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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ヒュンとマト。もしマトがパプニカに残っていたら

    少年の面影 迫り来る魔王軍の侵攻を目前にして、マトリフは十数年前のことを思い出していた。魔王を倒すために皆が命懸けで戦い、辛くも勝利した。そのために失ったものもある。平和の代償とはいえ、その喪失はあまりにも大きかった。
     だが、その魔王が蘇ったという。ならば己が殺したあのデストロールも生き返ってはいないだろうかとマトリフは頭の片隅で考えた。もしそうだとしたら今度こそ負けるだろうと思いながら、マトリフは窓の外を見ていた。
     マトリフはこの十数年をパプニカで過ごした。その間に育てた魔法使いと賢者は数えきれない。特に手をかけた三賢者は若くして多くの呪文を習得した。
     今はその三賢者にルーラを使って王族を連れ出させたところだ。パプニカ国王夫妻とその娘を説得するのは骨が折れたが、王に死なれては国が支柱を失ってしまう。兵士たちは必死に時間を稼いでくれた。
     マトリフは人のいなくなった城で魔王軍を待ち受けていた。この城に攻め入るのは時間の問題だ。今回の襲撃は魔物だけではなく、率いているのは人間だという。
    「来たか」
     マトリフは窓を開けはなった。呪文で浮き上がる。眼下に鎧を纏った男が見えた。周りにアンデットを引き連れている。
     マトリフはまず挨拶代わりの火炎呪文を鎧の男に向かって放った。しかしマトリフの撃った呪文は鎧の男に当たったものの、傷一つ付けなかった。無論男は何のダメージも受けていない。マトリフはあれが噂に聞いた鎧の魔剣なのだとわかった。
    「オレは魔王軍不死騎団長、ヒュンケル」
     男の名乗りにマトリフは苦い思いを感じた。いつか過去に殺されるだろうと思っていた。少年の面影を残した青年は、人を恨む眼をしている。
    「名乗るほどの名前は持ち合わせてねえよ」
     マトリフの言葉に男の纏う空気が変わった。男は兜から外した剣を構える。
    「名乗れ大魔道士。オレは一国の宮廷魔道士に成り下がった男を殺しにきたわけではない」
     明確な殺意にマトリフは己の覚悟の無さを感じた。己の炎に焼かれたトロルの姿が脳裏にちらつく。
    「大魔道士マトリフだ」
     するとヒュンケルは引き連れたアンデッドに手を出すなと下知を下した。そして伸ばした手に剣を添えるように構える。
    「お前はオレの家族を殺した。これは敵討ちだ!!」
     
     
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