願って、愛をみるその日、オレは夢を見た。
夢と言ってもいつだかに強制的に見せられたご機嫌な夢じゃない。でも、それは確かに夢だった。
監督生が、いつもと変わらない笑顔でこちらに手を振っている。
「エース!」
彼女がオレをそう呼ぶことは珍しくなかった。でも、その声音はいつもより少し高くて弾んでいて、オレはなんだか気恥ずかしいようなこそばゆい気持ちになる。
そして、そんな気持ちにさせられたことに対してムッとしながら「……なに?」とぶっきらぼうに返事をした。
「へへー」
「なんだよ」
「呼んでみただけ!」
「……なにそれ」
監督生が嬉しそうに笑うのがこそばゆくて仕方がなかった。
いつもと変わらない笑顔で、いつもと変わらずオレの名前を呼んでいるだけなのに。
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