きな調査員さんのおはなし】

    #囚墓
    prisonersTomb
    #lucadrew

    Good morning My dear❖ ❖ ❖ ❖ ❖


    遠くに聞こえる小鳥の囀り、少しの肌寒さにもぞりと身動ぎ、浮上した意識とともに重い瞼を上げる。
    きょろきょろと周りを見回し、つい、と自分の胸元に視線を落とすと、寝間着をぎゅうと握り静かに寝息を立てる天使の姿。
    パストが“あの事件“の後に収監されていた刑務所から出所し、身寄りのない彼を引き取り同居生活を始めて数ヶ月。
    一度面識はあったものの、まだ警戒心を解かない彼と根気よくコミュニケーションを取り日々を過ごした結果、ようやく安心して一晩を過ごしてくれるようになった。
    今や自分の腕の中にすっぽりと収まり、無防備に眠ってくれるようになった現実に小さな感動を噛み締めつつ。
    薄ぼんやりとした部屋の中で弱い朝日に照らされるその寝顔を眺めた。
    白と金が混ざった柔らかな髪はきらきらと輝き、普段は紅い宝石のような瞳を縁取っている同色の睫毛は呼吸の動きと共にふるふると震えている。何時も一文字に引き結ばれている薄い唇は、今は弛んで控えめな寝息が聞こえるばかり。
    幾分か幼く見える表情は心の扉を少しでも開いてくれた証拠だ。寝間着を握る小さな拳に押し付けられている柔らかそうな頬でさえも愛おしく思う。
    あまりにも幸福を具現化したような光景に、自身の口角も自然と上がり弧を描く。友が見たら笑うだろうなと心の中で苦笑をしつつ。
    どうか起きないでくれと願いながら、そのまろい頬に触れて寝息を立てる唇をそうっと撫でた。

    「…パスト」

    自分でも驚くくらい甘やかな声が出た。パスト、パスト、私の愛おしい天使。音に出さずに留めては、未だ穏やかに眠る彼の額に、ちゅ、と口づけを一つ落として。
    日に弱い彼の為にカーテンを静かに閉めて、私の寝間着を握っていた手は気付かれないように大きなテディベアへ。

    今日はとびきり美味しい朝食を作ろう、あの子の一日が笑顔で始まるように。

    綺麗に片付けられた調理台を目前に、エプロンの紐をぎゅっと締めた。
    サイフォンがコポコポと音を立て、それに合わせるかのようにアイロンパンからは じゅうじゅうと軽やかに音が奏でられる。二人分のココットにお行儀よく収まったベーコンエッグはオーブンに入れられ、ミルクパンは調理台の隅で今か今かと出番を待ち構えて。
    何度か交わした会話の中で、教えてくれた彼の好きな物。
    アイリスの花、綺麗に象られたベーコンエッグ、甘くないパンケーキ、コーヒーよりミルクティーが好き…。
    「大した事じゃないけれど…」と恥ずかしそうに俯いていたが、彼を構成する一部を知る事ができた私にとっては何よりも嬉しく大事なことだった。
    バターの良い香りと共に最後の一枚が焼き上がる。食卓に並べた皿の片方に形の良いパンケーキを二枚、少し考えてから自分の皿に残りの一枚を乗せた。
    シンプルな葉物のサラダを着飾るように盛り付けて、粗熱が取れたココットはお互いの席に一つづつ、マーマレードジャムはテーブルの中央に。
    そこまで準備をしてから、未だにすやすやと心地よく寝息を立てるあの子の元へ向かう。
    ぎしりと軋む音を立てベッドの縁に腰掛ける。ふわふわの頭を優しく撫でながら、一日を始める為に声を掛けた。

    「パスト、起きて。朝食を食べよう」

    君の好きなものを作ったんだ、そう囁やけば、数回の身動ぎの後にゆるゆると瞼が開かれる。

    「おはよう、パスト。良く眠れたかい?」

    くあ、と小さな欠伸をひとつ。蕩けた紅い瞳はゆらゆらとこちらに焦点を合わせてきた。
    私の問いにコクリと頷き、立ち上がりまだ夢見心地な両足はバスルームへと向かう。
    それを見届けてから、私は出来上がったコーヒーとミルクティーを最後に食卓へセッティングした。
    調理台を軽く片付けてエプロンを脱ぎ、食卓へ向かえばそこには先程よりもスッキリとした表情のパストが席についていた。

    「ルカ、おはよう」
    「おはよう、パスト」

    改めて朝の挨拶を交わして着席する。食事前の祈りを済ませると、パストはそわそわしたような顔を向けてきた。小さく首を傾げた私は言葉を促す。
    先程滑らかに祈りの言葉を紡いだその唇が、今度はもにゅ、とおずおず動き出し問い掛ける。

    「これ、ルカが全部、作ってくれたのか…?」
    「パストに喜んで欲しくって。良い一日を一緒に迎えられたらな、と」

    そう応えれば、可愛らしい上目遣いには喜色を浮かべて、目一杯の嬉しさを隠すように結んだ唇がもにょもにょと動いている。
    あまりにも愛らしいその様子に、まだ寝癖の付いているふわふわの頭に手を伸ばしてくしゃりと撫でた。うわ、と小さく驚く声に笑みをひとつ。

    「さあ、冷めない内に食べよう。今日は君と一緒にやりたい事がたくさんあるんだ」

    今日はパストを沢山満足させる日だ。そう考えながら焼き立てのパンケーキを口に入れた。


    ❖ ❖ ❖ ❖ ❖
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    hauntedxmansion

    DONE月一お題企画!(もはや月一ではない)
    2月のお題は【バレンタイン】です🍫⛓️⏳️
    ミルクチョコレートみたいに甘い囚墓を書きたかったはずなのに、どういう訳かカカオ80%くらいのビターなものに仕上がりました。
    どうしてこうなった。
    何だかじめっとしていますが、誰がなんと言おうとこれは囚墓です。
    A Form of Accepting Love❖ ❖ ❖ ❖ ❖


    小さな村で迫害を受けてきた痩せぎすな墓守の男と、没落し自分を失った囚人の私。
    おおよそ生きている中では出逢わなかったであろう二人が、荘園という奇妙な箱庭で邂逅を果たし、何の因果か恋仲にまで発展したのは此処では珍しい話ではないようだ。
    人の好意的な感情や恋愛沙汰に酷く疎い私達は、付かず離れずの距離を保ちつつ、今日まで恋人としての関係を続けられている。

    そんな私を含むサバイバー陣営の者達が生活を送る居館にて、すれ違う女性陣の浮足立った様子に「はて」と思考を巡らせる。
    足を運んだ食堂から漂ってくる仄かなカカオの香りに「ああ、今日はバレンタインの日だったな」とふと思い出した。
    私や恋人のアンドルーが此処に来る以前から、毎年バレンタイン等のイベント事がある日はご馳走やお菓子を作ったり、贈り物を贈ったりと思い思いの一日を過ごしているようだった。
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