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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマト。ハロウィンの夜

    #ガンマト
    cyprinid

    死者の祭「お菓子ちょーだい!」
     小さな両手を差し出されて、マトリフはクッキーをその手に乗せた。クッキーを手にした幼子は礼を言って駆けていく。
     ちょっと店番を頼みますよ、と言ってどこかへ行ったアバンはまだ帰ってこない。飾り付けられた広場には、マトリフと同じようにお菓子を並べて子供たちを待つ人々がいた。
     今日は死者が帰ってくる日らしい。あの世とこの世の境界線が曖昧になり、死者が会いにやってくるという。広場はあちらこちらに火が灯され、子どもたちは仮装をしながらお菓子を貰い歩く。仮装をするのは悪い霊から身を隠すためらしい。
     アバンはこの祭りのために朝からせっせとクッキーを焼いていた。マトリフは祭りと聞いて酒が飲めると思っていたが、手伝ってくださいと言われて菓子を渡す役を命じられた。
    「マトリフおじさん!」
     見ればマァムがカボチャの器を手に下げて立っていた。マァムは包帯でぐるぐる巻きになっている。ミイラ男だろうか。
    「おう、クッキーあるぞ」
     マトリフはマァムの持つカボチャの器にクッキーを入れていく。あちこちでもらったのか、器には様々な菓子が入っていた。
    「ありがとう!」
     マァムは嬉しそうに駆けていく。つられてそちらに視線を向けると、一人の少年が目についた。
     その少年は黒い法衣を着て、フードを目深に被っていた。そのために顔がよく見えない。手には器も菓子も何も持っておらず、連れもいないようだった。
     その少年はこちらをじっと見ていたが、動こうとはしなかった。人見知りなのかと思ったが、どうも様子が違う。よく見れば少年は眼鏡をかけていた。丸いフレームが少しだけ見える。
     マトリフはクッキーを持つと立ち上がった。そのまま少年の前まで歩く。少年はじっと立っていた。
    「ほらよ」
     マトリフは少年にクッキーを差し出す。少年はおずおずと手を出した。その小さな手は震えている。
    「……久しぶりじゃねえか、ガンガディア」
     少年は驚いたように顔を上げた。しかし慌ててフードを下げる。少し見えた赤い瞳は記憶にあるままだった。
    「オレに会いにきたのか?」
     少年に化けたガンガディアはこくりと頷いた。言葉を探すように口を開閉させている。
    「大魔道士」
     その声が少年にしては低すぎて、マトリフは思わず吹き出した。声帯は上手く変化できなかったらしく、ガンガディアそのものだった。
     少年に化けたガンガディアは口を閉ざしてむくれた顔をする。マトリフは笑ったことを詫びて屈んだ。ようやくガンガディアと目が合う。
    「せっかくこっちに来たんだ、ゆっくりしてけよ」
     マトリフはガンガディアの手を引いた。ガンガディアは小さな手で眼鏡を押し上げると頷く。
     生者も死者も入り混じった祭りの夜は長い。菓子とケーキをたらふく食べて、音楽を奏でてみんなで踊る。死者が満足してあの世へと帰るまで祭りは続いた。
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