光忠の作るサンドイッチはボリュームがあって目にも楽しく、口にすれば当然おいしい。あぁ、たのしみだな、と背中を向けて、宗三はにこりと笑う。
「大倶利伽羅、はい、どうぞ。先にミルクティです」
「―――、」
この何とも言えなさそうな顔は、カウンターでの会話が聞こえてでもいたのだろう。でもそれも、一瞬後にはふっと崩れた。わずかに丸くなった目はキッチンから聞こえた物音に対してだ。多分、光忠の横にあったカトラリーが崩れて落ちかけた。包丁からはもう手を離していたのを確認していたので、怪我の心配はない。だから宗三はあえて振り向かず、そのまま彼の――大倶利伽羅の前に座った。
「サンドイッチもすぐにきますよ」
「……、あぁ」
怪訝そうな目をしながらも、その手がマグカップに伸びる。意外と長い指がくるりと包み、持ち上げて、すん、と匂いをかいだ。細められた目は自覚のない表情。それなりに長くなってきた付き合いの中、何年も見てきたそれが、なのに違う顔を見せる。
「…お待たせ、しました。豚肉とほうれん草のサンドイッチです」
「―――」
四角い皿に載った、四角いサンドイッチ。小さく見えるがぎゅっと具が挟んであるので満足感のある一品だ。さっそくひとつ手に取る宗三の前で、大倶利伽羅はじっと光忠を見上げていた。
珍しい反応をしているなぁとそれを眺め、見られている光忠を見てはまた笑う。緊張か、それともそれ以外の感情か、耳を赤くして、こちらはこちらでいったい何を考えているんだろうか。
「…もらう」
「っ、どうぞ」
交わされた会話はそれだけだ。光忠はカウンターに戻り、たぶん、深呼吸でもしている。視界の端で背中が大きく膨らんで、ゆるゆると震えていた。そうして目の前では、一口、大きく食べた大倶利伽羅の目がゆるりと瞠られている。
「…うまいな」
「ね? 食べて正解でしょう?」